テクノフロンティア2015で 注目される製品・分野

テクノフロンティア2015で
注目される製品・分野
日 本 能 率 協 会 主 催 の 展 示 会 「 TECHNO -
FRONTIER 2015」が2015年5月23日から25日ま
での3日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開催
される。同展はモーターやアクチュエーター、直動
案内機器から、電源、ノイズ対策、組み込みシステ
ムに至るまでの、メカトロニクス・エレクトロニク
スに関する最新製品・技術・システム・ソリューシ
ョンが一堂に会す。入場料は3000円(事前登録者、
招待券持参者、学生は無料)。開場時間は10時から
17時まで。ここでは同展で注目すべき製品や技術
%)、60ヘルツ(プラスマイナス5%)、または50
ヘルツ(プラスマイナス5%)および60ヘルツ(プ
ラスマイナス5%)共用-などの条件を満たすもの。
船用モーター、防爆モーター、キャンドモーターな
どの機種は対象外となる。
トップランナーモーターは従来型のモーターで駆
動時に熱などのエネルギーとなって消費されてしま
っていた損失分を削減する設計や、高機能材料の採
用などで、高効率化を図っている。国際電気標準会
議で規定された「IE3(プレミアム効率)」レベル
をピックアップ。解説していく。
相当へと高効率化されている。
●運用開始となった
トップランナーモータ
業界団体の日本電機工業会(JEMA)は既存の産
業用モーターをトップランナーモーターに置き換え
産業用モーター(三相誘導電動機)の用途は幅広
数50ヘルツで定格出力2.2キロワット、4極の全閉
た場合の試算を行っている。電圧200ボルト、周波
い。ポンプやコンプレッサー、減速機、送風機から、
産業用ロボット、工作機械に至るまで、多様な分野
での動力源として利用されている。国内で現在稼動
している台数は1億台を超えるという。
産業用モーターが消費する電力量は産業部門の消
費電力量の75%に達すると推定されており、産業
用モーターの高効率製品開発と普及は省エネ化を目
指す産業界において、急務だった。そうした状況を
背景に今年4月1日から運用が始まったのが、モー
ターのトップランナー制度である。
トップランナー制度は省エネ型製品の市場への普
外扇型モーターを負荷率100%で使用した場合、年
間5000時間の稼動で、「IE1(標準効率)」レベル
のモーターと比べ、950キロワット、約7%の省エ
ネ効果がでるという。
既存のモーターからトップランナーモーターへの
置き換えは重要な取り組みであり、稼動時間が長く
なれば、省エネ効果が向上し、投資回収のスピード
も早くなる。メーカー各社では既存モーターから置き
換えるにあたって、取り付けや使用条件に変更がな
いモデルを開発し、市場投入している。しかし、製
品の中には一部、既存のモーターから単純に置き換
及を促進するため、製造事業者に
対して行われる規制。エネルギー
を多く使用する機器の中で、対象
機器ごとに基準値を設定。国は目
標年度に達成状況を確認する。現
在、制度の対象となっているのは
29機器。エアコン、テレビ、電
気便座、電子レンジといった家電
製品、乗用や貨物自動車などに加
え、産業機器では変圧器と産業用
モーターが対象となっている。
トップランナーモーターの特定
機種として対象となっているのは
(1)単一速度(2)定格出力0.75
キロワット以上、375キロワット
以下(3)極数は2極、4極、6極(4)
定格電圧1000ボルト以下(5)周
波数50ヘルツ(プラスマイナス5
各社から出そろったトップランナーモーター(昨年のテクノフロンティア)
えることができないことがあるため、確認が必要だ。
けの適合で張り付けることはできない。
こうした中、JEMAのウェブサイトではトップラ
14年4月18日、EUは同指令を改訂し、「2014/
ンナーモーター製品の中にはモーターサイズが大き
30/EU」を発行した。EUが旧指令を改訂した目
くなる場合があること、定格回転速度が高くなる傾
的は08年にEUが導入したNLF(New Legislative
向にあること、始動電流やモーター発生トルクが大
Framework=新しい法的枠組み)に整合させるた
きくなる傾向があることなどの特徴を紹介。置き換
めだ。NLFはEUにおける製品の安全に関する各種
えを検討しているユーザーに対して、注意喚起して
指令の効果を高めたり、手続きを簡素化したりする
いる。
ために作られた規則である。
トップランナー規制スタート後となる今回の「モ
現在の「2004/108/EC」から「2014/30/
ータ技術展」ではメーカー各社のトップランナー規
EU」への変更ポイントは製造業者や代理人のほか
制対応モーターの展示だけでなく、高効率を達成す
に輸入業者や流通業者も責任を持つようになったこ
るための技術や海外の規制動向などを紹介する「モ
とや、トレーサビリティーのための情報として、製
ータ技術シンポジウム」
のセッションにも注目したい。
品に製造業者や輸入業者の名称や登録商標、トレー
●ノイズ対策技術-改訂版EMC指令
完全移行まであと一年
ドマーク、連絡先住所といったものの表示が必要に
民生機器、産業機器は信号処理速度の高速化、搭
令「2014/30/EU」への適合が必要となる。新
載デバイスの高集積化、高密度実装化などが進んで
いる。また、自動車は安全性や快適性の向上を目指
して電子制御化されてきており、加えて環境負荷低
減を図るために、電気モーターと内燃機関を併用す
るハイブリッド自動車(HEV)や、電気モーター
のみで駆動する電気自動車(EV)の普及が拡大し
ている。
電子・電気機器において課題になるのが、EMC
(Electromagnetic Compatibility)対策。EMCは
「電磁両立性」や「電磁的な適合性」と訳される。
EMC対策は電気・電子機器から放出される電気的
なったことなど。「2004/108/EC」は16年4月
19日に廃止となり、同年4月20日からはこの新指
指令施行まであと1年だ。
ノイズ対策でまず最初に行わなければならないの
はノイズがどこから、どのように、どれだけ発生し
ているのかを知ることだ。そのためにはノイズ計測
や測定ソリューションがカギとなる。
EMC・ノイズ対策技術展ではメーカー各社のブ
ースではノイズを抑制するためのノイズフィルター
や電磁波シールド部材の新製品・新技術に注目した
い。また解決策を探るために必要なノイズ関連の測
定器、計測器などの展示も見逃せないだろう。
からの電気的ノイズによって電気・電子機器がトラ
●電源トランスやワイヤレス充電など
省エネ、安全などを支える
ブルを起こさない性能(イミュニティー=EMS)
電源トランスは機械や設備、装置などの中で変圧
ノイズを抑える性能(エミッション=EMI)、周囲
を持たせる。言い換えれば、「安全に使うため、ノ
イズを出さない、ノイズによる影響を受けない対策
を行う」ということだ。
欧州連合(EU)ではこのEMCを対策するために、
EUで発売するほとんどの電子・電気機器類を対象
として、EMI、EMSの両方を規制対象とした「電
磁両立性に関する加盟国の法律の整合化のための欧
州議会、並びに欧州閣僚理事会指令(EMC指令)」
を適用している。最初のEMC指令は1989年に発行
さ れ た 「89 / 336 / EEC」。 現 在 の EMC 指 令 は
2007年7月から適用開始となった「2004/108/
EC」である。
電子・電気機器がEMC指令に適合している製品
であることを示すため、適合マークとして、「CEマ
ーク」を張り付ける。これは外部機関から取得する
ものではなく、製造者が自らの責任で自己宣言し、
張り付けるものだ。ただし、これは機器が対象とな
っているすべての指令に対して適合している場合に
張り付けることができるものであり、EMC指令だ
などの重要な役割を果たしている。電源システム展
では電子・電気機器における電気エネルギーの入口
となる電源トランスの省エネ技術や安全技術に注目
してほしい。
エレクトロニクス回路に欠かせない製品となって
いる電源トランスにはいくつかの種類がある。代表
的なものとして、単相単巻、単相複巻、三相単巻、
三相複巻のほか、スコット、逆Vといった方式のもの
が挙げられる。いずれのトランスも電子・電気機器
の電源部分で入力されてきた電圧をおのおのの機能
が必要な電圧に変換するという役割を果たしている。
現在、トランスのコアに利用されているのは鉄に
少量のシリコンを加えて作られた合金であるケイ素
鋼板、ニッケルと鉄の合金であるパーマロイ、そし
て酸化鉄を主原料としたセラミックスのフェライ
ト。メーカーではより一層の省エネ化を目指して、
コアにおける低損失化やコアの高飽和磁束密度化を
実現するため、材料の改質を行っている。また、コ
ア構造では巻き線作業が容易で、銅線にもストレス
がかからない円形などを採用している。
あれば、異なるメーカーの端末間でも充電すること
また、電源トランスの使用にあたっては安全への
が可能。Qi以外ではパワーマッターズアライアン
対応も重要視されている。その一つが電気・電子機
ス(PMA)やアライアンスフォーワイヤレスパワ
器で誤動作発生などの問題となるEMCノイズの対
ー(A4WP)が策定したものなどが存在している。
策。ノイズカット材料をトランスケースに装着した
15年1月、PMAとA4WPは組織の統合を発表した。
り、鉄心の形状を工夫することによってトランスの
15年の半ばには新組織が立ち上がるという。ワイ
漏洩磁束を極めて少なくしたりするなど、トランス
ヤレス給電の普及拡大に向け、一歩進んだといえる。
から発生するノイズがほかの機器に影響を与えない
今回のテクノフロンティア特別講演会ではWPCに
ような対策を行っている。
よる標準化動向の解説や自動車技術会による自動車
電源部には短絡、過負荷による温度上昇や、瞬間
向けのワイヤレス給電技術標準化動向解説も行われ
的に定常状態を超えて発生する「サージ電圧」によ
る。
関係者には聞き逃せないセッションとなるだろう。
る絶縁破壊などの課題が存在するため、この対策も
行われている。
電源トランスは電気・電子機器の電源供給部で利
用される電子部品であり、仮に事故が発生した場合、
その影響が大きい。安全性を確保するために、電源
トランスの1次側、あるいは2次側に保護回路を設
け、電流ヒューズやサーキットブレーカーを使用す
るなどで対策を講じている。
電源システム展ではトランスのほか、無停電電源
装置(UPS)、スイッチング電源のほか、IGBTや
MOSFETといったパワー半導体、コンデンサーや
キャパシターなどの新製品、新技術が紹介される。
電源、電力関連ではワイヤレス給電に関する最新
技術や製品が紹介される「ワイヤレス給電技術ゾー
ン」にも注目したい。電源ケーブルを使わずに、機
器に非接触で電力を供給する非接触電力伝送(ワイ
ヤレス給電)システムはスマートフォンやタブレッ
ト端末(携帯型情報端末)といったモバイル機器や
家電製品から、EVや住宅機器向けまで普及拡大が
見 込 ま れ る 技 術。 主 要 な 給 電 方 式 に は 電 磁 誘 導
(Magnetic Induction=MI)、磁気共鳴(Magnetic
Resonance=MR)という二つが挙げられる。
「Qi(チー)」は現在、コンソーシアム加盟企業
が最も多いワイヤレスパワーコンソーシアム
(WPC)が策定した5ワット以下の低電力向け国際
標準規格。WPCでは中電力向けの規格化も進めて
いる。給電方式はMIで、Qiに対応している製品で
ワイヤレス給電システムを搭載した電動アシスト付き自転車
(昨年のテクノフロンティア)
太陽光発電など再生可能エネルギーの制御でカギとなるパワーコンディ
ショナー(昨年のテクノフロンティア)