平成 27 年 9 月 23 日 放送 これで安心!食中毒を防ぐ 3 つの原則 感染

平成 27 年 9 月 23 日 放送
これで安心!食中毒を防ぐ 3 つの原則
筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター水戸協同病院
感染管理認定看護師
栢内
直美
司会者:食中毒とは何ですか?
栢 内:食中毒の原因となる細菌やウイルスが付着した有害や有毒な物質が含ま
れる食品を食べる事によって起こる健康被害の事を言います。症状は頭
痛、発熱の他、嘔吐、腹痛、下痢などの急性胃腸炎症状を起こします。
まれに腎臓障害、呼吸麻痺を起こし死亡するケースもあります。
司会者:食中毒の原因となる細菌とウイルスの違いについて教えて下さい。
栢 内:細菌もウイルスも目に見えない小さなものです。細菌は温度や湿度など
の条件がそろうと食べ物の中で増えて、その食べ物を食べる事によって
食中毒を起こします。夏場に多く発生しています。代表的な細菌は腸管
出血性大腸菌やカンピロバクター・サルモネラなどがあります。室温
20℃で活発に増え始め、人間や動物の体温ぐらいの温度で増えるスピー
ドが最も早くなります。一方ウイルスは、自ら増えることは出来ず、食
べ物を通じて体の中の入ると、腸の中で増えて食中毒を引き起こします。
代表的なウイルスは、ノロウイルスです。特に冬に多く発生しています。
その他、細菌やウイルス以外にも、毒キノコやフグなどの「自然毒」、
殺菌剤などの化学物質などでも食中毒は発生しています。
司会者:食中毒を引き起こす細菌やウイルスについて主なものを教えてください。
栢 内:まず0157、0111 などが良く知られている腸管出血性大腸菌です。牛や
豚の腸の中にいる病原大腸菌の一つで、腹痛や水のような下痢、出血性
の下痢を引き起こします。食肉などに付着し、肉を生で食べたり、加熱
不十分な肉を食べたりすることによって発生します。乳幼児やお年寄り
の方などは重症化しやすく死に至る場合もあります。過去に生レーバー
を食べて死亡者が出た事件も記憶に新しいと思います。次はカンピロバ
クターです。牛や豚、鶏、猫や犬などの腸の中にいる細菌です。これも
腸管出血性大腸菌と同じようにこの細菌が付着した肉を食べたり加熱
が不十分の状態で食べたりすることによって発生します。サルモネラは、
牛や豚、鶏、猫、犬などの腸内にいる細菌で牛、豚、鶏などの食肉や卵
などが原因となります。
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またペットやネズミなどによって食べ物に菌が付着し発生する場合も
あります。付着した食べ物を食べて、半日から 2 日後くらいで、激しい
胃腸炎、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が現れます。次はセレウ
ス菌です。聞き慣れない細菌ですが、河や土の中など自然界の広く分布
している細菌です。土がつきやすい穀類や豆類、香辛料などが主な感染
源となっており、チャーハンやスパゲティー、スープなどが原因食品と
なっています。嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。このセレウス
菌は熱に強く、加熱による殺菌は難しいのが特徴です。但し少量では発
生しないので菌を増やさないようにするのがポイントです。次はブドウ
球菌です。ブドウ球菌は自然界に広く分布し、人間の皮膚やのどにもい
ます。調理する人の手や指に傷があったり、傷口が化膿している場合な
どは食品に付着する可能性が高くなります。その食品を食べると 3 時間
前後で急激に嘔吐、下痢などが起こります。腸炎ビブリオは魚介類が原
因となることが多く、7 月~9 月に発生することが多いです。この細菌は
10 度以下では発育することが出来ず、加熱することによって死んでしま
います。12 時間前後で強い腹痛、下痢が起こります。次はウイルスです。
ノロウイルスは先ほどもお話しましたが、手指や食品などを介して、口
から体内に入る事によって感染し腸の中で、増えて下痢、腹痛などを起
こします。ノロウイルスが付着した二枚貝などを十分に加熱しないまま
食べたり、ノロウイルスに感染した人の手やつば、便、嘔吐物などを介
して発生する二次感染もあります。
司会者:それでは食中毒を予防するにはどのようにしたらよいでしょうか?
栢 内:食中毒の予防の 3 原則として、食中毒の原因を「つけない」「増やさな
い」「やっつける」ことが必要です。
司会者:その 3 原則を実践するための基本的な方法を教えて下さい。
栢 内:細菌を「つけない」ようにするには、手洗いを徹底することです。手に
付着した細菌やウイルスは水で洗うだけでは取り除けません。指の間や
爪の中まで石鹸を使ってきれいに洗いましょう。皆さんも普段からされ
ていることとだと思いますが、まず調理を始める前、生の肉や魚、卵な
どを取り扱う前後、調理の途中でトイレに行ったり、鼻をかんだりした
後、動物などに触れた後などは手洗いが必要です。また、調理器具へも
細菌が付着するのを防止する必要があります。生の肉や魚などを切った
まな板などの器具から、加熱しないで食べる野菜などへ菌が付着しない
ように使用の度にきれいに洗いましょう。加熱しないものを先に取り扱
うのも一つの方法です。また肉や魚はビニール袋や容器に入れ、他の食
品に肉汁などが掛からないようします。
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野菜などの食材をきちんと洗います。また今はカット野菜など便利なも
のも普及していますが、カット野菜もきちんと流水で洗う事が必要です。
また、よく言われているように焼肉などの場合は、生の肉と焼けた肉を
つかむ箸は別のものを使用した方が良いでしょう。次に、細菌を「増や
さない」ようにするには、低温で保存することです。10℃以下では細菌
の増殖はゆっくりとなり、-15℃以下では増殖が止まります。買い物の
時などは肉や魚などの生鮮食料品、冷凍食品などは最後に購入し寄り道
しないで直ぐ帰り、出来るだけ早く冷蔵庫に入れましょう。冷蔵庫に入
れても細菌はゆっくり増殖するので、冷蔵庫を過信せず早めに食べる事
が大事です。また冷蔵庫、冷凍庫は詰めすぎると冷気の循環が悪くなる
ので注意しましょう。三つ目の、細菌を「やっつける」ためには加熱処
理をすることです。殆どの細菌やウイルスは加熱によって、死んでしま
います。肉や魚はもちろん野菜なども加熱すれば安心です。特に肉類は
中心まで加熱することが大事で、中心部を 75℃で 1 分間以上加熱するこ
とが目安です。ふきんやまな板、包丁などの調理器具にも細菌やウイル
スが付着するので洗剤できちんと洗ってから、熱湯で殺菌することや台
所用殺菌剤の使用も効果的です。
司会者:食中毒というと飲食店での食事が原因と思われがちですが、毎日食べて
いる家庭での食事でも起こり得るのですね。もし食中毒と疑われる場合
はどのようにしたらよいでしょうか?
栢 内:嘔吐や下痢の症状は、原因物質を体の中から出そうという体の防御反応
です。医師の診断を受けずに市販の下痢止めなどの薬の使用は控え、早
めに病院を受診し診断を受けることをお勧めします。
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