6.従業員持株会の運営のポイント ①

6.従業員持株会の運営のポイント ①
非上場会社の従業員持株会について、相談をいただくことがよくありますが、経営者や会社の管理
部門の方々が誤解されていることも多々あります。
上場会社の従業員持株会や近い将来上場することが予定されている非上場会社の従業員持株会
は別として、上場する予定がない非上場会社における従業員持株会のポイントを整理します。
1. 従業員持株会の位置付け
従業員持株会は、一般的には、法人格があるものではなく 、民法上の組合であり、マンション
の管理組合や大学のOB会のような団体です。
「民法上の組合」という点が重要な点です。基本的にはパススルー課税となり、持株会自体は申
告義務を負いません。(会員が持分に応じた申告義務を負います。)
2. 様々な運営ルール
基本的に会員の自治組織であり、公序良俗、他の法令に反しない限り、ほとんどのことを持株会
規約で決められます。
もちろん、社員に対して、持株会への入会を無理強いすることはできませんし、入会する社員は
、持株会の規約を理解し賛同していることが必要最低条件です。
3. 入会資格
持株会の会員資格は自由に決められます。
持株会の会員は、会社の株主になりますので、会社の決算内容を開示することになります。
持株会の会員と会社は、業績を共有していく訳ですから、まずは一定の期間以上の勤続年数と
一定の職位以上の幹部社員を対象にしてスタートし、段階的に対象者のすそ野を広げていくの
が現実的です。
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6.従業員持株会の運営のポイント ②
4. 既に自社株式を保有している社員の持株会への加入
持株会への出資は金銭だけではありません。
社員が既に保有している自社株式そのものを、持株会に現物で組入れることも可能です。
持株会が保有する資産は、名義こそ持株会ではありますが、出資者である会員が、持株会を介し
て間接的に保有し、税務上は持株会ではなく会員が持分に応じて所有していると考えます。
従って、基本的には、自社株式を保有している社員が、株式を現物で持株会に組入れたとしても、
持株会に対する譲渡として扱わず、組入れ後も、その社員が保有している状態として扱います。
5. 退会時の自社株式の評価
非上場会社の株式は市場で取引されることはありませんので、客観的な時価というものはありま
せん。従って、評価方法か評価額を規約上決めておく必要があります。
<評価方法を決める場合>
相続税法上の評価を規定することが一般的ですが、相続税法上の株価の算定結果は決して安定
しているとはいえません。持株会の退会時期によって、大きなキャピタルゲインが出たり、キャピタ
ルロスが出る可能性があります。
<評価額を決める場合>
株価を固定化すれば、基本的に、持株会の退会によりキャピタルゲインもロスも出ません。裏を返
せば、持株会の会員に対してはキャピタルゲインではなく、配当金で報いるということです。
6. 持株会に対する株式の拠出
たまたま安い金額で自社株式を売却したいという株主がいれば別ですが、オーナー家より持株会
に譲渡するか、会社から第三者割当増資又は自己株式を割り当てるかのいずれかになると思い
ます。
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6.従業員持株会の運営のポイント ③
7. 配当政策と種類株式について
非上場会社の持株会は、キャピタルゲインにより報いるのではなく、業績に応じた配当金によっ
て報いることを基本方針とした場合、配当額を増やすとオーナー経営者の配当も増えて、会社
の資金負担とオーナーの所得税負担も増してしまうというジレンマが生じます。
解決策としては、従業員持株会に対しては、配当優先株を交付し、オーナー家は普通株式を保
有する方法があります。
具体的には、以下のようなイメージになります。
オーナー家が所有する200万株の20%(40万株)
を持株会に譲渡し、持株会が保有する自社株式
は配当優先株式に変える。
配当優先株式には、普通株式の3倍の配当金を
交付することにする。
(
1
株配
10 当
円
)
配当総額2,000万円
普
(
1通
株
5 株
円配
)当
株数
(普通株式200万株)
配当
総額
600万円
配当総額800万円
株数
(普通株式160万株)
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優
(
1先
株
15 株
円配
)当
株数
(優先株式40万株)
3
6.従業員持株会の運営のポイント ④
8. 持株会会員の退会と出資持分の買取対応
持株会の会員資格を社員としている以上、社員の退職にともない、持株会の会員とその会員か
らの出資持分の買取という問題は必ず発生します。
まず、持株会が保有している自社株式の評価は、規約として事前に決めておくべきということに
ついては、前述したとおりです。
自社株式の評価以外で、よくご質問を受ける点は、①退会者に支払う資金をどうしたらよいか?
②退会者の穴埋めの募集はすぐにしなければならないか?という2点です。
大切なことは、従業員持株会の貸借対照表と持株会会員の権利関係を包括的に理解することです。
従業員持株会
自社株式
(5,000株)
1,000万円
出資金
1,000万円
会員10名
(50口×10名)
(1口:20,000円)
従業員持株会
①
会員2名が退職
にともない退会す
ることになった
② 会社から200万
円を借りて、会員2
名に対して出資金
を返金した
自社株式
(5,000株)
1,000万円
出資金
800万円
会員8名
(50口×8名)
(1口:20,000円)
借入200万円
自社株式5,000株所有者は?
⇒会員8人の共有資産
(自社株式の配当収入も会員
の持分に応じた収入)
借入200万円は誰の債務か?
⇒会員8人の共有債務
(借入の支払利息も会員の持
分に応じた費用)
持株会が新会員を募集して、資金を得てから退会者に200万円を支払うことでも構
いません。しかし、現実的に退会者が出る都度、会員募集ができるかと言えば、常
にできるとは言えないはずです。
都合のよいタイミングを見計らって、まとめて募集することでよいと思います。
その間は、退会者に対する返金資金を会社から一時的に借りることも可能です。
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