卒業研究・作品 間の家具 家の中は共有空間と個別空間の2つに分ける事が出来ます。リビングなどの共有 ー家具の役割と家族の居場所ー 空間では家族間の関係性が生まれ、私室などの個別空間では個人のプライバシーが シナ合板・木材 h1415×w1630×d830mm 守られます。しかし近年では、ロフトなどの建築的手法で共有空間と個別空間の要素 西田 芽以 れる第3の空間です。この空間では、子供は親が傍にいる安心感の中で独自の感性を Nishida, Mei デザイン工芸コース を取り入れた中間的な空間が作られています。家族を近くに感じながらも一人にな 育み、大人は一人の時間を楽しみながら家族と団欒する事が出来ます。このような家 族間に適度な距離感を作る空間を部屋ではなく家具で生み出せないだろうかと考 え、空間を仕切る家具を製作しました。 この家具はリビングにあるソファを枠で囲い、布を掛けて空間を作ります。柔らか く、光を通す布は内と外のコミュニケーションを程よく遮断します。また、布の掛け 方や重ね方で空間を自由に演出する事ができます。子供の頃遊んだ秘密基地のよう な囲まれた空間で心躍る感覚を楽しんでほしいと思います。 044 卒業研究・作品 kronikka 子供用ベッドは兄弟で使い回すことができても、なかなか一生ものとまではいき ー本棚として転用することができる子供用ベッドー ません。ベッドという大きな家具を子供の頃の思い出とともにずっと使い続けるこ タモ・ウレタンフォーム・布 ベッド時:h540×w742×d1542mm 本 棚 時:h1542×w742×d350mm とができれば。そんな想いから kronikka(クロニッカ)は生まれました。ベッドから 森下 織香 Morishita, Orika デザイン工芸コース マットを外した後、本体を縦に起こし、マットを支えていた板を 90°回転させるこ とで、本棚として使用することができます。一度本棚として使用された後も、新しい 命とともにもう一度ベッドとして使用されることを想定しシンプルな木ダボによる 回転式の構造を採用しています。無垢材を使用し何代にもわたって使える耐久性や 風合いを持たせつつ、回転の仕組みを視覚的なアクセントにし、全体的に丸みをもた せるなど子供の家具としても愛嬌のある造形を目指しました。kronikka とはフィン ランド語で年代記を意味します。北欧諸国の家具や生活に対するこだわり、一つの家 具を何世代にもわたって受け継いでゆく姿勢に共感し、この家具を制作しました。 047 卒業研究・作品 自然をモチーフにした デザイン展開の研究 ニヤトー・ガラス h1480×w150×d250mm 清野 諒 Seino, Ryo 造形建築科学コース プロダクトデザインや建築の分野では、動植物の生態や構造、自然の現象からヒン トを得て、その特徴を生かし製品に応用した事例が数多くある。 そんななかで、見た目 のかたちや構造を倣うのではなく、モチーフの本質を抽出しモチーフから受ける「感 覚」のようなものを形にすることはできないかと考えた。 そこで自然物・現象の中で 人の生活と密接な関係にある「太陽」をモチーフに選んだ。 人は昔から太陽の光を受 け、意識せずともそれに連動して生活してきた。 そのことから「太陽」の本質のひとつ は、人に時の流れを感じさせ一日を作ることであると考えた。 そこから、時計とは違う 表現で時の流れを感じさせるものができるのではないかという着想に至った。 この作品では、正確な時刻が表示されない代わりに、時間の進みを直感的にとらえ る事のできるものを目指した。時間に追われることの多い現代人に時計とは違う 「時」の感じ方をしてほしいという思いを込め、作品を制作した。 050 卒業研究・作品 親子のコミュニケーションを サポートするツールのデザイン 幼児期のコミュニケーションはその後の人格形成のためにとても重要です。中でも親 と子の心と体のふれあいができる「絵本の読み聞かせ」に着目し、より充実した親子の ー絵本の読み聞かせの場面を題材にー コミュニケーションの時間を提供するための家具のデザイン、制作を行いました。 ブナ h600×sh420×sh330×w950×d500mm h230×w320×d260mm この椅子は子どもの成長に合わせて使い方を変えていきます。子どもがおすわりの出 宮川 真紀 Miyakawa Maki デザイン工芸コース 来ない時期は、大きな座面に腰かけた大人の膝の上に座らせ絵本の読み聞かせをしま す。子どもがひとりで座れるようになれば大人は下の座面、子どもは上の小さな座面に 座ります。子どもの座る座面を高くすることで親と子の目線も近づきました。また、大き な座面と小さな座面を内側に向けることで親と子が自然に寄り添える形になり、絵本も よく見えるようなっています。小さなスツールは子どもの踏み台や足置きとして、もちろ ん持ち運んでスツールとして使用することも可能です。 子どもだけでなく大人にも親と子のコミュニケーションを楽しんでもらい、お互いの 温もりを感じてもらえるよう願いを込めて制作しました。 046 卒業研究・作品 ソト家具 フィンランドに留学している時、大きなラグを敷いてピクニックをしている人たちを ー内と外を繋ぐ家具ー よく見かけました。屋外であっても部屋にいるような雰囲気を作り出し、くつろぎなが 鉄・木 h520×w720×d720mm h500×sh350×w500×d450mm ら楽しんでいる様子に大きな感銘を受けました。今回提案する「ソト家具」は、その時 松原 千明 に受けた印象をもとに、 「室内空間の快適さを開放感のある屋外でも感じてほしい」 そんな思いを込めて制作をしました。 Matsubara Chiaki 心地よい時間とゆったりと過ごせる空間を作り出せるように、自然の景観に馴染み デザイン工芸コース やすい木と鉄を「ソト家具」の素材に選びました。これらの素材は、年月とともに色や 風合いが変化していく様子を楽しむことができ、より愛着を感じてもらえればと思い ます。 044 卒業研究・作品 Family 私は、一般家庭における収納家具を調査したところ「カラーボックス」に代表され ーリビングにある家族のための家具ー るオープンシェルフが多く使われていることに気づきました。しかし、安価で汎用性 本体:化粧合板(ウォールナット・栓・胡桃・花梨) 脚部:ウォールナット・栓 h975×w1020×d324mm h975×w324×d324mm h170×w618×d244mm h170×w170×d170mm の高い便利な収納家具として「カラーボックス」を使用していても、多くの方は愛着を 赤堀 夕香 あまり持ち合わせていないということがわかりました。そこで、家族にとってかけがえ のない存在になるような「愛されて長く使われる家具」を目標に収納家具を設計しま した。 家族のものをしまう場所であるとともに、家具そのものを「ひとつの家族」に見立 Akahori Yuka て、家族それぞれに物語があるように、世界にひとつしかないカタチを築けるような デザイン工芸コース 収納家具に仕立てました。一番大きな体は包容力のあるお父さん、その横にはすらっ としたお母さんが寄り添っており、お父さんやお母さんの周りには大勢の子供たちが 集っています。自分たちの大切なものを大事にしまってくれているこの家具たちに、 使っている家族も愛着をもつことでしょう。 045
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