関数とグラフ

工業数学 note 4
Kazuma Matsuda
2015 年 5 月 26 日
4 章 関数とグラフ (1)
4.1 関数とその関数のグラフ
二つの変数 x, y があって,x の値を定めるとそれに対応tして y の値がただ一つに定まるとき,y は x
の関数であるという.一般に y が x の関数であることを y = f (x) と表す.また,関数 y = f (x) を単に関
数 f (x) ということがある.
関数 y = f (x) において,変数の値が a のとき,それに対応する y の値を f (a) で表し,これを x = a に
おける関数 f (x) の値という.
一般に,関数 y = f (x) に対して,x のとる値の範囲を関数の定義域,x の値に対応して y のとる値の範
囲を関数の値域という.y = f (x) において,定義域がときに示されていない (明示されていない) ときに
は,その関数が意味をもつような x の値全体を定義域と考える.
原点で直交する 2 本の数直線によって座標の定められた平面を座標平面という.座標平面上で y = f (x)
を満たす (x, y) の組 (a, b) を座標とする点の集まりの成す図形を,関数 y = f (x) のグラフという.
一般に,方程式に当てはまる変数の値を方程式の解といい,その解をすべて求めることを方程式を解く
という.x についての方程式 2x + 1 = 5 の解は x = 2 であり,x, y についての方程式 3x + 1 = 2y + 5 の
解は 3x − 2y − 4 = 0 を満たす点 (x, y) 全体の集まりである.
1
4.2 一次関数のグラフ
y = 15 − 3x のように左辺が y ,右辺が x の一次式で表されるとき,y は x の一次関数であるという.
( m)
x の一次関数 y = mx + n のグラフは y 軸上の点 (0, n) を通り,傾きが m =
の直線である.こ
1
のグラフを簡単に直線 y = mx + n ともいい,y = mx + n をこの直線の方程式という.
一般に,x, y についての方程式を成り立たせる点 (x, y) の描く図形を,その方程式の表す図形または方
程式のグラフという.また,その方程式をその図形の方程式という.
4.2.1 点 A(x1 , y1 ) を通り,傾きが m の直線の方程式
求める直線の方程式を
(4.1)
y = mx + n
とすると,この直線が点 A を通ることから
(4.2)
y1 = mx1 + n
が成り立つ.(4.1),(4.2) 式から n を消去すれば点 A(x1 , y1 ) を通り,傾きが m の直線の方程式
y − y1 = m(x − x1 )
を得る.
4.2.2 異なる 2 点 A(x1 , y1 ), B(x2 , y2 ) を通る直線 l の方程式
i)
x1 ̸= x2 のとき.
直線 AB の傾き m は
m=
y2 − y1
x2 − x1
となる.点 (x1 , y1 ) を通るので,その方程式は
2
y − y1 =
y2 − y1
(x − x1 )
x2 − x1
あるいは,点 (x2 , y2 ) を通るので
y − y2 =
y2 − y1
(x − x2 )
x2 − x1
と表される.
ii)
x1 = x2 のとき.
直線の方程式は
x = x1
と表される.
[例 1]
点 (a, 0) と点 (0, b) を通る直線の方程式を求める.
直線の傾きは
m=
b−0
b
=−
0−a
a
となる.従って,直線の方程式
b
y − 0 = − (x − a)
a
b
∴y =− x+b
a
を得る.この式は
x y
+ =1
a
b
と書くこともできる.この直線において,a を x 切片,b を y 切片という ( 図 4・3 ).
3
4.3 2 直線の並行と垂直
2 直線が並行あるいは垂直になる条件を考える.
図 4・4 において,2 直線
l1 : y = m1 x + n1
l2 : y = m2 x + n2
が平行ならばそれらの傾きが等しく,傾きが等しければ 2 直線は平行である.従って
⇔
2 直線 y = m1 x + n1 と y = m2 x + n2 が並行
m1 = m2
が成り立つ.
次に,図 4・5 において,2 直線 l1 と l2 が垂直ならば,それらに並行で原点 O を通る 2 直線
y = m1 x
,
y = m2 x
も垂直である.これらの直線上にそれぞれ点 P(1, m1 ), Q(1, m2 ) をとると
OP ⊥ OQ
であり,△OPQ についての三平方の定理より
OP2 + OQ2 = PQ2
ここで
√
12 + m1 2
√
OQ = 12 + m2 2
PQ = m1 − m2
OP =
4
より
( 2
) (
)
2
1 + m1 2 + 12 + m2 2 = (m1 − m2 )
∴ 1 + m1 2 + 1 + m2 2 = m1 2 − 2m1 m2 + m2 2
∴ 2m1 m2 = −2
∴ m1 m2 = −1
(4.3)
を得る.従って
⇔
2 直線 y = m1 x + n1 と y = m2 x + n2 が垂直
m1 m2 = −1
が成り立つ.
[例 2]
直線 ax + by + c = 0 と原点の距離を求める.
l : ax + by + c = 0 とし,原点 O から直線 l に垂線 OH を下ろすと,直線 OH は原点を通り l に垂直な
直線であるから,この垂線を l′ とすると,(4.3) 式より
l′ : bx − ay = 0
となる.H は l と l′ の交点であるので,H の座標 (x0 , y0 ) は連立方程式
{
ax + by + c = 0
bx − ay = 0
の解である.上式第 1 式の両辺に a を乗じ,第 2 式の両辺に b を乗じると
{
∴
a2 x + aby + ac = 0
b2 x − aby
=0

ac

 x0 = − a2 + b2

 y0 = −
a2
bc
+ b2
を得る.従って,原点 O と直線 l の距離 OH は次のようになる.
√
OH = x0 2 + y0 2 =
√
√
√
2 2
2 2
a c
b c
+ 2
=
2
2
(a + b ) (a + b2 )
c2
=√
a2 + b2
|c|
=√
2
a + b2
5
(
)
c 2 a2 + b2
(a2 + b2 )
4.4 二次関数のグラフ
4.4.1 二次関数
y が x の二次式で表されるとき,y は x の二次関数という.
一般に,二次関数は a, b, c を定数として
y = ax2 + bx + c
の形に書き表される.ただし,a ̸= 0 である.
4.4.2 y = ax2 + bx + c のグラフ
この方程式は次のように変形できる.
y = ax2 + bx + c
(
)
b
2
=a x + x +c
a
{
( )2 ( )2 }
b
b
b
= a x2 + x +
+c
−
a
2a
2a
(
)2
b
b2
=a x+
−a 2 +c
2a
4a
)2
(
b2 − 4ac
b
−
=a x+
2a
4a
b
b2 − 4ac
, q=−
とおくと,y = ax2 + bx + c は y = a(x − p)2 + q と書き表すことが
2a
4a
できる.従って,二次関数 y = ax2 + bx + c のグラフは y = ax2 のグラフを平行移動したものであり
ここで,p = −
b
軸 : 直線 x = −
2a
,
(
)
b
b2 − 4ac
頂点 : 点 − , −
2a
4a
である.
二次関数 y = ax2 + bx + c のグラフを放物線 y = ax2 + bx + c ともいい,y = ax2 + bx + c をこの放物線
の方程式という.また,y = ax2 + bx + c は y について一次,x について二次の方程式であるともいえる.
[例 3]
放物線 y = ax2 + bx + c を x 軸,y 軸,原点に関してそれぞれ対称移動して得られる放物線の方程式を
求める.
図 4・6 において,放物線 y = ax2 + bx + c を F とし,F を x 軸に関して対称移動して得られる放物線を
G とすると,G 上の任意の点 P(x, y) についてこの対象移動によって P に移される F 上の点は Q(x, −y)
である.よって、G の方程式は
G : − y = ax2 + bx + c
∴ y = −ax2 − bx − v
6
で表される.同様に、y 軸、原点に関して対称移動して得られる放物線 H, S の方程式は
H : y = a(−x)2 + b(−x) + c
∴ y = ax2 − bx + c
S : − y = a(−x)2 + b(−x) + c
∴ y = −ax2 + bx − c
で表される.
4.5 無理関数
根号内に変数を含む式を無理式といい,無理式で表される関数を無理関数という.図 4・7 に示すよう
に,無理関数
y=
√
2x
(4.4)
の定義域は x ≥ 0,値域は y ≥ 0 である.上式を 2 乗すると
y 2 = 2x
(4.5)
となり,これは原点を頂点とし,x 軸を対称軸とする放物線を表す ( 図 4・8 ).y =
放物線の原点を含む上半分になる.
7
√
2x のグラフはこの
y=
√
−2x のグラフは図 4・9 のようになる.
一般に,a ̸= 0 のとき
√
ax + b =
√ (
)
b
a x+
a
と表されるので,無理関数 y =
たものである.
√
√
b
ax + b のグラフは y = ax のグラフを x 軸方向に − だけ平行移動し
a
4.6 逆関数
一般に,関数 y = f (x) において,y の値を定めると x の値がただ一つ定まるとき,即ち,x が y の関数
として x = g(y) と表されるとき,その x と y を入れ換えてできた関数
y = g(x)
を元の関数 y = f (x) の逆関数といい
y = f −1 (x)
と書く.
[例 4]
)
1( 2
y=
x + 1 (x ≥ 0) の逆関数を求める.
2
)
1( 2
x +1
2
2y = x2 + 1
y=
x2 = 1y − 1
√
x = 2y − 1
(x ≥ 0)
x と y を入れ換えると,逆関数は
8
y=
√
2x − 1
である ( 図 4・10 ).
関数 y = f (x) のグラフとその逆関数 y = f −1 (x) のグラフは直線 y = x に関して対称である.
4.7 合成関数
y が t の関数,t が x の関数であるとき,y は x の関数になる.例えば
y=
1
t+1
,
t=x−2
であるとき,上式第 2 式の t を第 1 式に代入すると
1
(x − 2) + 1
1
=
x−1
y=
が得られる.
一般に,y が t の関数で y = g(t) と表され,t が x の関数で t = f (x) と表されるとき,y は x の関数で
y = g(f (x))
と表され,このようにして得られる関数 y = g(f (x)) を f と g の合成関数という.y = g(f (x)) は
y = (g ◦ f )(x)
とも書く.
9
演習問題
問1
( ) ( )
4
−2
−
5
3
( )
6
=
2
) ( )
(
−→
a
−2
PR =
−
a−1
3
(
)
a+2
=
a−4
−→
PQ =
−→
−→
であるから,PR = k PQ (k ̸= 0) であればよい.よって
(
)
( )
a+2
6
=k
a−4
2
{
a + 2 = 6k
∴
a − 4 = 2k
3
∴k= , a=7
2
∴ a = 7, R(7, 6)
10
問2
ax + by + c = 0 と原点の距離に対し
|c|
√
a2 + b2
(1)
直線 ax + by + c = 0 と原点をそれぞれ x 方向へ x1 ,y 方向へ y1 移動すると
a(x + x1 ) + b(y + y1 ) + c = 0
∴ ax + bx + (ax1 + by1 + c) = 0
よって,(1) の c の部分を ax1 + by1 + c に置き換えればよい.即ち
|ax1 + by1 + c|
√
a2 + b2
問3
y = 3x2 − 18x + 31
(
)
= 3 x2 − 6x + 31
(
)
= 3 x2 − 6x + 9 − 9 + 31
= 3(x − 3)2 + 4
頂点は (3, 4).
A(3, 4) とすると,A は y =
4
x 上にある.
3
11
問4
y=
√
2x + 3 より
2x + 3 ≥ 0
3
∴ x ≥ − · · · · · · ①
2
√
√
√
2 つの関数 y =
2x + 1, y = x の交点を求めると,等式 2x + 3 = x において, 2x + 3 ≥ 0 より
√
x ≥ 0. 2x + 3 = x の両辺を 2 乗して
2x + 3 = x2
x2 − 2x − 3 = 0
(x − 3)(x + 1) = 0
∴ x = −1, 3
ここで x = −1 は不適.よって 2 つの関数の交点の x 座標は 3.グラフと①より
√
2x + 3 > x
⇔
−
3
≤x<3
2
問5
y = 2x + 3 より
2x = y − 3
1
3
x= x−
2
2
x と y を入れ換えて
y=
3
1
x−
2
2
12
問6
f (x) = 2x − 5, g(x) = x2
g(f (x)) = (2x − 5)2
= 4x2 − 20x + 25
f (g(x)) = 2x2 − 5
13