可測関数 最初に,写像に関する基本事項を復習する.f : X −→ Y を集合 X から集合 Y への写 像とする.X の部分集合 A に対して,f により A の元と対応する Y の元全部の集合を f による A の像 (image) といい,f (A) で表す. f (A) = {f (a) | a ∈ A} ⊂ Y. f (A) = ∅ となるための必要十分条件は,A = ∅ である. Y の部分集合 B に対して,f (x) ∈ B となる X の元 x 全部の集合を f による B の逆像 (inverse image) といい,f −1 (B) で表す. f −1 (B) = {x ∈ X | f (x) ∈ B} ⊂ X. B = {b} がひとつの元からなるときは,f −1 ({b}) を f −1 (b) と書くこともある. An (n = 1, 2, . . .) を X の部分集合,Bn (n = 1, 2, . . .) を Y の部分集合とすると,次の 式が成り立つ. ( ∪∞ ) ∪∞ ( ∩∞ ) ∩∞ (1) f f n=1 An = n=1 f (An ), n=1 An ⊂ n=1 f (An ). ( ) ( ) ∪ ∪ ∩ ∩∞ −1 ∞ ∞ ∞ −1 (2) f −1 (Bn ), f −1 (Bn ). n=1 Bn = n=1 f n=1 Bn = n=1 f (3) f (A1 − A2 ) ⊃ f (A1 ) − f (A2 ), f −1 (B1 − B2 ) = f −1 (B1 ) − f −1 (B2 ). 以下では,特に断らない限り可測空間 (X, M) をひとつ固定して考える.すなわち M は集合 X の部分集合の σ-加法族である.X から R = ∪{±∞} への写像 f : X −→ R を, X 上の関数ともいう.f (X) ⊂ R のとき,f を実数値関数という. R の部分集合 T に対して,f による T の逆像を [f ∈ T ] で表すこともある. f −1 (T ) = [f ∈ T ] = {x ∈ X | f (x) ∈ T }. 定義 写像 f : X −→ R について,任意の実数 a に対して {x ∈ X | f (x) > a} ∈ M が 成り立つとき,f を X 上の M-可測関数 (M-measurable function) または簡単に可測関数 という. 以下では,特に断らない限り可測関数は X 上の M-可測関数を意味するものとする. 記号に関する注意 {x ∈ X | f (x) > a} を,f −1 ((a, ∞)) または [f > a] とも書く.同 様に,f −1 ([a, ∞)) = [f ≥ a] = {x ∈ X | f (x) ≥ a}, f −1 ((−∞, a)) = [f < a] = {x ∈ X | f (x) < a}, f −1 ((−∞, a]) = [f ≤ a] = {x ∈ X | f (x) ≤ a}, f −1 (a) = [f = a] = {x ∈ X | f (x) = a}, [f ̸= a] = X − [f = a] = {x ∈ X | f (x) ̸= a},また a < b のとき f −1 ((a, b]) = [a < f ≤ b] = {x ∈ X | a < f (x) ≤ b} などとも書く. f この記号を用いると,f が M-可測関数であるとは,すべての実数 a について [f > a] = ((a, ∞)) ∈ M が成り立つことである. −1 f −1 ((a, ∞)) = [f > a] = {x ∈ X | f (x) > a} ∈ M for all a ∈ R. 定理 f : X −→ R に対して,次の条件はすべて同値である. 1 (1) f は可測関数である. (2) [f ≥ a] ∈ M for all a ∈ R. (3) [f < a] ∈ M for all a ∈ R. (4) [f ≤ a] ∈ M for all a ∈ R. (5) [f > r] ∈ M for all r ∈ Q. (Q は有理数全部の集合を表す) 証明 任意の実数 a に対して, (a, ∞) = ∞ ∪ [a + 1 , ∞), n [a, ∞) = n=1 ∞ ∩ (a − n1 , ∞) n=1 だから,(1) と (2) は同値である. {x ∈ X | f (x) < a} = X − {x ∈ X | f (x) ≥ a}, {x ∈ X | f (x) ≤ a} = X − {x ∈ X | f (x) > a} なので,(2) と (3) および (1) と (4) はそれぞれ同値である. 任意の実数 a に対して,a に収束する単調減少な有理数の数列 {rn } が存在するが,こ のとき ∞ ∪ (a, ∞) = (rn , ∞) n=1 が成り立つ.よって (1) と (5) は同値である. 注意 可測関数 f について,前定理より次のことがわかる. {x ∈ X | f (x) = a} = {x ∈ X | f (x) ≥ a} ∩ {x ∈ X | f (x) ≤ a} ∈ M (a ∈ R). ∪ {x ∈ X | f (x) < ∞} = ∞ n=1 {x ∈ X | f (x) < n} ∈ M. {x ∈ X | f (x) = ∞} = X − {x ∈ X | f (x) < ∞} ∈ M. ∪ {x ∈ X | f (x) > −∞} = ∞ n=1 {x ∈ X | f (x) > −n} ∈ M. {x ∈ X | f (x) = −∞} = X − {x ∈ X | f (x) > −∞} ∈ M. 注意 f を可測関数とする.R の区間 (a, b] に対して (a, b] = (a, ∞) ∩ (−∞, b] だから, 前定理より f −1 ((a, b]) = [a < f ≤ b] = [f > a] ∩ [f ≤ b] ∈ M である.R の Borel 集合族 B(R) はこのような区間全体から生成される σ-加法族だから,f による逆像の性質より, f −1 (B) ∈ M for all B ∈ B(R) が成り立つ.よって,写像 f : X −→ R について,f が可測関数であることは,f −1 (−∞), f −1 (∞), f −1 (B) (B ∈ B(R)) がすべて M に属することと同値である. 定理 f , g が可測関数ならば,次の X の部分集合はすべて M に属する. [f > g] = {x ∈ X | f (x) > g(x)} ∈ M. [f ≥ g] = {x ∈ X | f (x) ≥ g(x)} ∈ M. 2 [f = g] = {x ∈ X | f (x) = g(x)} ∈ M. [f ̸= g] = {x ∈ X | f (x) ̸= g(x)} ∈ M. 証明 有理数全部の集合 Q は R において稠密である.よって ∪( ) ∩ {x ∈ X | f (x) > g(x)} = {x ∈ X | f (x) > r} {x ∈ X | r > g(x)} r∈Q が成り立つが,Q は可算集合で M は σ-加法族だからこの右辺は M に属する.したがって, {x ∈ X | f (x) ≥ g(x)} = X − {x ∈ X | f (x) < g(x)}, ∩ {x ∈ X | f (x) = g(x)} = {x ∈ X | f (x) ≥ g(x)} {x ∈ X | f (x) ≤ g(x)}, {x ∈ X | f (x) ̸= g(x)} = X − {x ∈ X | f (x) = g(x)} はどれも M に属する. 定理 f が可測関数ならば,次の関数は可測関数である. (1) (αf )(x) = αf (x) (α ∈ R) (2) |f |α (x) = |f (x)|α (0 < α ∈ R) (3) (1/f )(x) = 1/f (x) (ただし,X 上で f (x) ̸= 0) 証明 (1): α = 0 のときは明らか.α > 0 のとき,任意の実数 a に対して {x ∈ X | αf (x) > a} = {x ∈ X | f (x) > a/α} ∈ M だから,αf は可測関数である.α < 0 のときも同様である. (2): a を任意の実数とする.a > 0 のとき {x ∈ X | |f (x)|α ≥ a} = {x ∈ X | |f (x)| ≥ a1/α } = {x ∈ X | f (x) ≥ a1/α } ∪ {x ∈ X | f (x) ≤ −a1/α } ∈ M となる.また a ≤ 0 のときは {x ∈ X | |f (x)|α ≥ a} = X ∈ M である.よって |f |α は可測関数である. (3): a を任意の実数とする.a > 0, a = 0, a < 0 の場合にそれぞれ {x ∈ X | (1/f )(x) > a} = {x ∈ X | f (x) < 1/a} ∩ {x ∈ X | f (x) > 0}, {x ∈ X | (1/f )(x) > 0} = {x ∈ X | f (x) > 0}, {x ∈ X | (1/f )(x) > a} = {x ∈ X | f (x) < 1/a} ∪ {x ∈ X | f (x) > 0} だから,1/f は可測関数である. αf + βg, f g, min(f, g), max(f, g) に関しては,∞ − ∞ のようなことが起こるのを避 けるため,とりあえず f と g の値が ±∞ にはならない場合を考える. 定理 f , g を実数値の可測関数とすると,次の関数は可測関数である. 3 (1) (αf + βg)(x) = αf (x) + βg(x) (α, β ∈ R) (2) (f g)(x) = f (x)g(x) (3) min(f, g)(x) = min{f (x), g(x)}, max(f, g)(x) = max{f (x), g(x)} 証明 (1): 前定理により αf と βg は可測関数である.c を実数として f + c を考える. 任意の実数 a に対して f (x) + c > a は f (x) > a − c と同値だから f + c は可測関数である. f (x) と g(x) は仮定により実数なので,f (x) + g(x) > c と f (x) > −g(x) + c は同値だから, [f + g > c] = [f > −g + c] である.また f と −g + c が可測関数だから,[f > −g + c] ∈ M である.任意の実数 c についてこれが成り立つので,f + g は可測関数である.以上によ り αf + βg が可測関数であることがわかった. ) 1( (2): f g = (f + g)2 − (f − g)2 だから,f g が可測関数であることがわかる. 4 ) ) 1( 1( (3): min(f, g) = f + g − |f − g| , max(f, g) = f + g + |f − g| だから,min(f, g) 2 2 と max(f, g) は可測関数である. 記号 f : X −→ R に対して,f + = max(f, 0), f − = max(−f, 0) とおく. { { f (x) ( f (x) ≥ 0 ) −f (x) ( f (x) < 0 ) f + (x) = , f − (x) = 0 ( f (x) < 0 ) 0 ( f (x) ≥ 0 ) f + (x) ≥ 0, f − (x) ≥ 0 である.c ∈ X において,f + (c) > 0 ならば f − (c) = 0 であり, f (c) > 0 ならば f + (c) = 0 である.また, − f (x) = f + (x) − f − (x), |f (x)| = f + (x) + f − (x) が成り立つ. 定理 f が可測関数であることと,f + と f − がともに可測関数であることは同値である. 注意 この定理により,可測関数に関する多くの事項を,値が非負の場合に帰着する ことができる. fn : X −→ R (n = 1, 2, . . .) とする.x ∈ X に対して R の部分集合 {fn (x) | n = 1, 2, . . .} の上限を対応させる X から R への写像を sup fn で表し,下限を対応させる X から R へ n の写像を inf fn で表す. n ) sup fn (x) = sup{fn (x) | n = 1, 2, . . .} ) (n inf fn (x) = inf{fn (x) | n = 1, 2, . . .} ( n また,x ∈ X に対して R の元の列 f1 (x), f2 (x), . . . の上極限を対応させる X から R へ の写像を lim fn で表し,下極限を対応させる X から R への写像を lim fn で表す. n→∞ n→∞ ( ) lim fn (x) = lim fn (x), n→∞ ( n→∞ ) lim fn (x) = lim fn (x) n→∞ 4 n→∞ R の元の列 f1 (x), f2 (x), . . . の極限 lim fn (x) が存在する (±∞ の場合もある) ための n→∞ 必要十分条件は, lim fn (x) = lim fn (x) n→∞ n→∞ が成り立つことである.すべての x ∈ X についてこれが成り立つとき, lim fn = lim fn n→∞ n→∞ を lim fn で表し,関数列 f1 , f2 , . . . の極限という. n→∞ sup fn , inf fn , lim fn , n→∞ n n lim fn , n→∞ lim fn は,X の各元 x ごとに定まる R の元の列 n→∞ f1 (x), f2 (x), . . . に基づいて定義されることに注意する. 定理 fn : X −→ R (n = 1, 2, . . .) を可測関数とする. (1) sup fn , inf fn , lim fn , lim fn はどれも可測関数である. n n n→∞ n→∞ (2) 関数列 f1 , f2 , . . . の極限が存在するならば,その極限 lim fn は可測関数である. n→∞ 証明 (1): a を任意の実数とする.x ∈ X に対して sup{fn (x) | n = 1, 2, . . .} > a ⇐⇒ fn (x) > a となる n が存在する だから, ( ) ∪ {x ∈ X | sup fn (x) > a} = ∞ n=1 {x ∈ X | fn (x) > a} ∈ M n となる.よって sup fn は可測関数である. n ( ) inf fn = − sup(−fn ) n n なので,inf fn も可測関数である.なお, n ( ) ∪ {x ∈ X | inf fn (x) < a} = ∞ n=1 {x ∈ X | fn (x) < a} ∈ M n からも,inf fn が可測関数であることがわかる. n x ∈ X に対して ) ( φk (x) = sup fn (x) = sup{fn (x) | n = k, k + 1, . . .} n≥k として φk : X −→ R (k = 1, 2, . . .) を定めると, ) ) ( ( lim fn (x) = inf φk (x) = inf{φk (x) | k = 1, 2, . . .} n→∞ k である.上で示したことにより,φk = sup fn は可測関数であり, lim fn = inf φk も可測 n→∞ n≥k 関数であることがわかる. ( ) lim fn = − lim (−fn ) n→∞ n→∞ だから, lim fn も可測関数である. n→∞ 5 k (2): lim fn の定義と (1) から,(2) がわかる. n→∞ 定義 可測空間 (X, M) 上の可測関数 f で,その値が有限個の実数であるものを単関数 (simple function) という.単関数 f は 0 ではない異なる実数 a1 , . . . , an および互いに交わ らない A1 , . . . An ∈ M を用いて f (x) = n ∑ ak χAk (x) k=1 と表すことができる.ただし A ⊂ X に対して,χA は { 1 (x ∈ A) χA = 0 (x ̸∈ A) で定義される X 上の関数である.χA を X の部分集合 A の特性関数 (characteristic function) という. 注意 αk = 0 のときは αk χAk の項を取り除けばよいので,αk ̸= 0 という条件は重要で はない.またたとえば α1 = α2 とすると,α1 χA1 + α2 χA2 = α1 χA1 ∪A2 で A1 ∪ A2 ∈ M で n ∑ ak χAk は和 ある.a1 , . . . , an がどれも 0 ではなく互いに異なるならば,単関数の表示 k=1 の順序を除いて一意的である.実際,Ak = [f = ak ] = {x ∈ X | f (x) = ak } である. 問題 f, g が単関数ならば |f |, αf + βg (α, β ∈ R), f g, min(f, g), max(f, g) はどれ も単関数であることを示せ. 定理 f : X −→ R は可測関数で,X 上で常に f (x) ≥ 0 とする.このとき,次の 2 つ の条件を満たす単関数の列 fn (n = 1, 2, . . .) が存在する. (1) 0 ≤ f1 (x) ≤ f2 (x) ≤ · · · for all x ∈ X. (2) lim fn (x) = f (x) for all x ∈ X. n→∞ さらに,f が X 上で有界ならば fn (n = 1, 2, . . .) は X 上で f に一様収束するように選 ぶことができる. 証明 n = 1, 2, . . . について,fn を次のように定める. (k − 1 ) k k − 1 n ≤ f (x) < , 1 ≤ k ≤ 2 n fn (x) = 2n 2n ( 2n ) n n ≤ f (x) k−1 { k} すなわち,Ak = x ∈ X n ≤ f (x) < n として, 2 2 2 n ∑ k−1 n fn = k=1 2n χAk + nχ[f ≥n] k−1 = 0 であることに注意する.f は可測 2n n 関数だから,Ak (1 ≤ k ≤ 2 n), [f ≥ n] は互いに交わらない M に属する X の部分集合 と定義される単関数である.k = 1 のときは 6 である.f の値を 1 ≤ f (x) < n と n ≤ f (x) の 2 つに分けて,さらに 1 ≤ f (x) < n の部分 k−1 k k−1 は 2n 等分して n ≤ f (x) < n となるような x での値が n であり,n ≤ f (x) とな 2 2 2 るような x での値が n であるような単関数が fn である. k−1 k n + 1 のときは,n のときの n ≤ f (x) < n という範囲を 2 等分するので,すべて 2 2 の x について fn (x) ≤ fn+1 (x) である. f (x) < n となる x に対しては |fn (x) − f (x)| < 1/2n であり,n ≤ f (x) となる x に対し ては fn (x) = n だから,R の元の列 f1 (x), f2 (x), . . . について lim fn (x) = f (x) がすべて n→∞ の x ∈ X について成り立つ.また,f が X 上で有界ならば単関数の列 f1 , f2 , . . . は X 上 で f に一様収束する. 定義 測度空間 (X, M, µ) において,µ(N ) = 0 となる N ∈ M を µ-零集合 (µ-null set) または簡単に零集合 (null set) という. ∞ ∑ ∪∞ Nn (n = 1, 2, . . .) が零集合ならば,測度の劣加法性により µ( n=1 Nn ) ≤ µ(Nn ) = 0 n=1 ∪∞ となるので, n=1 Nn も零集合である. 定義 (X, M, µ) を測度空間とする.x ∈ X に関する命題 P (x) について,零集合 N が 存在して,x ∈ X − N ならば (すなわち x ̸∈ N ならば) P (x) が成り立つとき,命題 P (x) は µ に関してほとんどいたるところ (almost everywhere) で成り立つ,あるいはほとんど すべて (almost all) の点で成り立つといい,P (x) µ-a.e. または P (x) a.e. のように書く. 問題 f, g : X −→ R を測度空間 (X, M, µ) 上の可測関数とする.零集合 N が存在して, すべての x ∈ X − N について f (x) = g(x) であるとき,f = g a.e. あるいは f (x) = g(x) a.e. と表す.これは同値関係であることを示せ. 定義 集合 X 上の関数の列 fn : X −→ R (n = 1, 2, . . .) が X 上の関数 f : X −→ R に 収束することの定義には,様々なものがある. (i) R の元の列 fn (x) (n = 1, 2, . . .) について, lim fn (x) = f (x) がすべての x ∈ X に対 n→∞ して成り立つとき,関数列 fn (n = 1, 2, . . .) は X 上で f に各点収束 (pointwise convergence) するという.単に fn (n = 1, 2, . . .) が f に収束するというときは,この各点収束を意味 する. (ii) X 上の実数値関数 fn (x) (n = 1, 2, . . .) と f について,任意の正の実数 ε > 0 に対 して番号 K が存在して, |fn (x) − f (x)| < ε for all x ∈ X, n ≥ K が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は X 上で f に一様収束 (uniform convergence) すると いう. (iii) fn (n = 1, 2, . . .) および f を測度空間 (X, M, µ) 上の可測関数とする.零集合 N が存在して,X − N 上で fn (n = 1, 2, . . .) が f に各点収束するとき,すなわち X − {x ∈ X | lim fn (x) = f (x)} ⊂ N n→∞ が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は f に概収束 (almost everywhere convergence) すると いい, lim fn = f µ-a.e. あるいは fn → f (n → ∞) µ-a.e. と表す. n→∞ 7 (iv) fn (n = 1, 2, . . .) および f を測度空間 (X, M, µ) 上の実数値可測関数とする.任意 の正の実数 ε > 0 に対して lim µ({x ∈ X | |fn (x) − f (x)| ≥ ε}) = 0 n→∞ が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は f に大域的測度収束 (global convergence in measure) する,または測度収束するという. 任意の正の実数 ε > 0 と µ(F ) < ∞ であるような任意の F ∈ M に対して lim µ({x ∈ F | |fn (x) − f (x)| ≥ ε}) = 0 n→∞ が成り立つとき,fn (n = 1, 2, . . .) は f に局所的測度収束 (local convergence in measure) するという. 実数の数列 {an } が α に収束するとは,任意に正の実数 ε > 0 が与えられたとき, |an − α| < ε for all n > K が成り立つような K が存在することであった.論理式を用いて簡潔に表すと, (∀ε > 0)(∃K)(∀n > K)(| an − α | < ε) となる. ここで “任意の正の実数 ε > 0” は,“任意の正の整数 p に対する 1/p ” で置き換える ことができる.したがって,実数値の関数 fn (n = 1, 2, . . .) と f に対して,実数の数列 f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束するような x ∈ X 全部の集合は ∞ { ∞ ∪ ∞ ∩ ∩ 1} x ∈ X |fn (x) − f (x)| < p p=1 k=1 n=k と表される.実際,c がこの集合に含まれるとすると,任意の正の整数 p について c は ∞ ∩ ∞ { ∪ 1} x ∈ X |fn (x) − f (x)| < p k=1 n=k に含まれる.よってある k が存在して,c は ∞ { ∩ 1} x ∈ X |fn (x) − f (x)| < p n=k に含まれる.これは |fn (c) − f (c)| < 1 p for all n ≥ k が成り立つことを意味するので,数列 f1 (c), f2 (c), . . . は f (c) に収束する. 実数の数列 {an } が α に収束しないことは,{an } が α に収束することの否定だから, ある正の実数 ε > 0 が存在して,どのように K を定めても, |an − α| ≥ ε, 8 n>K を満たす n が存在することである.論理式を用いて表すと, (∃ε > 0)(∀K)(∃n > K)(| an − α | ≥ ε) となる. 実数値の関数 fn (n = 1, 2, . . .) と f に対して,実数の数列 f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収 束しないような x ∈ X 全部の集合は,f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束するような x ∈ X 全 部の集合の X における補集合だから,ド・モルガンの法則により ∞ ∩ ∞ ∪ ∞ { ∪ 1} x ∈ X |fn (x) − f (x)| ≥ p p=1 k=1 n=k である. 定理 (Egorov) (X, M, µ) は測度空間で µ(X) < ∞ を満たすものとし,(X, M, µ) 上の 実数値可測関数の列 fn (n = 1, 2, . . .) が実数値可測関数 f に概収束するとする.このとき, 任意の正の実数 ε > 0 に対して次の 2 つの条件を満たす A ∈ M が存在する. (1) µ(A) < ε. (2) fn (n = 1, 2, . . .) は X − A 上で f に一様収束する. 証明 実数の数列 f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束するような x ∈ X 全部の集合を S と おく. ∞ { ∞ ∪ ∞ ∩ ∩ 1} x ∈ X |fn (x) − f (x)| < . S= p p=1 k=1 n=k fn , f は実数値の可測関数だから,fn − f と |fn − f | も可測関数なので, {x ∈ X | |fn (x) − f (x)| < 1/p} ∈ M である.したがって,S ∈ M である.f1 (x), f2 (x), . . . が f (x) に収束しないような x ∈ X 全部の集合は,S の X における補集合である. ∞ ∩ ∞ ∪ ∞ { ∪ 1} X −S = x ∈ X |fn (x) − f (x)| ≥ . p p=1 k=1 n=k 仮定により X − S ⊂ N となる零集合 N が存在するが,S ∈ M より X − S ∈ M なの で,測度の単調性により µ(X − S) = 0 である. ∞ { ∪ 1} Ak (p) = x ∈ X |fn (x) − f (x)| ≥ p n=k ∪∞ ∩∞ とおく.Ak (p) ∈ M で A1 (p)∩⊃ A2 (p) ⊃ · · · である.また,X − S = p=1 k=1 Ak (p) ∞ で µ(X − S) = 0 だから,µ( k=1 Ak (p)) = 0 である.仮定により µ(X) < ∞ だから特に µ(A1 (p)) < ∞ なので,測度の性質により lim µ(Ak (p)) = µ( k→∞ 9 ∩∞ k=1 Ak (p)) = 0 が成り立つ.すなわち,µ(Ak (p)) (k = 1, 2, . . .) は単調減少で 0 に収束する.よって,ε > 0 に対して k1 < k2 < · · · を µ(Akp (p)) < ε/2p ∪∞ を満たすようにとることができる.A = p=1 Akp (p) とおくと,A ∈ M で µ(A) ≤ ∞ ∑ µ(Akp (p)) < ε p=1 X −A= ∞ ∩ ∞ ∩ p=1 n=kp { 1} x ∈ X |fn (x) − f (x)| < p が成り立つ.x ∈ X − A ならば,すべての p について x は ∞ ∩ {x ∈ X | |fn (x) − f (x)| < 1/p} n=kp に含まれるから, |fn (x) − f (x)| < 1/p for all x ∈ X − A, n ≥ kp となる.任意に与えられた p に対して,これが成り立つような kp が存在するので,fn (n = 1, 2, . . .) は X − A 上で f に一様収束する. 10
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