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化学 【出題の基本方針】 高校化学において重要な基礎的項目の理解の上で、広範な知識の習熟度と化学的な応用
力、計算力を試す問題を教科書に記述されている範囲から設定した。教科書を十分に学習
していれば解答できる基礎的学力を測ることを基本方針とした。 【各設問の講評】(2 月 2 日実施分) Ⅰ 酸・塩基と無機化学反応 酸と塩基に関する用語や化学反応式の係数、物質量計算に関する基礎的項目の理解を
問う問題であり、全体的に高い正答率であった。それらに加え、中和反応と電気分解の
連携や水のイオン積と中性の pH の関係など、応用を意識した問題も盛り込んだ。塩化ナ
トリウム水溶液の電気分解であることや、純水中の水素イオンと水酸化物イオンの濃度
が等しいことが分かれば、正当を導くことができるはずである。水の自己解離定数の温
度変化と反応熱との関係を問う問題で正答率が非常に低く、関連する事項を総合的に捉
え、結びつける思考を身につけることが重要である。個別の事項を覚えるだけでなく、
その本質を理解し、総合的に学習することを心がけるべきである。 Ⅱ 平衡 気相反応の平衡に関する基礎的項目の習熟度を問う問題であり、マーク式・記述式を
問わず正答率は高かった。ただし、化学反応の反応熱を問う[1]では値の符号が重要
な意味を持つにも関わらず、その間違いが散見され、正確な理解がより一層必要である
と思われた。化学反応の組み合わせと平衡定数の関係は概して高い正答率であったが、
平衡定数の計算では有効数字が指示通りでない答案が見られた。有効数字の意味をよく
理解しておくべきである。 Ⅲ 有機化合物の分離と性質、構造 置換芳香族化合物の性質に基づき、それらの混合物を酸と塩基によって分離するオー
ソドックスな設問である。
[4]は元素分析の結果から組成式を計算する問題であり、基
礎的内容であることから正答率は比較的高かった。[5]では、[4]で組成式が分かっ
た芳香族化合物の酸であり、加熱によって酸無水物を生じることからジカルボン酸であ
ることが分かり、その構造式を問う問題であったが、無水物の構造を答えた誤答が目立
った。落ち着いて、よく問題を読むことが大切である。ニトロ化のオルト・パラ配向性
を問う[6]でも同様であったが、例えばベンゼン環などの構造を正しく表記できない
受験生も多かった。 Ⅳ 油脂とセッケンの構造や性質 油脂とセッケンの構造や性質などの全般についての出題であり、特にそれらに関する
特徴的な用語を理解していないと、正解するのが難しいと思われる。グリセリンを基本と
する油脂では、脂肪酸の組み合わせによって幾つかの種類が考えられ、グリセリンの2位
の炭素における光学異性体にも配慮すべきである。[1]では縮合とけん化の違い、[4]
では飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸など、基本的で重要な語句を正確に覚えておくことが重要
である。硬化油と乾性油の意味を問う問題で誤答が多かったが、幅広い学習が大切である。
付加する水素の物質量から炭化水素基の不飽和度を求め、炭化水素基の組み合わせを考え
る[5]は決して易しい内容ではなく、正答率は比較的低かった。[6]では、1 mol の
油脂を加水分解するのに 3 mol の水が必要という関係を正しく理解せず、水を 1 mol とし
て計算するとか、3 mol の水酸化ナトリウムが必要として計算した誤答が多く見られた。 【学習のポイント】 ・ 教科書を中心に高校化学の全分野を幅広く学習し、確実かつ正確に、基礎的な知識を
身につけること。その際、単なる教科書の丸暗記ではなく、その事項を原理から理解
し、応用力を身につけるようにすること。 ・ 化学で扱う事項には、無機化学、物理化学、有機化学に関わらず相互に関係があるの
で、幅広く知識を習得した上で、様々な視点で反応や性質を見るように心がけること。 ・ 計算を伴う事項については、日頃から有効数字に注意を払うこと。また、数値の単位
についても常に意識すること。