FDTD法による内部導体装置Mini

第17回 若手科学者によるプラズマ研究会
FDTD法による内部導体装置MINIRTプラズマ中の電磁場解析
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
河合 智賀
2014/3/6(木)
MINI-RTにおけるEBW励起実験

O-X-B,SX-FX-Bモード変換によるEBWの励起を観測
装置内でモード変換が起こる場所を予め特定したい
(実験の際にどのあたりを観測すればいいか)
 アンテナからの放射特性を知りたい
(適切な入射角の設定)
シミュレーションによって検討

図1.CMAダイアグラムの電子サイ
クロトロン周波数近傍
MINI-RTにおけるEBW励起実験

(装置スケール)≃(入射マイクロ波の波長)
幾何光学近似(光線追跡)が有効でない
Full-Waveで解析

FDTD(Finite-Difference Time-Domain)法
実装が単純(Maxwell方程式を実時空間で差分化)
 入射マイクロ波に対するプラズマの過渡応答の解析

電磁場の媒質としてのプラズマ

物質中のMaxwell方程式
𝜕𝑩
𝜕𝑫
𝛻×𝑬=−
, 𝛻 × 𝑩 = 𝜇0 𝑱 +
, 𝑫 = 𝜖0 𝑬 + 𝑷
𝜕𝑡
𝜕𝑡
 𝒋𝑝𝑜𝑙
≡
𝜕𝑷
は分極電流
𝜕𝑡
1
𝜕𝑬
𝛻×𝑩=
𝜖0
+ 𝒋𝑝𝑜𝑙
𝜇0
𝜕𝑡
𝑷 𝒓, 𝑡 = ∫ 𝝌 𝒓 − 𝒓′ , 𝑡 − 𝑡 ′ 𝑬 𝒓′ , 𝑡 ′ 𝑑𝒓′𝑑𝑡′
𝑷 𝒌, 𝜔 = 𝝌 𝒌, 𝜔 𝑬(𝒌, 𝜔)
 誘電率テンソル𝜖0 𝐊 𝐤, 𝜔 = 𝜖0 (1 + 𝜒 𝒌, 𝜔 )は波動に
対するプラズマの応答を表す
電磁場の媒質としてのプラズマ

電流は主に電子の流れが担う
𝜕𝒗𝑒
𝑚 𝑒 𝑛𝑒
= −𝑒𝑛𝑒 𝑬 + 𝒗𝒆 × 𝑩0
𝜕𝑡
↓
𝜕𝑱 𝑛𝑒 𝑒 2
𝑒
=
𝑬−
𝑱 × 𝑩0
𝜕𝑡
𝑚𝑒
𝑚𝑒
(𝒗𝒆 は電子流体の速度、𝑩0 は外部磁場、𝑱 ≡ −𝑒𝑛𝑒 𝒗𝑒 )

これをMaxwell方程式と連立させて解く
(0次の外部磁場に対する1次の量として波動場を解く)
微分演算子の差分化

時間と空間に対して2次精度の中心差分をとる
𝑬n −𝑬n−1
1
Δ𝑡
𝑡= 𝑛−2 Δt
𝑩
𝑱
1
𝑛+2
1
𝑛−2
−𝑱
Δ𝑡

𝑡=𝑛Δ𝑡
=
𝑛𝑒 𝑒 2 n
𝑬
𝑚𝑒
空間に関してはYeeセルを用いる
e.g.
𝜕𝐵𝑧 𝑖,𝑗
𝜕𝑡
=
𝐸𝑥 𝑖,𝑗+1 −𝐸𝑥 (𝑖,𝑗)
Δ𝑦
−
𝐸𝑦 𝑖+1,𝑗 −𝐸𝑦 𝑖,𝑗
Δx
=
1
n+2
1
𝛻
𝜖0 𝜇0
−𝑩
Δ𝑡
×𝑩
1
n−2
𝑒 1
−
𝑚𝑒 2
𝑡=𝑛Δ𝑡
1
𝑛+2
𝑱
1
n−2
1 n−1
− 𝑱 2
𝜖0
= −𝛻 × 𝑬n
1
𝑛−2
+𝑱
× 𝑩0
1次元問題での解析

X波の一様媒質(Ω𝑖 = 𝜔𝑝𝑒 = 0.25[GHz])中での伝搬
図2. CMAダイアグラムにおけSlow-X波
図3. X波の分散関係
解析解:青、数値計算:赤
1次元問題での解析
Mini-RTの磁場配位・密度分布を模した1次元モデル
 弱磁場・低密度側から1[GHz]で 𝐽𝑧 を励振,𝑩0 =
𝑩0 𝑥 𝒚

図4. 磁場強度、電子密度、屈折率の分布
図5. Ex,Ez,By,電場の偏光
t=8[ns]
図6. t=12[ns]
サブグリッド法
入射マイクロ波の波長(≃ 300[mm])
≫励起EBWの波長(≃ 2[mm])
 観測対象としたい2つのモードの波長が大きく異なる


Δ𝑥 (計算領域における空間のグリッド幅)
≲(1/10*波長)でないと波動を精度よく再現できない
Δ𝑡も小さく取る必要がある(CFL条件)
1
1
1
𝑐Δ𝑡 ≤
+ 2+ 2
2
Δ𝑥
Δ𝑦
Δ𝑧
1
−2
サブグリッド法
短波長のモードが励起される場所は限られている
必要な領域のみ空間グリッドを細かくする


サブグリッド法



メイングリッドに対して一部分だけΔ𝑥, Δ𝑡を小さく取る領域
(サブグリッド)を設定
メイングリッドでの電磁場の時間発展とは独立に、サブグリッド
内部での時間発展を解く
比較的簡易な実装ができる
サブグリッド法の実装

Yeeセル上にて、粗いグリッドから細かいグリッドへ値を
境界条件として与える
図8. 電磁場の時間配置
図7. メイングリッドとサブグリッドの境界面での
情報の受け渡し, Δ𝑥𝐿𝐺 Δ𝑥𝑀𝐺 = 1/3
2次元問題(MINI-RT)
ポロイダルコイルによる双極子磁場
 プラズマ密度は磁気面関数Ψの関数として与える

図11. Mini-RT 平衡磁場強度
図12. Mini-RT 電子密度分布
2次元問題(MINI-RT)

励振周波数1[GHz]のX波の垂直入射
図13. Ez分布、,t=2[ns]
図14. Ez入射、t=4.6[ns]
2次元問題(MINI-RT,サブグリッド)

Δ𝑥𝐿𝐺
Δ𝑥𝑀𝐺
200[mm]四方の矩形領域において
1
3
= とし、𝑬𝑥 成
分のプロット
図15. y=200[mm]における
磁場強度、電子密度、屈折率の
x方向分布
図16. サブグリッド内Ex分布
t=3.6[ns]
図17. t=4.6[ns]
まとめ

プラズマを媒質としてFDTD法に組み込むスキームの
妥当性を検証した(反磁性電流J)

サブグリッド法の適用性について検討した

EBWへのモード変換を扱うには熱いプラズマモデルの
定式化によるFDTD法への実装が必要