ウォールスクリーンインターフェース実装によるメディアアートの試み 情 07

情 07-37 泉本優輝
2010 年度
卒業研究
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ウォールスクリーンインターフェース実装によるメディアアートの試み
情 07-37 泉本優輝
指導教員 辻光宏
一昔前では,コンピュータは会社の業務に使われるだけのものであったが,エンタテイメン
トやデジタルアートなどにも適用され,メディアや媒体としても利用されるようになった.そ
れと同時に,コンピュータのインタフェースもさまざまな形に進化している.その1つに,従
来のマウスやキーボードを使わない実世界指向インタフェースという分野がある.
本研究では,実世界指向インタフェースであるウォールスクリーンとデバイスを作成し,空
間でジェスチャを行うことでウォールスクリーンとのインタラクションを実現し,ウォールス
クリーンの特性を活かしたメディアアートを制作する.
第1章
実世界指向とメディアアート
本章では,まず実世界指向とメディアアートについて解説し,その融合について論じる.
実世界指向インタフェースとは,カメラでの撮影やプロジェクタでの投影,各種センサから
の実世界の情報の取得やタッチパネルでの直感的操作など,さまざまな手段を用いて制作され
た,空間に適したインタフェースである.
一方でメディアアートとは,アート作品に情報処理技術が関わることで,インタラクティブ
性やコミュニケーション要素などが拡張されたアートである.アートという静的なものに情報
処理技術を用いることで動的なアートが生み出され,情報処理技術にアートを取り入れること
で技術は作品として生まれ変わる.
さらに実世界指向に統合されてきた作品によって,アートによって表現された他の領域(例
えば文化や心理学)に影響を与える可能性が生まれる.このような可能性をもつようになった
メディアアートは,アートが技術によって拡張され,技術がアートによって影響される.
第2章
ウォールスクリーンインターフェース
実世界指向インタフェースにはさまざまな種類があるが,本研究ではウォールスクリーンを
実装し,利用する.ウォールスクリーンは文字通り,壁にプロジェクションされた大画面ディ
スプレイである.ウォールスクリーンの実装によって時間軸と空間軸を活かすことで,インタ
ラクティブな表現が可能となる.
そもそも壁を介した情報の提示は古く,旧石器時代に描かれた野牛、イノシシ、馬などの動
物を中心とするアルタミラ洞窟の壁画などが存在してきた.また壁の役割は,存在する場所の
特性によって制約されてきた.このような壁に情報処理技術を用いることで,壁は時間や空間
を超えた情報伝達も可能になる.
本研究ではウォールスクリーンとのインタラクションに Wii リモコンと指輪型 IR LED デバイ
スを利用する.ユーザが両手の指で示した四角形を、ユーザ指定のプライベート型ウォールが
実現する.その中で、手を開いたり閉じたり,動かしたりするジェスチャによる指示により,
ウォールスクリーンを操作することができる.
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2010 年度
卒業研究
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プライベートウォールのイメージと指輪型 IR LED デバイス
第3章
試作したメディアアート
システムの実験的アプリケーションと,ジェスチャを使った音楽メディア操作と VJ システム
を解説する.
実験的アプリケーションでは,ウォールスクリーンにばらまいた写真をポインティングで選
択するとともに,ジェスチャで拡大縮小や移動を行う「Picture」と,3D 空間に設置した立方
体を,ジェスチャだけで拡大縮小や回転を行う「Box」の2つのアプリケーションを試作して、
比較検討した.
さらに,検討を踏まえて, ジェスチャを使っ
た音楽メディア操作と VJ システム:VJWall を
制作した.VJWall は,ジェスチャ操作型簡易音
楽プレイヤーとビジュアルジョッキー(以下,
VJ)を統合したメディアアートである.予め決
められたジェスチャで曲送りやボリュームの調
整を行い,その曲調やボリュームに応じて,曲
のビジュアライゼーションが行い,壁を対象に
空間拡張を狙ったアプリケーションである.
音楽を空間的にビジュアライズした VJ Wall
第4章
まとめ
ウォールスクリーンの技術は,ウォールスクリーンのビジネス展開の一環として,デジタル
サイネージへの展開が考えられる.既存のサイネージに,さまざまなインタフェースを用いる
ことで,個人に適した広告を提供できるのではないだろうか.また,ブレインストーミングや
グループワークに適用すれば,大画面,直感的操作,多人数対応という点から,より質の良い
議論が行える可能性も考えられる.
参考文献
・松下伸行ら「HoloWall:壁面型インターフェースの新しい構成手法」,1JSSST,1998
・田中
悠ら「壁とパーソナル空間の交わりを情報環境にするシステム i-wall」,ITE,2002
・廣瀬 通孝「バーチャルリアリティ学」,工業調査会,2010