戦後日本経済の歩み 第4回 戦後日本経済の歩み http://anaito.web.fc2.com/ 第 4 回 2015/5/12 戦後改革 1 I、改革と復興 1、占領下の暮らし (1)敗戦と占領 敗戦後の生活:インフレーションと食糧難 (2)爆発的インフレーション 敗戦直後からの猛烈なインフレーション:1944 年から 49 年までに、卸売物価、約 90 倍、小売物価、 約 60 倍:年平均インフレ率:46 年、300 %以上 インフレの原因:モノ不足 ヤミ市の横行 (3)食糧危機と住宅難 敗戦直後:1946 年:食糧配給の遅配、欠配が多発→アメリカからの緊急食糧援助で乗り切る 食糧危機は 1948 年まで続く←植民地からの輸入が途絶えた影響 住宅不足:空襲の影響:全国の住宅数の約 15 %が焼失 (4)潜在的失業・ホワイトカラーの貧困化 人口の急増: 45-50 年に 15. 6 %増大←(i)外地からの引揚者、(ii)ベビーブーム:47-49 年 労働力人口の増大:軍人の復員、軍需工場の解雇 失業率は急増はしなかった:農村への吸収 農家の生活水準:米の供出、 47 年以降、農産物と工業製品の価格差拡大、他方で、農地改革により 地代負担がなくなり、50 年頃には戦前と同水準 都市において、ホワイトカラーとブルーカラーの所得格差縮小 賃金水準は低かった←労働生産性の低さ:戦前よりも高くはなかった (5)平等化 所得分配の平等化←農工間の所得格差縮小、ホワイトカラーとブルーカラーの所得格差縮小、累進課 税の強化 資産分布の平等化←農地改革、財閥解体、財産税 2、戦後改革と占領政策の転換 (1)対日占領政策の特徴 1945 年 8 月 20 日 -1952 年 4 月 28 日(サンフランシスコ平和条約):事実上アメリカによる単独占領、 間接占領 占領の目的:非軍事化、民主化:アメリカ左派ニューディールの理念:所得分配の平等化、経済的機 会の均等化 但し、アメリカと同じシステムにすることが目標 アメリカ政府、GHQ における路線対立 アメリカ政府:ハードピース路線 vs ソフトピース路線(資本主義の早期再建) GHQ:ニューディール派(日本の民主化を主張)vs 冷戦派(現実主義的、ソ連との対抗を重視) (2)行政改革 陸海軍、大東亜省、内務省などの解体 1949 年、国家行政組織法:2000 年まで、続く体制 安価な政府の実現:政府の規模が比較的小さい (3)戦争後の処理 -1- 戦後日本経済の歩み 第4回 1946 年、戦時補償打ち切り、個人財産税の強化 企業再建整備法、金融機関再建整備法:金融機関は新旧勘定を分離して、損失を処理 産業企業:株主と債権者の負担 但し、激しいインフレーションにより、旧勘定の不良債権は大きく目減り 企業の財務内容は劣化→設備投資への制約 (4)財閥解体・独占禁止 公職追放:財閥の解体、経営者追放→経営者支配へ 持株会社解体、株式の売却、集中排除指定(大企業の解体、一部部門の分離:18 社) 金融に関しては、結局、適用されず 証券民主化:個人株主の増加 (5)金融制度の改革 GHQ の目的:間接金融から直接金融主体のシステムへ→最終的には達成されず ( i)特殊銀行の廃止:朝鮮銀行、台湾銀行の閉鎖、横浜正金銀行(外国為替専門銀行→東京銀行)、日 本興業銀行の民営化、(ii)金融機関への財閥の影響力の排除、(iii)証券取引法による銀行業と証券業 の分離 特殊銀行の廃止、銀行業と証券業の分離のみ実現(金融庁の設置などは実現せず) (6)農地改革 日本政府のイニシアチブで開始:第 1 次農地改革案(45 年):(i)小作料金納化、(ii)農地委員会の改 組、拡充、(iii)強制譲渡方式による自作農創設 第 2 次農地改革(46 年):1 町歩以上の小作地を解放 (7)労働改革 労働組合法、労働関係調整法、労働基準法の制定 労働委員会の設置、労働省(1947)の新設 労働組合の承認 労働政策の転換:1948 年:アメリカにおける労働運動に対する制限の強化が影響 公務員のスト権の否定 (8)社会保障の充実 社会保障の充実:国民健康保険法(1938 年)など、戦時中から進展 戦後、憲法における社会権、生存権の規定 生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法など 1947 年、労働基準法 労働者災害補償保険法、失業保険法 (9)経済制度の改革 (i)1947 年、財政法:単年度均衡財政 (ii)独占禁止法 (iii)1948 年、証券取引法:アメリカに類似:銀行と証券の分離 (iv)1949 年、商法改正 (10)占領政策の転換 1948 年以降、東西冷戦の進行に伴い、占領政策を転換 賠償政策の緩和:49 年、中間賠償の中止 (11)戦後改革の意義:二つの見方 (i)断絶説:占領軍による上からの改革、日本の経済システムは再編され、戦前とは異なっている (ii)連続説:1930 年以降に日本でも現れた資本主義体制の世界的な変化の一環 戦後改革:福祉国家の理念の日本への適用:ただし、アメリカ的、特にニューディール的改革 -2-
© Copyright 2024 ExpyDoc