頭頸部がんの治療

頭頸部がんの治療
岐阜大学医学部附属病院
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
水田 啓介
頭頸部癌とは
頸部側面図
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聴器(外耳・中耳)
口腔
鼻・副鼻腔
咽頭(上・中・下)
喉頭
唾液腺
甲状腺
頸部
に発生する癌の総称
頭頸部癌の特徴
• 全癌に占める割合は、約5%
• 多くの部位が存在するので、各部位の癌の
頻度は少ない。
• 発生部位ごとに癌の性質が異なるため、
治療法が異なる。
• 生活習慣が深く関わっている
(喫煙、飲酒習慣、口腔衛生不良)
• 重複癌(1人の患者に2つ以上の癌をもつ)が多い
頭頸部癌発生部位別
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口腔癌(舌癌など)
下咽頭癌
喉頭癌
中咽頭癌
唾液腺癌
上顎洞癌
上咽頭癌
鼻腔癌
33.2%
19.9%
17.7%
14.9%
4.9%
3.8%
3.0%
2.6%
(Jpn J Head Neck Cancer 2013)
頭頸部癌治療の問題点
• 感覚器を含む
視力・嗅覚・味覚・聴覚・平衡覚などの障害
• 呼吸・発声・摂食・嚥下機能に密接に関係
口腔機能、喉頭機能、咽頭機能などの障害
• 組織に余裕がない
一期的縫合が困難で、組織再建を要する
• 美容的問題
顔貌の変形
手術による癌の高い根治性→充分な切除範囲が必要
広範囲な切除
→機能障害が高度になる
→ 根治性とQOLのバランスを保つことが
難しい
喉頭
頸部側面図
喉頭内視鏡所見
後
鼻腔
口腔
喉頭
声帯
声帯に癌を認める
甲状軟骨
輪状軟骨
前
喉頭
機能
• 音声
• 呼吸路
• 誤嚥防止
最も複雑で、重要
喉頭単独ではなく、周囲臓器(舌根や
嚥下筋)の機能温存の有無が重要
喉頭温存
喉頭癌のみでなく 咽頭癌においても
進行癌では喉頭の温存の可能性が問題になります
喉頭癌
喉頭の根治治療
喉頭の温存が可能か?
喉頭の温存した治療
誤嚥防止は可能か?
喉頭周辺の癌(たとえば咽頭癌)
根治切除(喉頭への浸潤)
喉頭の温存が可能か?
喉頭の温存した治療
誤嚥防止は可能か?
喉頭の臓器温存・機能温存
• 喉頭の臓器温存
→ 喉頭癌・咽頭癌に対して喉頭摘出
をさけることができる治療
• 喉頭の機能温存
→ 音声機能のみでなく、嚥下機能を
保つ治療
喉頭癌の治療
T1 ◎放射線治療単独(喉頭温存)
レーザー手術:適応が限られる
利点は治療期間が短いこと、欠点は声の悪さ
適応は極めて限局した早期癌
T2
3の一部
◎抗がん剤併用放射線治療(喉頭温存)
放射線治療の適応拡大を目指して
喉頭部分切除術 (喉頭機能温存)
T3-4
◎喉頭全摘出術
喉頭温存を期待して
喉頭癌 (声帯発生早期癌)
放射線治療後
喉頭癌早期癌では喉頭温存の確率極めて高い
→早期発見重要(嗄声に注意)
喉頭癌 (進行癌)
進行喉頭癌の標準的治療は喉頭全摘術
(音声喪失)
抗がん剤併用放射線治療後
喉頭癌進行癌では喉頭温存を目指す治療は
現時点で挑戦的治療
本例でも今後再発の可能性あり →喉頭全摘
放射線化学療法後の早期再発例に対する救済手術
喉頭垂直部分切除術
術後
吸気時
再建部
発声時
切除範囲
喉頭癌(声門上癌)
抗がん剤併用放射線治療後再発
声帯
喉頭
摘出範囲
この場合には術後の誤嚥の危険性高い
術後内視鏡所見
声帯
再建舌根部
再建した舌根部
喉頭を挙上
嚥下に係る神経を温存する摘出術
+誤嚥を防ぐ再建を行う
進行喉頭癌 (T 4)
喉頭全摘出術
喉頭全摘出術
頸部側面図
摘出範囲
喉頭
甲状軟骨
気管
喉頭全摘出後の嚥下
食事通過路
のみ
気道と食事通過路が
分離
気管
誤嚥はおこらない
喉頭全摘後の音声獲得
食道発声
空気を嚥下する 嚥下した空気を吐き出す
ときの咽頭の振動
プロボックス(人工喉頭)埋め込み
気管と食道に人工瘻孔を留置する
呼気を咽頭に送り込むことで食道発声
下咽頭癌
頸部側面図
喉頭内視鏡所見
下咽頭に癌を認める
下咽頭
声帯
喉頭
甲状軟骨
輪状軟骨
食道
通常視野
内視鏡精度の向上
喉頭
下咽頭
下咽頭表在癌の
発見機会の増加
食道表在癌と同様の治療
を導入
しかし下咽頭では対応の
工夫が必要
弯曲型咽喉頭直達鏡
により下咽頭視野拡大
喉頭
下咽頭
食道入口部
下咽頭表在癌
弯曲型咽喉頭
直達鏡で展開
喉頭
下咽頭
ルゴール染色実施し
異染部位を確認
下咽頭表在癌に対するESD
切除範囲をマーキング
粘膜下に注射後
剥離切除
消化器内科の協力のもと実施
進行下咽頭癌
喉頭
声帯
舌根部
局所進行癌であり、咽頭・喉頭摘出術が検討
される例である
咽頭癌は比較的抗がん剤や放射線に対する
感受性が良い
下咽頭癌
抗がん剤併用放射線治療後
局所進行癌であった本例は抗癌剤と放射線治療が奏功
し喉頭温存し根治した
局所進行癌でなければ放射線治療を中心とした
治療で根治期待できる → 早期発見が重要
抗がん剤を治療開始時に使用し
その効果を評価し 治療選択
抗がん剤投与前
抗がん剤投与(2コース)後
効果良好例ではその後抗がん剤併用放射線治療へ
効果不良例ではその後手術治療を検討(根治性重視)
喉頭温存希望者では抗がん剤併用放射線治療
咽頭癌化学放射線治療後
再発例に対する救済治療
• 咽頭部分切除術
+喉頭温存
喉頭から離れた部位で
極めて限局した例のみ
+喉頭部分切除
術後誤嚥の危険性高い
• 咽頭喉頭摘出術
喉頭・下咽頭摘出術
局所進行下咽頭癌の標準的治療
摘出範囲
下咽頭
喉頭
甲状軟骨
食道
遊離空腸(小腸の一部
を自己移植)による
咽頭再建
遊離空腸再建術後
中咽頭
再建空腸
食道
食事摂取は口から可能となる
音声機能を失う
頭頸部がん
• 喉頭癌や咽頭癌は喫煙・飲酒との関連が極
めて高いので、危険因子を減らす努力が必
要です
• 早期発見により喉頭温存と根治性の可能性
が高くなります
• 重複がんが多い部位ですので、領域を超え
て、定期的検診が重要です