デュアルモードキャビティのある帯域通過導波管フィルタ

COMPUTER SIMULATION TECHNOLOGY
デュアルモードキャビティのある帯域通過導波管フィルタ
導波管フィルタは低損失であることから高電力分野に広く応用されています。この事例の導波管アイリスフ
ィルタは標準の X バンド軍事衛星通信用として多くの国々で使用されています。受信拒否フィルタとして伝
送ソースの出力口に設置され、受信帯域の相互変調生成物を除去します。7.9∼8.4 GHz を通過帯域とし、7.75
GHz 以下を高レベルで遮断します。この高遮断を実現するために設計ではデュアルモードが採用され、合計
8 つのキャビティのうち中央の 2 つがデュアルモードで動作します。
図 1:導波管帯域通過フィルタの構造モデル
フィルタ構造を図 1 に示します。全構造をパラメータ化し、最適化や感度解析を可能とします。計算は CST
MW STUDIO(CST MWS)の四面体メッシュ周波数領域ソルバーで行いました。初期メッシュのメッシュセ
ル数は約 1300 です。これに対し収束基準の設定を S パラメータ誤差 1%としたところ、15 回のメッシュ適応
パスが行われ、最終的なメッシュ数は 65000 となりました。適応に要した時間は 12 分弱、ソルバー計算は
60 秒ほどで終了しました。計算に使用した PC は 1GB RAM、1.8 GHz Pentium M。メモリ使用量はピーク時で
も 400MB 未満でした。
図 2:メッシュ適応後の最終的なメッシュ
15 回のメッシュ適応パスを終了した最終メッシュを図 2 に示します。CST MWS 周波数領域ソルバーの計算
では S パラメータ補間スキームにより広帯域 S パラメータを求める設定を行い、結果的に 22 周波数サンプル
の計算で収束に達しました。メッシュ適応過程と周波数スイープの所要時間の合計は 30 分以下でした。
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図 3: フィルタの S パラメータ
ソルバー計算で求めた S パラメータを図 3 に示します。周波数範囲は 7∼8.5 GHz。7.78 GHz 付近でゼロ伝送
を示しています。
図 4: 通過帯域における電界の平均
8.25 GHz と 7.5 GHz の電界分布の平均をそれぞれ図 4 と 5 に示します。エネルギーは 8.35 GHz ではフィルタ
を通過し、7.5 GHz では遮断されています。
図 5: 阻止帯域の電界の平均
CST MWS では問題に適したソルバーを選択して使用できます。さらに周波数領域ソルバーは六面体メッシ
ュと四面体メッシュの両方に対応し、問題に適したメッシュの選択が可能です。この事例の四面体メッシュ
と周波数領域ソルバーは高 Q のフィルタ構造の解析に適した組み合わせです。反復ソルバーはメモリ効率に
優れ、たとえば 20 万メッシュを超えるような負荷の大きい問題についても 1 つの周波数点あたり数分で解を
求めることができます(2GB PC)。また補間周波数スイープ機能により、いくつかの周波数点を計算するの
みで広帯域応答が得られます。
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