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可測関数
最初に,写像に関する基本事項を復習する.f : X −→ Y を集合 X から集合 Y への写
像とする.X の部分集合 A に対して,f により A の元と対応する Y の元全部の集合を f
による A の像 (image) といい,f (A) で表す.
f (A) = {f (a) | a ∈ A} ⊂ Y.
f (A) = ∅ となるための必要十分条件は,A = ∅ である.
Y の部分集合 B に対して,f (x) ∈ B となる X の元 x 全部の集合を f による B の逆像
(inverse image) といい,f −1 (B) で表す.
f −1 (B) = {x ∈ X | f (x) ∈ B} ⊂ X.
B = {b} がひとつの元からなるときは,f −1 ({b}) を f −1 (b) と書くこともある.
An (n = 1, 2, . . .) を X の部分集合,Bn (n = 1, 2, . . .) を Y の部分集合とすると,次の
式が成り立つ.
( ∪∞
) ∪∞
( ∩∞
) ∩∞
(1) f
f
n=1 An =
n=1 f (An ),
n=1 An ⊂
n=1 f (An ).
(
)
(
)
∪
∪
∩
∩∞ −1
∞
∞
∞
−1
(2) f −1
(Bn ),
f −1
(Bn ).
n=1 Bn =
n=1 f
n=1 Bn =
n=1 f
(3) f (A1 − A2 ) ⊃ f (A1 ) − f (A2 ),
f −1 (B1 − B2 ) = f −1 (B1 ) − f −1 (B2 ).
以下では,特に断らない限り可測空間 (X, M) をひとつ固定して考える.すなわち M
は集合 X の部分集合の σ-加法族である.X から R = ∪{±∞} への写像 f : X −→ R を,
X 上の関数ともいう.f (X) ⊂ R のとき,f を実数値関数という.
R の部分集合 T に対して,f による T の逆像を [f ∈ T ] で表すこともある.
f −1 (T ) = [f ∈ T ] = {x ∈ X | f (x) ∈ T }.
定義 写像 f : X −→ R について,任意の実数 a に対して {x ∈ X | f (x) > a} ∈ M が
成り立つとき,f を X 上の M-可測関数 (M-measurable function) または簡単に可測関数
という.
以下では,特に断らない限り可測関数は X 上の M-可測関数を意味するものとする.
記号に関する注意 {x ∈ X | f (x) > a} を,f −1 ((a, ∞)) または [f > a] とも書く.同
様に,f −1 ([a, ∞)) = [f ≥ a] = {x ∈ X | f (x) ≥ a}, f −1 ((−∞, a)) = [f < a] = {x ∈
X | f (x) < a}, f −1 ((−∞, a]) = [f ≤ a] = {x ∈ X | f (x) ≤ a}, f −1 (a) = [f = a] =
{x ∈ X | f (x) = a}, [f ̸= a] = X − [f = a] = {x ∈ X | f (x) ̸= a},また a < b のとき
f −1 ((a, b]) = [a < f ≤ b] = {x ∈ X | a < f (x) ≤ b} などとも書く.
f
この記号を用いると,f が M-可測関数であるとは,すべての実数 a について [f > a] =
((a, ∞)) ∈ M が成り立つことである.
−1
f −1 ((a, ∞)) = [f > a] = {x ∈ X | f (x) > a} ∈ M for all a ∈ R.
定理 f : X −→ R に対して,次の条件はすべて同値である.
1
(1) f は可測関数である.
(2) [f ≥ a] ∈ M for all a ∈ R.
(3) [f < a] ∈ M for all a ∈ R.
(4) [f ≤ a] ∈ M for all a ∈ R.
(5) [f > r] ∈ M for all r ∈ Q.
(Q は有理数全部の集合を表す)
証明 任意の実数 a に対して,
(a, ∞) =
∞
∪
[a +
1
, ∞),
n
[a, ∞) =
n=1
∞
∩
(a − n1 , ∞)
n=1
だから,(1) と (2) は同値である.
{x ∈ X | f (x) < a} = X − {x ∈ X | f (x) ≥ a},
{x ∈ X | f (x) ≤ a} = X − {x ∈ X | f (x) > a}
なので,(2) と (3) および (1) と (4) はそれぞれ同値である.
任意の実数 a に対して,a に収束する単調減少な有理数の数列 {rn } が存在するが,こ
のとき
∞
∪
(a, ∞) =
(rn , ∞)
n=1
が成り立つ.よって (1) と (5) は同値である.
注意 可測関数 f について,前定理より次のことがわかる.
{x ∈ X | f (x) = a} = {x ∈ X | f (x) ≥ a} ∩ {x ∈ X | f (x) ≤ a} ∈ M (a ∈ R).
∪
{x ∈ X | f (x) < ∞} = ∞
n=1 {x ∈ X | f (x) < n} ∈ M.
{x ∈ X | f (x) = ∞} = X − {x ∈ X | f (x) < ∞} ∈ M.
∪
{x ∈ X | f (x) > −∞} = ∞
n=1 {x ∈ X | f (x) > −n} ∈ M.
{x ∈ X | f (x) = −∞} = X − {x ∈ X | f (x) > −∞} ∈ M.
注意 f を可測関数とする.R の区間 (a, b] に対して (a, b] = (a, ∞) ∩ (−∞, b] だから,
前定理より f −1 ((a, b]) = [a < f ≤ b] = [f > a] ∩ [f ≤ b] ∈ M である.R の Borel 集合族
B(R) はこのような区間全体から生成される σ-加法族だから,f による逆像の性質より,
f −1 (B) ∈ M for all B ∈ B(R)
が成り立つ.よって,写像 f : X −→ R について,f が可測関数であることは,f −1 (−∞),
f −1 (∞), f −1 (B) (B ∈ B(R)) がすべて M に属することと同値である.
定理 f , g が可測関数ならば,次の X の部分集合はすべて M に属する.
[f > g] = {x ∈ X | f (x) > g(x)} ∈ M.
[f ≥ g] = {x ∈ X | f (x) ≥ g(x)} ∈ M.
2
[f = g] = {x ∈ X | f (x) = g(x)} ∈ M.
[f ̸= g] = {x ∈ X | f (x) ̸= g(x)} ∈ M.
証明 有理数全部の集合 Q は R において稠密である.よって
∪(
)
∩
{x ∈ X | f (x) > g(x)} =
{x ∈ X | f (x) > r} {x ∈ X | r > g(x)}
r∈Q
が成り立つが,Q は可算集合で M は σ-加法族だからこの右辺は M に属する.したがって,
{x ∈ X | f (x) ≥ g(x)} = X − {x ∈ X | f (x) < g(x)},
∩
{x ∈ X | f (x) = g(x)} = {x ∈ X | f (x) ≥ g(x)} {x ∈ X | f (x) ≤ g(x)},
{x ∈ X | f (x) ̸= g(x)} = X − {x ∈ X | f (x) = g(x)}
はどれも M に属する.
定理 f が可測関数ならば,次の関数は可測関数である.
(1) (αf )(x) = αf (x) (α ∈ R)
(2) |f |α (x) = |f (x)|α (0 < α ∈ R)
(3) (1/f )(x) = 1/f (x) (ただし,X 上で f (x) ̸= 0)
証明 (1): α = 0 のときは明らか.α > 0 のとき,任意の実数 a に対して
{x ∈ X | αf (x) > a} = {x ∈ X | f (x) > a/α} ∈ M
だから,αf は可測関数である.α < 0 のときも同様である.
(2): a を任意の実数とする.a > 0 のとき
{x ∈ X | |f (x)|α ≥ a} = {x ∈ X | |f (x)| ≥ a1/α }
= {x ∈ X | f (x) ≥ a1/α } ∪ {x ∈ X | f (x) ≤ −a1/α } ∈ M
となる.また a ≤ 0 のときは
{x ∈ X | |f (x)|α ≥ a} = X ∈ M
である.よって |f |α は可測関数である.
(3): a を任意の実数とする.a > 0, a = 0, a < 0 の場合にそれぞれ
{x ∈ X | (1/f )(x) > a} = {x ∈ X | f (x) < 1/a} ∩ {x ∈ X | f (x) > 0},
{x ∈ X | (1/f )(x) > 0} = {x ∈ X | f (x) > 0},
{x ∈ X | (1/f )(x) > a} = {x ∈ X | f (x) < 1/a} ∪ {x ∈ X | f (x) > 0}
だから,1/f は可測関数である.
αf + βg, f g, min(f, g), max(f, g) に関しては,∞ − ∞ のようなことが起こるのを避
けるため,とりあえず f と g の値が ±∞ にはならない場合を考える.
定理 f , g を実数値の可測関数とすると,次の関数は可測関数である.
3
(1) (αf + βg)(x) = αf (x) + βg(x) (α, β ∈ R)
(2) (f g)(x) = f (x)g(x)
(3) min(f, g)(x) = min{f (x), g(x)},
max(f, g)(x) = max{f (x), g(x)}
証明 (1): 前定理により αf と βg は可測関数である.c を実数として f + c を考える.
任意の実数 a に対して f (x) + c > a は f (x) > a − c と同値だから f + c は可測関数である.
f (x) と g(x) は仮定により実数なので,f (x) + g(x) > c と f (x) > −g(x) + c は同値だから,
[f + g > c] = [f > −g + c] である.また f と −g + c が可測関数だから,[f > −g + c] ∈ M
である.任意の実数 c についてこれが成り立つので,f + g は可測関数である.以上によ
り αf + βg が可測関数であることがわかった.
)
1(
(2): f g = (f + g)2 − (f − g)2 だから,f g が可測関数であることがわかる.
4
)
)
1(
1(
(3): min(f, g) = f + g − |f − g| , max(f, g) = f + g + |f − g| だから,min(f, g)
2
2
と max(f, g) は可測関数である.
記号 f : X −→ R に対して,f + = max(f, 0), f − = max(−f, 0) とおく.
{
{
f
(x)
(
f
(x)
≥
0
)
−f (x) ( f (x) < 0 )
f + (x) =
,
f − (x) =
0
( f (x) < 0 )
0
( f (x) ≥ 0 )
f + (x) ≥ 0, f − (x) ≥ 0 である.c ∈ X において,f + (c) > 0 ならば f − (c) = 0 であり,
f (c) > 0 ならば f + (c) = 0 である.また,
−
f (x) = f + (x) − f − (x),
|f (x)| = f + (x) + f − (x)
が成り立つ.
定理 f が可測関数であることと,f + と f − がともに可測関数であることは同値である.
注意 この定理により,可測関数に関する多くの事項を,値が非負の場合に帰着する
ことができる.
fn : X −→ R (n = 1, 2, . . .) とする.x ∈ X に対して R の部分集合 {fn (x) | n = 1, 2, . . .}
の上限を対応させる X から R への写像を sup fn で表し,下限を対応させる X から R へ
n
の写像を inf fn で表す.
n
)
sup fn (x) = sup{fn (x) | n = 1, 2, . . .}
)
(n
inf fn (x) = inf{fn (x) | n = 1, 2, . . .}
(
n
また,x ∈ X に対して R の元の列 f1 (x), f2 (x), . . . の上極限を対応させる X から R へ
の写像を lim fn で表し,下極限を対応させる X から R への写像を lim fn で表す.
n→∞
n→∞
(
)
lim fn (x) = lim fn (x),
n→∞
(
n→∞
)
lim fn (x) = lim fn (x)
n→∞
4
n→∞
R の元の列 f1 (x), f2 (x), . . . の極限 lim fn (x) が存在する (±∞ の場合もある) ための
n→∞
必要十分条件は,
lim fn (x) = lim fn (x)
n→∞
n→∞
が成り立つことである.すべての x ∈ X についてこれが成り立つとき, lim fn = lim fn
n→∞
n→∞
を lim fn で表し,関数列 f1 , f2 , . . . の極限という.
n→∞
sup fn , inf fn ,
lim fn ,
n→∞
n
n
lim fn ,
n→∞
lim fn は,X の各元 x ごとに定まる R の元の列
n→∞
f1 (x), f2 (x), . . . に基づいて定義されることに注意する.
定理 fn : X −→ R (n = 1, 2, . . .) を可測関数とする.
(1) sup fn , inf fn , lim fn , lim fn はどれも可測関数である.
n
n
n→∞
n→∞
(2) 関数列 f1 , f2 , . . . の極限が存在するならば,その極限 lim fn は可測関数である.
n→∞
証明 (1): a を任意の実数とする.x ∈ X に対して
sup{fn (x) | n = 1, 2, . . .} > a ⇐⇒ fn (x) > a となる n が存在する
だから,
(
)
∪
{x ∈ X | sup fn (x) > a} = ∞
n=1 {x ∈ X | fn (x) > a} ∈ M
n
となる.よって sup fn は可測関数である.
n
(
)
inf fn = − sup(−fn )
n
n
なので,inf fn も可測関数である.なお,
n
(
)
∪
{x ∈ X | inf fn (x) < a} = ∞
n=1 {x ∈ X | fn (x) < a} ∈ M
n
からも,inf fn が可測関数であることがわかる.
n
x ∈ X に対して
)
(
φk (x) = sup fn (x) = sup{fn (x) | n = k, k + 1, . . .}
n≥k
として φk : X −→ R (k = 1, 2, . . .) を定めると,
)
)
(
(
lim fn (x) = inf φk (x) = inf{φk (x) | k = 1, 2, . . .}
n→∞
k
である.上で示したことにより,φk = sup fn は可測関数であり, lim fn = inf φk も可測
n→∞
n≥k
関数であることがわかる.
(
)
lim fn = − lim (−fn )
n→∞
n→∞
だから, lim fn も可測関数である.
n→∞
5
k
(2): lim fn の定義と (1) から,(2) がわかる.
n→∞
定義 可測空間 (X, M) 上の可測関数 f で,その値が有限個の実数であるものを単関数
(simple function) という.単関数 f は 0 ではない異なる実数 a1 , . . . , an および互いに交わ
らない A1 , . . . An ∈ M を用いて
f (x) =
n
∑
ak χAk (x)
k=1
と表すことができる.ただし A ⊂ X に対して,χA は
{
1 (x ∈ A)
χA =
0 (x ̸∈ A)
で定義される X 上の関数である.χA を X の部分集合 A の特性関数 (characteristic function)
という.
注意 αk = 0 のときは αk χAk の項を取り除けばよいので,αk ̸= 0 という条件は重要で
はない.またたとえば α1 = α2 とすると,α1 χA1 + α2 χA2 = α1 χA1 ∪A2 で A1 ∪ A2 ∈ M で
n
∑
ak χAk は和
ある.a1 , . . . , an がどれも 0 ではなく互いに異なるならば,単関数の表示
k=1
の順序を除いて一意的である.実際,Ak = [f = ak ] = {x ∈ X | f (x) = ak } である.
問題 f, g が単関数ならば |f |, αf + βg (α, β ∈ R), f g, min(f, g), max(f, g) はどれ
も単関数であることを示せ.
定理 f : X −→ R は可測関数で,X 上で常に f (x) ≥ 0 とする.このとき,次の 2 つ
の条件を満たす単関数の列 fn (n = 1, 2, . . .) が存在する.
(1) 0 ≤ f1 (x) ≤ f2 (x) ≤ · · · for all x ∈ X.
(2) lim fn (x) = f (x) for all x ∈ X.
n→∞
さらに,f が X 上で有界ならば fn (n = 1, 2, . . .) は X 上で f に一様収束するように選
ぶことができる.
証明 n = 1, 2, . . . について,fn を次のように定める.

(k − 1
)
k
k − 1
n
≤
f
(x)
<
,
1
≤
k
≤
2
n
fn (x) =
2n
2n
( 2n
)
n
n ≤ f (x)
k−1
{
k}
すなわち,Ak = x ∈ X n ≤ f (x) < n として,
2
2
2 n
∑
k−1
n
fn =
k=1
2n
χAk + nχ[f ≥n]
k−1
= 0 であることに注意する.f は可測
2n
n
関数だから,Ak (1 ≤ k ≤ 2 n), [f ≥ n] は互いに交わらない M に属する X の部分集合
と定義される単関数である.k = 1 のときは
6
である.f の値を 1 ≤ f (x) < n と n ≤ f (x) の 2 つに分けて,さらに 1 ≤ f (x) < n の部分
k−1
k
k−1
は 2n 等分して n ≤ f (x) < n となるような x での値が n であり,n ≤ f (x) とな
2
2
2
るような x での値が n であるような単関数が fn である.
k−1
k
n + 1 のときは,n のときの n ≤ f (x) < n という範囲を 2 等分するので,すべて
2
2
の x について fn (x) ≤ fn+1 (x) である.
f (x) < n となる x に対しては |fn (x) − f (x)| < 1/2n であり,n ≤ f (x) となる x に対し
ては fn (x) = n だから,R の元の列 f1 (x), f2 (x), . . . について lim fn (x) = f (x) がすべて
n→∞
の x ∈ X について成り立つ.また,f が X 上で有界ならば単関数の列 f1 , f2 , . . . は X 上
で f に一様収束する.
定義 測度空間 (X, M, µ) において,µ(N ) = 0 となる N ∈ M を µ-零集合 (µ-null set)
または簡単に零集合 (null set) という.
∞
∑
∪∞
Nn (n = 1, 2, . . .) が零集合ならば,測度の劣加法性により µ( n=1 Nn ) ≤
µ(Nn ) = 0
n=1
∪∞
となるので, n=1 Nn も零集合である.
定義 (X, M, µ) を測度空間とする.x ∈ X に関する命題 P (x) について,零集合 N が
存在して,x ∈ X − N ならば (すなわち x ̸∈ N ならば) P (x) が成り立つとき,命題 P (x)
は µ に関してほとんどいたるところ (almost everywhere) で成り立つ,あるいはほとんど
すべて (almost all) の点で成り立つといい,P (x) µ-a.e. または P (x) a.e. のように書く.
問題 f, g : X −→ R を測度空間 (X, M, µ) 上の可測関数とする.零集合 N が存在して,
すべての x ∈ X − N について f (x) = g(x) であるとき,f = g a.e. あるいは f (x) = g(x)
a.e. と表す.これは同値関係であることを示せ.
定義 集合 X 上の関数の列 fn : X −→ R (n = 1, 2, . . .) が X 上の関数 f : X −→ R に
収束することの定義には,様々なものがある.
(i) R の元の列 fn (x) (n = 1, 2, . . .) について, lim fn (x) = f (x) がすべての x ∈ X に対
n→∞
して成り立つとき,関数列 fn (n = 1, 2, . . .) は X 上で f に各点収束 (pointwise convergence)
するという.単に fn (n = 1, 2, . . .) が f に収束するというときは,この各点収束を意味
する.
(ii) X 上の実数値関数 fn (x) (n = 1, 2, . . .) と f について,任意の正の実数 ε > 0 に対
して番号 K が存在して,
|fn (x) − f (x)| < ε for all x ∈ X, n ≥ K
が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は X 上で f に一様収束 (uniform convergence) すると
いう.
(iii) fn (n = 1, 2, . . .) および f を測度空間 (X, M, µ) 上の可測関数とする.零集合 N
が存在して,X − N 上で fn (n = 1, 2, . . .) が f に各点収束するとき,すなわち
X − {x ∈ X | lim fn (x) = f (x)} ⊂ N
n→∞
が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は f に概収束 (almost everywhere convergence) すると
いい, lim fn = f µ-a.e. あるいは fn → f (n → ∞) µ-a.e. と表す.
n→∞
7
(iv) fn (n = 1, 2, . . .) および f を測度空間 (X, M, µ) 上の実数値可測関数とする.任意
の正の実数 ε > 0 に対して
lim µ({x ∈ X | |fn (x) − f (x)| ≥ ε}) = 0
n→∞
が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は f に大域的測度収束 (global convergence in measure)
する,または測度収束するという.
任意の正の実数 ε > 0 と µ(F ) < ∞ であるような任意の F ∈ M に対して
lim µ({x ∈ F | |fn (x) − f (x)| ≥ ε}) = 0
n→∞
が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は f に局所的測度収束 (local convergence in measure)
するという.
実数の数列 {an } が α に収束するとは,任意に正の実数 ε > 0 が与えられたとき,
|an − α| < ε for all n > K
が成り立つような K が存在することであった.論理式を用いて簡潔に表すと,
(∀ε > 0)(∃K)(∀n > K)(| an − α | < ε)
となる.
ここで “任意の正の実数 ε > 0” は,“任意の正の整数 p に対する 1/p ” で置き換える
ことができる.したがって,実数値の関数 fn (n = 1, 2, . . .) と f に対して,実数の数列
f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束するような x ∈ X 全部の集合は
∞ {
∞ ∪
∞ ∩
∩
1}
x ∈ X |fn (x) − f (x)| <
p
p=1 k=1 n=k
と表される.実際,c がこの集合に含まれるとすると,任意の正の整数 p について c は
∞ ∩
∞ {
∪
1}
x ∈ X |fn (x) − f (x)| <
p
k=1 n=k
に含まれる.よってある k が存在して,c は
∞ {
∩
1}
x ∈ X |fn (x) − f (x)| <
p
n=k
に含まれる.これは
|fn (c) − f (c)| <
1
p
for all n ≥ k
が成り立つことを意味するので,数列 f1 (c), f2 (c), . . . は f (c) に収束する.
実数の数列 {an } が α に収束しないことは,{an } が α に収束することの否定だから,
ある正の実数 ε > 0 が存在して,どのように K を定めても,
|an − α| ≥ ε,
8
n>K
を満たす n が存在することである.論理式を用いて表すと,
(∃ε > 0)(∀K)(∃n > K)(| an − α | ≥ ε)
となる.
実数値の関数 fn (n = 1, 2, . . .) と f に対して,実数の数列 f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収
束しないような x ∈ X 全部の集合は,f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束するような x ∈ X 全
部の集合の X における補集合だから,ド・モルガンの法則により
∞ ∩
∞ ∪
∞ {
∪
1}
x ∈ X |fn (x) − f (x)| ≥
p
p=1 k=1 n=k
である.
定理 (Egorov) (X, M, µ) は測度空間で µ(X) < ∞ を満たすものとし,(X, M, µ) 上の
実数値可測関数の列 fn (n = 1, 2, . . .) が実数値可測関数 f に概収束するとする.このとき,
任意の正の実数 ε > 0 に対して次の 2 つの条件を満たす A ∈ M が存在する.
(1) µ(A) < ε.
(2) fn (n = 1, 2, . . .) は X − A 上で f に一様収束する.
証明 実数の数列 f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束するような x ∈ X 全部の集合を S と
おく.
∞ {
∞ ∪
∞ ∩
∩
1}
x ∈ X |fn (x) − f (x)| <
.
S=
p
p=1
k=1 n=k
fn , f は実数値の可測関数だから,fn − f と |fn − f | も可測関数なので,
{x ∈ X | |fn (x) − f (x)| < 1/p} ∈ M
である.したがって,S ∈ M である.f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束しないような x ∈ X
全部の集合は,S の X における補集合である.
∞ ∩
∞ ∪
∞ {
∪
1}
X −S =
x ∈ X |fn (x) − f (x)| ≥
.
p
p=1 k=1 n=k
仮定により X − S ⊂ N となる零集合 N が存在するが,S ∈ M より X − S ∈ M なの
で,測度の単調性により µ(X − S) = 0 である.
∞ {
∪
1}
Ak (p) =
x ∈ X |fn (x) − f (x)| ≥
p
n=k
∪∞ ∩∞
とおく.Ak (p) ∈ M で A1 (p)∩⊃ A2 (p) ⊃ · · · である.また,X − S = p=1 k=1 Ak (p)
∞
で µ(X − S) = 0 だから,µ( k=1 Ak (p)) = 0 である.仮定により µ(X) < ∞ だから特に
µ(A1 (p)) < ∞ なので,測度の性質により
lim µ(Ak (p)) = µ(
k→∞
9
∩∞
k=1
Ak (p)) = 0
が成り立つ.すなわち,µ(Ak (p)) (k = 1, 2, . . .) は単調減少で 0 に収束する.よって,ε > 0
に対して k1 < k2 < · · · を
µ(Akp (p)) < ε/2p
∪∞
を満たすようにとることができる.A = p=1 Akp (p) とおくと,A ∈ M で
µ(A) ≤
∞
∑
µ(Akp (p)) < ε
p=1
X −A=
∞
∩
∞
∩
p=1 n=kp
{
1}
x ∈ X |fn (x) − f (x)| <
p
が成り立つ.x ∈ X − A ならば,すべての p について x は
∞
∩
{x ∈ X | |fn (x) − f (x)| < 1/p}
n=kp
に含まれるから,
|fn (x) − f (x)| < 1/p for all x ∈ X − A, n ≥ kp
となる.任意に与えられた p に対して,これが成り立つような kp が存在するので,fn
(n = 1, 2, . . .) は X − A 上で f に一様収束する.
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