(様式 3)若手研究者支援研究費 平成 27年 5月 14 日 琉球大学 学長大城肇殿 所属部局・職耳鼻咽喉・頭頚部外科学助教 氏 名山下懐 (~['\ \ー// 平成 26年度研究フ。ロジェクト支援事業(若手研究者支援研究費) 研究実績報告書 このことについて、以下のとおり報告いたします。 ①研究課題 頭頚部がん擢患率が高い地域での飲酒・喫煙に関する遺伝子多型の解析 興環境下の民族特有の遺 沖縄は頭頚部癌・頭頚部重複癌が多い。飲酒、喫煙の風習、島 l 伝 子 多 型 が 原 因 と し て 予 測 さ れ る 。 ア ル コ ー ル 代 謝 遺 伝 子 で あ る ① alcohol ②研究の概要 dehydrogenaselB (ADHlB)②aldehydedehydrogenase2 (ALDH2)、たばこに含ま れる有害物質の活性や代謝にかかわる遺伝子である③cytochromeP450lAl (CYPlAl) ④ Glutathion合 transferase ( GST)に着目し、遺伝子多型と交絡因子(生活習慣など) を解析し、頭頚部癌予防、頭頚部重複癌予防へと発展させることを最終目的とする。 ③研究成果の概要 アルコールは ADHlBによりアセトアルデヒドに代謝され、アセトアルデヒドは主に ALDH2により酢酸に代 謝される。 ADHlB、ALDH2は酵素活性を規定する遺伝子多型がある。 ADHlBの遺伝子多型 His/Arg型と Arg/Arg 型は His/His型よりも ADHlBの活性が低く、 ALDH2の遺伝子多型 Glu/Lys型は Glu/Glu型に比べ酵素活性が が低く、 Lys/Lys 型は酵素活性がないことが判明している。これらの遺伝子多型は発癌性を持つアセトアル ルデヒドの代謝に影響を及ぼすため、頭頚部癌において発症リスクに関与していることがわかってきた (NathalieDruesne-Pecollo, e ta l . Lancet2 0 0 9 .G .C a d o n i ,e ta l . ActaPtrhinolarygol I t a l 2012) 。 たばこに含まれるの発癌物質にベンツピレンがあるが、ベンツピレンの代謝活性化を司る CYPlAl遺伝子、 ベンツピレンの活性化産物の解毒を司る GST 遺伝子には遺伝子多型が知られている。 CYPlAl 遺伝子には CYPlAlMSPIと CYPlAlIle462Valに遺伝子多型があり、 GST遺伝子の GSTMl、GSTTl、GSTPlに遺伝子多型が ある。頭頚部癌では CYPlAlMspI mutation、CYPlAlIle462V;1mutationの遺伝子多型を持つ場合に発症リ 、 Val/Val型の遺伝子多型を持つ場合 スクが高くなり、 GSTMl、GSTTlの null型、および GSTPlの Ile/Val型 に解毒能が低下し発症リスクが高くなると報告されている。また、 CYPlAlMspI mutationを持ち、 GSTMlnull 型を持つ場合、発癌物質が蓄積し、発症リスクを高めるとの報告があり( G .J .F .G a t t a s , e ta l . Head & Neck-DOI2 0 0 6 .K . Sabit h a , eta l . CanceEpidemiology2 0 1 0 .G .C a d o n ,e ta l . ActaOtorhinolaryngologica Italica 2 0 1 2 . L iL l u ,e ta l . EuropianJournal ofCancer 2 0 1 3 .)、たばこに含まれる有害物質の活性 1/3 や代謝にかかわる代謝遺伝子多型と頭頚部癌発症リスクとの関連が明らかになりつつある。 頭頚部癌患者には他臓器重複癌の頻度が高く、アルコール、喫煙が関与していると推定されている。これ まで他臓器重複癌のある頭頚部癌患者の A D H l B、A L D H 2、C Y P l A l、GSTの遺伝子多型との関連について検討し た報告はない。また、喉頭癌や中咽頭癌は喫煙との関連を指摘されているが、疾患別に C Y P l A l、GSTの遺伝 子多型との関連について明らかにした報告は少ない。 我々はこれまで、沖縄県が他県に比べ頭頚部癌、頭頚部重複癌が多く、この原因として飲酒、喫煙に関す る他県とは異なる風習があることを明らかにした(山下ら.頭頚部癌 2 0 0 9)。これに加え琉球人は遺伝子 多型が日本本土,台湾,ヨーロッパとも異なることが報告されている(S a t oe ta l ,M o lB i o lE v o l ,2 0 1 4 ) ことから、生活習慣に加え沖縄特有の遺伝子多型が高い頭頚部癌擢患率に関わっていると推定できる。 先行研究として、下咽頭癌 38例、中咽頭癌 33例、喉頭癌 22例、頭頚部重複癌 57例とコントロール群(頭 頚部癌のない症例) 68例の ADHlB、ALDH2、CYPlAl、GSTの遺伝子多型を解析。中咽頭癌では有意な 圧 王i s型+ALDH2Glu/Lys型又は Lys/Lys型、喉頭癌 結果を得られなかったが、下咽頭癌では ADHlBHis は CYPlAlMspI mutation+GSTMln u l l型、頭頚部重複癌は ALDH2Glu/Lys型又は Lys/Lys型の遺伝 子多型が発症リスクを有意に高めると示唆された。予備研究で、は解析サンフ。ル数が少ないため、より多くの サンブワレを解析することにより、より詳細な解析が可能になるとおもわれた。 今回の若手研究者支援研究費により、頭頚部癌 209例(口腔、舌癌 28例、喉頭癌 35例、中咽頭癌 68例 、 下咽頭癌 78例)。他臓器重複癌のある頭頚部癌 57例。コントロール群 129例のアルコーノレ代謝遺伝子 (ADHlB、ALDH2)の遺伝子多型および、たばこに含まれる有害物質の活性や代謝にかかわる遺伝子 (CYPlAl、GST)の遺伝子多型の解析をすすめることができた。 最終的には頭頚部癌としてのサンフ。ル目標を 320例(口腔癌、喉頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌おのおの 80 例ずつ)。他臓器重複癌のある頭頚部癌患者のサンフ。ル目標数は 60例。コントロール群は 240例としてい るため、今後も解析を目標数まですすめていき、遺伝子多型と交絡因子(生活習慣など)を統計的に検討す ることにより、沖縄県の島暁環境を活かし、遺伝子多型と生活習慣が頭頚部癌および重複癌発症リスクに与 える影響、予後への影響を明らかにし、頭頚部癌予防につなげていきたい。 ④研究成果の公表、あるいはその準備状況 琉球大学病院耳鼻咽喉科を受診した頭頚部癌 209例(口腔、舌癌 28例、喉頭癌 35例、中咽頭癌 68例 、 下咽頭癌 78例)。他臓器重複癌のある頭頚部癌 57例。コントローノレ群(耳鼻咽喉科を受診し、研究に同意 を得た頭頚部癌以外の症例) 129例のアルコール代謝遺伝子(ADHlB、ALDH2)の遺伝子多型および、た ばこに含まれる有害物質の活性や代謝にかかわる遺伝子(CYPlAl、GST)の遺伝子多型の解析を現在まで に終了した。目標サンプノレ数にはまだとどいていないが、現時点でこれらの頭頭部癌患者群、コントロール 群の遺伝子多型の結果と生活習慣などの交絡因子を統計学的に検討し、論文作成中である。 また、日本耳鼻咽喉科学会学術講演会や関連学会学術講演会などにも発表していく予定である。 213 ⑤科学研究費等の申請に向けた準備状況 “頭頚部癌多発地域での飲酒・喫煙に関する遺伝子多型の解析”にて基盤研究 c(一般)平成 27年度科学研 究費を取得した。 ⑥今後の研究の展開、展望 頭頚部癌としてのサンプル目標を 320例(口腔癌、喉頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌おのおの 80例ずつ)。 他臓器重複癌のある頭頚部癌患者のサンプル目標数は 60例。コントロール群は 240例としているため、今 後も解析を目標数まですすめていき、遺伝子多型と交絡因子(生活習慣など)を統計的に検討することによ り、沖縄県の島!興環境を活かし、遺伝子多型と生活習慣が頭頚部癌および重複癌発症リスクに与える影響、 予後への影響を明らかにし、頭頚部癌予防につなげていきたい。 * 上 記 に つ い て 、 概 ね 4ページ程度にまとめてください。また、別途関連する資料類(論文別刷など)が あれば添付してください。 ⑦実支出額の使用内訳 合計 1877711円 物品費 旅費 1877711円 0円 3/3 その他 謝金等 0円 0円
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