11 『上野フェスティバル オブ アーキテクチャー』∼近現代名建築の 建つ上野の杜で、アーキテクチャーツーリズムのイベントを開催∼ 現状 ・ 課題 実施区市町村 対象地域 台東区 上野 企画提案者:上野観光連盟 委託事業者:株式会社JTBコーポレートセールス 成果 上野は、多くの博物館・美術館など文化施設が多く、パンダで有名な上野動物園の存在もあって、年間を通じて、 ❶ 見学コース自体については概ね高評価を得た。途中休憩を入れるなど、参加者の疲労度を考慮すれば満足度 多くの観光客が訪れる都内でも屈指の観光地である。また、アメ横をはじめとする商業地が存在し、そこを目的 はさらに高めることができると考えられる。 に訪れる観光客も多い。 ❷ ガイドの説明内容は全コースで非常に満足度の高い結果となっており、専門家によるガイドの重要性を示す結果となった。 ただ、上記の集客装置が有るため、新たな観光の目玉を作らないままの状況の下、上野の文化施設の1つである ❸ 専門家ガイドによる事前講義の内容は、非常に高い満足度を示しているが、参加者のレベルに合わせた講義 国立西洋美術館本館がフランス政府の推薦で、ル・コルビュジェ設計の建物として世界遺産登録を目指す活動が 内容の工夫も必要であると考えられる。 数年前から始まった。 そうした活動の影響もあり、上野観光連盟を中心に、上野の文化施設の建築について、改めて見直す機運が高ま りつつあった。また、ここ数年で、各文化施設においても施設ごとに「建築ツアー」や「建物ツアー」が開催さ れるようになっていた。 課題 ❶ 質の高いガイドの確保・育成 ガイドの説明内容 専門家による事前講義やガイドの説明内容という点で、高い 実施内容 評価を受けており、ガイド次第で満足度は左右されると考え、 ツアー実施の際には質の高いガイドの確保が必要であると同時 ❶ 着地型旅行商品企画案作成のための事業可能性分析 に、こうした人材を多く確保するためには、並行してガイドの 上野公園の概況と対象となる建築物の整理、所要時間の検討、集合場所候補地の選定を行った。 育成も必要となる。 • 実際に活用した地域資源 ❷ コース時間と内容の精査 国立科学博物館・日本館、国立西洋美術館・本館、国立国会図書館 国際子ども図書館、東京国立博物館・本館、 休憩時間の入れ方も含め、参加者の疲労を考慮したコース時間 表慶館、東洋館、法隆寺宝物館、国立近現代建築資料館、東京都美術館、東京文化会館、旧岩崎邸庭園 や、参加者の求めるレベルや様々な視点・切り口による見学施 ❷ 着地型旅行商品の企画・開発 • 建築ツアーの実施 総合満足度 設の組み合わせなど、バリエーション豊富なツアー造成に向け た精査が必要である。 従来は施設ごとに実施していた「建築ツアー」や「建物ツアー」について、 横串をさし、 地域での「建築ツアー」 ❸ 有料でも満足してもらえる付加価値化と参加費の精査 のモニターツアーを 4 コース実施した。建築ツアーのガイドを経験している建築史の専門家を起用し、上野 少なくともツアー催行で必要となる経費は参加者負担とする必要が の山の建築群の歴史や建築の専門的な話など、見学に役立つ説明を受ける講義の時間を設定した。各建築物 ある。平均値としての妥当料金の回答は得ているが、今後さらに、 を見学鑑賞した際、専門家がガイドを行うだけでなく、館独自で既に実施している館では、そのボランティ 参加者に満足してもらえる付加価値の高いコース内容と参加費金額 アガイドや職員にガイドを行ってもらうなど、より深く鑑賞を行った。ツアー後、ガイドの専門家に質問で などの精査が必要となる。 きたり、感想を述べ合える場を提供した。 ❸ シンポジウムの実施 建築の専門家や観光を専門とする方々にご登壇いただく、来年度以降の「上野の山の建築ツアー」の本格実施 今後の展開 のキックオフイベントとして、上野の山の近現代建築や、その観光資源について討議するシンポジウムを企画、 ❶ 上野観光連盟が今回のモニターツアーで把握した課題を踏まえつつ、各施設との協力関係のもとで各施設を 開催した。 連携する建築ツアーを造成 ・ 実施する必要がある。 ❷ ガイディング方式は「スルーガイド方式」と「スポットガイド方式」の2種類が考えられるため、造成するツアー 内容やガイドに求められる専門性等を踏まえて選択するものとする。 ❸ 各施設で活動しているボランティアガイド間の交流や情報交換、勉強会なども行いつつ、上野の山全体で建 築ツアーを推進する人的資源の強化などもガイド総合力を向上させるために必要である。 実証を終えて ○ 建築ツアーは、建築物としての価値に加え、質の高いガイドの確保が決め手となる。 ○ 建築ツアーの手法は、他地域での応用が可能である。 24 25
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