授業力をみがく 《 中学校理科編 》 授業で使える導入事例(4) PROFILE 畑中 忠雄 はたなか ただお(元山梨大学教育人間科学部講師) 1931年東京都生まれ。 東京教育大学生物学科卒。東京都公立中学校教諭を経て、筑波大学附属中学校・高等学校教諭。1986年 筑波大学附属中学校副校長。1989年学習指導要領作成協力者(副主査)。1992年から筑波大学・杏林大 学・日本獣医畜産大学・都留文科大学・山梨大学において小中学校教員を目ざす学生の実践的理科教材 研究の指導に当たる。2008年から2年間 国際協力事業団(JICA)のケニア理科教育向上プロジェクトに 参加、指導書を作成。著書「若い先生のための理科教育概論」 (東洋館) 「最新 科学・今日は何の日」 (東洋館) 1 1年「光・音・力への導入」 [例1]光の不思議−つかめないブタさん ・ 特殊な曲面の凹面鏡2枚を組み合わせた実験道具(マ ジックおもちゃ?) で、 ネットで6000円ほど。 ・ 光の学習に興味を持たせる導入的な演示実験として 利用する。 [実験] ① Aを黒板に取り付け、 5,6メートル離れた生徒の机に、 Aと向き合うようにBを置く。 ② 黒板のAのそばで空砲を打つ→ Aのタイマーが作動 → 音がBに届くとフラッシュが光る →この光を受け てAのタイマーが停止 → その数値(時間)でBまで の距離を割れば音速(秒速)が計算できる。 ・ まとめでの利用−作図などで像が見える理由を考えさ ※製品は数万円するが、音の導入的な演示実験としては大変効果的である。 せてもよい。 ブタの像(虚像)がつまめない 下側の凹面鏡にブタを置く [例2]音速を測ってみよう ・ 器具A 音を感じるとタイマーが動き出し、光を感じる とタイマーが止まる。 ・ 器具B 音を感じるとフラッシュが光る。 ・ 器具C 空砲を打つピストル Aを黒板に P 3 2 / R I S U K E I R I N No.11 Bを生徒側に [例1]牛乳びんで雲を作る 3 3年「天体への導入」 [例]人名のついた天文に関することばやことわざをあ ① 水で内側をぬらした牛乳びんにポンプをつなぐ。 げてみよう。 ② 圧力をかけるとゴム栓が飛んで、牛乳びんの中に霧 ハッブル望遠鏡 ニュートン式望遠鏡 いとかわ ハレー彗星 池谷・関彗星 ガリレイの“それでも ができる。 ・ ポンプを押すと牛乳瓶の中の空気が圧縮されて温度 が上がり、飽和水蒸気量も増す。 地球は動いている” コペルニクス的転回 ・ 解説は簡単にして、今後の学習の中で再び扱うように する。 温度もさがり、飽和水蒸気量を越えた水蒸気が水滴 解説例 (雲) となるのでびんの中が白く煙る。 ハッブル望遠鏡 1990年に打ち上げられた望遠鏡。星雲の研究 で知られるアメリカの天文学者の名が付けられている。 ニュートン式望遠鏡 2枚の凸レンズを組み合わせた望遠鏡で、像 は逆になる。 口径が大きくなるとレンズの重量が増すので、現在は反 射望遠鏡が主流。 ハレー彗星 フランスのハレーが回帰を予言した彗星。周期は 76.2年で、次に見られるのは2061年。 6 他の学校や その授業を参観しよう 前号の発展になりますが、他校で理科の授業を見せてい ただくのも視野を広げ授業の質を高めるのに効果的です。 先生も机に腰かけて (米・デンバー) さらに、小学校の先生は中学や高校を、中学の先生は小 学校や高校の授業というように枠を超えた参観も役立 ちます。また、機会があれば海外の学校の参観も経験し たいところです。観光で訪れた都市で時間があれば、直接 学校を訪問して参観を申し出ても、日本の学校よりずっと 寛容です。 高校物理の授業 (独・ミュンヘン) R I S U K E I R I N No.11 / P 3 3 中学校理科編 ・ ゴム栓が飛ぶと牛乳瓶の中の気圧が下がるとともに 授 業 力を育てる 授業力をみがく 2 2年「天気の変化への導入」
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