お子さんが小児喘息といわれたら

平成 27 年 6 月 16 日放送
お子さんが小児喘息といわれたら
茨城西南医療センター病院
小児科科長 野末裕紀
(のずえ ひろき)
司会者:小児喘息とは何ですか?
野
末:小児喘息とは、風邪などのウイルス感染や、アレルギーを引き起こす原因となる
物質、主にダニやほこりなどを吸い込んだ場合に、空気の通り道である気道の粘
膜に腫れやむくみが生じて気道が狭くなり、発作的に咳が出たり、ぜーぜーして
呼吸が苦しくなる病気です。夜中から朝方にかけて出る咳や、ぜーぜー、ひゅー
ひゅーと聞こえる喘鳴という症状を繰り返していれば小児喘息の可能性が高いと
いえます。
司会者:発作の主な症状は?
野
末:息が苦しくなって、咳がでます。発作が強くなると乾いた咳が出て、呼吸をする
時にぜーぜー、ひゅーひゅーのような喘鳴が聞こえるのが主な特徴です。重症の
場合は、空気が肺に入っていかないので逆に喘鳴が小さくなり、さらには意識が
低下するなど生命が危険な状態、これを呼吸不全と呼びますが、このような重篤
な場合もあります。発作前には、鼻水や鼻づまりが出るなどの前ぶれの症状が出
ることがありますから、こうした症状にも気を配ってあげるといいと思います。
司会者:なぜ、発作が起きるんですか?
野
末:喘息発作の原因のひとつは気管支に起こるアレルギー反応です。ハウスダスト、
ダニ、空中のカビ、花粉、犬・猫の毛やフケなどがアレルギーを起こす原因で抗
原とよびます。また風邪、特にRSウイルス、インフルエンザといったウイルス
感染症などが発作を引き起こします。そして、重症の喘息であればあるほど気道
の過敏性、つまり気管支の反応性が高まった状態が強く、たばこ、花火のけむり、
大気汚染、季節の変わり目の寒冷、温度差などの気象条件の変化などに敏感に反
応して発作を起こします。運動によって起こる運動誘発喘息もあります。対策と
しては、アレルギーを起こす原因となる抗原を少なくする環境の調整、また適切
な薬物治療によって長期にわたって喘息発作がない状態を維持することが大切で
す。
司会者:どんな治療をするんですか?
野
末:喘息の治療薬には、発作が起こらないように気管支という肺につながっている空
気の通り道の腫れを抑えて発作を予防していく長期管理薬と、発作が起きた時に
狭くなった気管支を拡げてしずめる発作治療薬の 2 つがあります。毎日する治療
として、喘息症状の改善と発作予防のため、吸入ステロイド薬、ロイコトリエン
受容体拮抗薬というお薬を中心に、継続して治療をしていきます。薬剤治療以外
にも、ダニやほこり対策といった家庭での生活環境を整えることも心がけてあげ
ましょう。
司会者:家でまず気をつけることは何ですか?
野
末:アレルギーの原因となるほこりやダニをしっかり除去するために、掃除機でほこ
りを吸い取り、丁寧に拭き掃除を行うようにしましょう。寝具は、こまめに洗っ
て取り替えましょう。観葉植物などは葉にほこりが付くほか、土にカビが生えた
り、水やりで湿度が上がってダニが繁殖しやすくなるため、少なくとも寝室には
置かないようにしましょう。
司会者:ペットを家の中で飼ってもいいですか?
野
末:犬、猫などの毛や糞、唾液などはアレルギーを引き起こす原因となる抗原の 1 つ
です。さらに、ペットの毛やフケは喘息発作の原因となるダニのエサにもなりま
す。発作を避ける意味でも家の中で毛のあるペットは飼わない方が望ましいです。
また、家族同様に愛され飼育されているペットを手放すことは大変難しい問題で
す。どうしても飼いたいという場合には屋外で飼うようにしましょう。
司会者:家族がたばこを吸っているのですが、影響はありますか?
野
末:同じ部屋の中でたばこを吸う人がいるだけで、受動喫煙によって発作を誘発させ
るばかりでなく、症状を悪化させてしまうことがあります。また、たばこの煙を
吸って起こった発作は、運動して起こった発作より治りにくいのが特徴です。ご
家族の理解と協力によって症状が改善され、予防も可能となりますので、お子さ
んと一緒に喘息に向き合うためにも、まずは保護者が禁煙しましょう。
司会者:お掃除などのお手伝いをさせてもいいですか?
野
末:掃除の際には部屋の中にホコリが舞うため、マスクを着用の上、なるべく拭き掃
除などのお手伝いが良いでしょう。ホコリの多い押入れや物置、動物の飼育小屋
などは避け、掃除機を使う場合は排気口から出る空気にも注意が必要です。
司会者:ぬいぐるみを部屋においても大丈夫ですか?
野
末:年数のたったぬいぐるみには、1000 匹前後のダニがいると思われます。ダニアレ
ルギーの強い方は、ぬいぐるみは、持たない方が良いでしょう。
どうしてもぬいぐるみを持ちたいのであれば、丸洗いできるもので、かつ掃除機
で、ダニを頻回に吸引しやすいような、毛の短いものや高密度繊維のものを選び
ましょう。
ダニは、高熱と乾燥に弱いので、ふとん乾燥機なども利用するといいでしょう。
天日干しも、有効です。ダニのえさになるのは、人の皮や食べ物のカスです。普
段から、清潔な状態を保てるようにしましょう。しかし、こども達にとって、ぬ
いぐるみは、必需品です。臨機応変にやってください。
司会者:保育園、幼稚園、学校には通えますか?
野
末:保育園や幼稚園、学校に通うことはできますが、家庭とは異なる環境になるため、
気をつけなければならないことがあります。まずは、施設側にお子さんにアレル
ギーがあることを伝え、お薬を持たせていることや、発作の原因がわかっている
場合はそれも伝えておくことが大切です。園や学校の先生が喘息について詳しい
とは限らないので、注意が必要な事柄などの情報をあらかじめ提供しておくよう
にしましょう。学校への連絡には、
『学校生活管理指導表』を利用する方法もあり
ます。
司会者:学校生活管理指導表って何ですか?
野
末:この指導表は、マラソン大会や修学旅行などの校内・校外活動に安心して参加す
るために学校における配慮や管理が必要な場合に使用されるものです。
その中に、喘息児の病型・治療や生活上の留意点、緊急時連絡先、医療機関、医
師名が記載されます。
その手順は、学校から希望する保護者に渡され、主治医に記入してもらい学校に
提出するものです。これらを使って、学校側と密に連携できるとお互い安心だと
思います。
司会者:小児喘息は成長したら治りますか?
野
末:いつ頃治るのかは、喘息のタイプや重症度によってさまざまです。重症のお子さ
んの多くは成人まで持ち越すことが多いですが、早期から適切な治療を受けるこ
とで、5∼6 割は成人までには治ると言われています。しかし、しばらく発作がな
い期間が続いたとしても、一時的に落ち着いているだけで、完全に治っておらず
再発する可能性がありますので、発作がなくても定期的に受診し治療を続けるこ
とが大切です。
小児喘息は決して悲観的な病気ではなく、医療機関とご家庭、それに幼稚園、学
校と連携していけば、治る可能性も高いですし、全く普通の元気な生活が送れま
すので、協力しあってがんばってやりましょう。