腎臓病とは何か? - JAグループ茨城

平成 27 年 3 月 17 日放送
腎臓病とは何か?
茨城西南医療センター病院
内科 坂井 健太郎
司会者:腎臓は身体の中に何個ありますか?
坂
井:腎臓はふたつあります。
司会者:腎臓はどのくらいの大きさですか?
坂
井:腎臓は大体10cmくらいのそら豆に似た形をしています。
司会者:腎臓はどこにありますか?
坂
井:お腹にふたつ入っていますが、どちらかというと背中側にあります。
司会者:腎臓は何をしている臓器ですか?
坂
井:主な働きは、尿を作ることです。人間の1日の尿量は1500−2000ml/
日くらいです。私達は毎日トイレへ何回も行きますが、無意識にそのくらいの尿
を出しています。
司会者:具体的な腎臓のはたらきは何ですか?
坂
井:簡単に言うと、人間が生きていく上で、身体の中には自然と老廃物(ゴミ)が溜
まっていきます。その身体に溜まったゴミを尿の中に出して捨てているのです。
司会者:他に腎臓の働きはありますか?
坂
井:腎臓はいくつかのホルモンを出しています。血を産生するホルモン、骨を丈夫に
するホルモンなどです。また、血圧を調整するホルモンも出しており、血圧にも
影響を及ぼしています。
司会者:腎臓の機能をみる検査はなんですか?
坂
井:主に血液検査と尿検査です。血液検査ではクレアチニンという数値があって、正
常では1以下ですが、腎臓が悪くなると1を超えてしまいます。あと、尿検査も
重要であり、腎臓が悪いと尿蛋白や尿潜血が陽性になります。
司会者:健康診断で尿検査異常を言われた場合、病院に行った方が良いのでしょうか?
坂
井:必ず病院に行って下さい。病院で再検査を受けて、再度尿異常が確認された場合
には精密検査が必要です。精密検査には、腹部超音波検査やCT検査などの画像
検査があります。病院で再度検査をやって尿異常がなければ、経過観察となるこ
ともあります。尿検査異常はその日の体調などに左右され、一過性に異常となる
こともあるからです。
精密検査の中には、入院して行う腎生検というものがあります。腎臓の検査の中
では最も詳しい検査ですが、危険も伴いますから外来では行っていません。具体
的に言うと「背中に針を刺して、一部の腎臓を取ってくる」という検査です。そ
して、取ってきた腎臓を顕微鏡で調べます。そうすることによって詳しい診断が
できます。しかしながら、腎臓に針を刺すため出血するリスクがあり、慎重にや
らないといけません。
司会者:尿検査異常あるにも関わらず、放っておくとどうなりますか?
坂
井:腎臓の病気は様々ありますが、放っておくと進行するものもあります。血液検査
で先ほど述べたクレアチニンという数値が1を超えると腎不全となってしまいま
す。
司会者:腎臓が悪くなると、腎不全と呼ばれる状態になるのですか?
坂
井:そうです。一旦悪くなってしまった腎臓病は、徐々に進行していくことが多いで
す。放っておくとクレアチニンの数値が上がっていき、8を超えると人工透析に
なってしまいます。
司会者:腎臓病は治療できますか?
坂
井:腎臓病には、細かく言うと多数の種類の病気が含まれます。治療可能な病気と治
療できない病気があります。
司会者:治療法はどのようなものでしょうか?
坂
井:代表的な治療は、ステロイドの内服(飲み薬)です。ステロイドは免疫力を抑え
る薬で、喘息、アレルギー、リウマチなどの多くの病気に対して使われています
が、腎臓病にも使われます。
司会者:治療できない病気もあるとのことですが・・・?
坂
井:確かに先天性、遺伝性の腎臓病など治療ができず進行してしまう病気もあります。
その場合には病院へ通院し、採血、尿検査などを定期的に受けることが必要です。
司会者:最近、CKD(慢性腎臓病)といった言葉をよく耳にしますが、それは何でしょ
うか?
坂
井:文字通り、慢性に進行する腎臓病のことです。2002年にアメリカで提唱され、
全世界に広がった概念です。腎臓病の中には多くの病気が含まれますが、幅広く
一般の方に知ってもらい、啓蒙するために作られた概念です。
司会者:日本人ではCKDの方はどれくらいいるのでしょうか?
坂
井:1300万人を超えるとされています。大体国民の10人に1人は腎臓病となっ
ています。糖尿病が予備軍を含め1400万人くらいと言われているので、ほぼ
同じくらいに多い病気です。つまり腎臓病は非常にありふれた病気なのです。
司会者:何でそんなに多いのですか?
坂
井:生活習慣と密接に関わるからです。糖尿病も生活習慣病と言われていますが、腎
臓病も同様に生活習慣によって引き起こされることが多いためです。糖尿病が進
行すると腎臓が悪くなり、糖尿病性腎症と言われます。日本では、この糖尿病性
腎症が増えています。また、高脂血症、高尿酸血症などの生活習慣病とCKDを
合併することも非常に多く見られます。高血圧も腎臓にはよくありません。高血
圧は動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞などの大きなリスクになりますが、
実は高血圧は腎臓病をも引き起こしてしまいます。反対に腎臓病になると高血圧
が悪化します。
司会者:血圧は腎臓にとって影響があるのですね?
坂
井:非常に血圧は重要です。腎臓病を予防するためのみならず、腎臓病を進行させな
いためにも血圧は重視せねばなりません。よく「高血圧は塩分の取り過ぎによっ
て起こる」と言われますが、塩分を制限することが大切です。日本人は、通常1
0g/日の塩分を摂取すると言われますが、腎臓病の方には6g/日の塩分制限
を進めています。
司会者:腎臓が悪くなると、どうなりますか?
坂
井:血圧が上昇してしまいます。また尿蛋白が陽性の場合には、足にむくみが出るこ
ともあります。身体のカルシウムのバランスが崩れ、骨が脆くなり、骨折しやす
くなります。また、血液検査でカリウム値が上昇します。カリウム値が上昇する
と不整脈を引き起こし、心臓が止まってしまうこともあり非常に危険です。その
他、貧血が進行し、疲れやすくなったりします。
司会者:最後にはどうなりますか?
坂
井:心不全になり、命が危険になる場合があります。そのため、血液検査でクレアチ
ニンの数値が8を超えると人工透析を始めることを考慮します。腎臓の働きが
5%以下になると、先ほど述べた様々な症状が出現し、人工透析が必要になって
きます。
司会者:人工透析とは何ですか?
坂
井:人工透析は、腎臓の代わりに機械を使用して身体の老廃物を取り除きます。日本
では現在30万人以上の方が人工透析を受けています。
司会者:人工透析はつらいのでしょうか?
坂
井:週3回病院に通い、1回の治療時間は3∼4時間です。透析は、以前はつらいと
のイメージがありましたが、現在では機械・技術が進歩し、それほどつらいこと
はありません。
司会者:腎臓病を防ぐためには,どうしたらよいですか?
坂
井:腎臓病は早期発見・早期治療につきます。一旦、腎不全が慢性化すると、元に戻
ることはほとんどありません。健康診断を年に1回は受けて頂き、尿検査をして
下さい。
また、生活習慣の改善も必要です。食事については、塩分を過剰に取り過ぎない
ようにしましょう。塩分制限は高血圧の予防にもなります。規則正しい生活習慣
を身に着けることも大切です。