塩害を受ける鉄筋コンクリート構造物のひび割れモードに関する研究

塩害を受ける鉄筋コンクリート構造物のひび割れモードに関する研究
防災システム講座 松島研究室 99T016 清利吉史
3.力学モデルの検証
1.はじめに
一般の海洋環境を模擬する実験として,乾湿繰返に
近年,山陽新幹線等,日本各地で鉄筋コンクリート
構造物でのコンクリートの剥離剥落事故が問題となっ
よる腐食実験を行っている.実験は 15 週経過したが,
ている.塩害や中性化によるひび割れによって事故は
まだひび割れは発生していない.写真1は現在の供試
起った.ひび割れモードの違いにより使用性の面で大
体の状況を表している.
きな違いが生じる.本研究では,ひび割れモードの違
ひび割れの発生モデルの妥当性を検証するために,
いを調べるために,力学モデルを構築し,乾湿繰返実
3次元の FEM 解析を行なった.解析では,コンクリー
験及び数値解析によりひび割れの進展を調べた.
トのひび割れを考慮するためにひずみ軟化モデルを採
2.ひび割れの力学モデル
用した.図3は,実験で行った供試体内,主鉄筋が 4
力学モデルは,ひび割れモードをかぶりと鉄筋間隔
本(図は半分のモデル)で,せん断補強筋がある場合の相
を因子とし,①鉄筋に沿ったひび割れ,②鉄筋同士を
当ひずみの分布を示している.図中で,相当ひずみが
結ぶ水平はく離ひび割れ,③表面はく離ひび割れの力
大きくなるほど,濃い色をしている.図に見られるよ
学モデルを構築した.図 1 に鉄筋間隔とひび割れモー
うに,水平方向の相当ひずみが卓越しており,水平は
ドの関係を示す.図2にかぶりとひび割れモードの関
く離ひび割れを発生している.
係を示す.
C
15.0
H
H
C
C
C
C
C
H
10.0
水平はく離ひび割れ
lφ
5.0
C
H:水平はく離ひび割れ
C:鉄筋に沿ったひび割れ
φ
鉄筋に沿ったひび割れ
0.0
0.0
2.0
4.0
6.0
鉄筋間隔の無次元量 l/Xt
8.0
10.0
写真1 現在の供試体状況
図 1 鉄筋間隔とひび割れモード
50
S:はく離ひび割れ
C:鉄筋に沿ったひび割れ
40
C
鉄筋
C
φ
30
C
ひび割れ発生時期 Tc(年)
ひび割れ発生時期 Tc(年)
20.0
鉄筋に沿ったひび割れ
20
10
S
S
S
C
はく離ひび割れ
C
C
C
C
0
0.0
0.5
1.0
1.5
かぶりの無次元量 Xt/φ
2.0
図3 終局状態の相当ひずみ
図2かぶりとひび割れモード
14