アナリストレポート:サカイオーベックス

2016 年 2 月 29 日
サカイオーベックス(3408)
担当
レーティング:
OUTPERFORM(2015/9/9)→
近藤 浩之
OUTPERFORM
安定した受注環境が続くと予想。株価に割安感。
売上高
(百万円)
連 12/3
21,679
連 13/3
20,665
連 14/3
22,034
連 15/3
24,845
連 16/3(予)
25,500
第 3 四半期累計期間
連 14/4-12
18,685
連 15/4-12
19,473
株価(2016/2/29)
発行済み株式数(15/12 末)
自己株式数(15/12 末)
時価総額
企業価値(EV)
ROE(15/3 実績)
予想配当利回り
予想 PER
BPS(15/3 実績)
PBR
CFPS(15/3 実績)
PCFR
EV/EBITDA(15/3 実績)
伸び率
(%)
12.3
-4.7
6.6
12.8
2.6
営業利益
(百万円)
1,381
1,331
1,393
1,463
1,550
伸び率
(%)
133.7
-3.6
4.7
5.0
5.9
経常利益
(百万円)
1,556
1,641
1,885
2,125
2,200
伸び率
(%)
124.6
5.4
14.9
12.7
3.5
純利益
(百万円)
1,395
1,006
1,333
1,346
1,500
伸び率
(%)
143.3
-27.8
32.4
1.0
11.4
EPS
(円)
21.62
15.60
20.66
20.88
23.38
1 株配
(円)
2.00
2.00
2.00
2.00
3.50
13.9
4.2
1,117
1,173
167
68,362
4,740
11,417
12,203
10.0
2.1
7.1
225.82
0.7
26.8
6.2
6.7
1.5
5.0
1,635
2,044
5.4
25.1
1,048
1,419
-7.4
35.4
16.27
22.13
-
円
千株
千株
百万円
百万円
%
%
倍
円
倍
円
倍
倍
株価チャート(週足)
出所:サカイオーベックス、ブルームバーグ、今村証券
染色加工大手(資料1、出所:同社決算短信)。主力はユニフォ
ーム(製造業・建設業・飲食店業の作業服等)やスポーツウェア、
婦人服などの染色加工事業で、同事業の4割強が東レ(3402 東証1
部)向けである。次いで、生地の仕入から衣料品の販売までを一貫
して行う繊維販売事業が占め、その他事業には織布、水産資材、複
合部材、電子機器、縫製、建設不動産の事業がある。
(資料1)
売上構成比(2015 年 3 月期)
2016年3月期第3四半期は増収増益となり、通期配当予想を前回予
想から1.5円増やした。悲観的に①営業増益率が第2四半期累計期間
(4-9月)の+28.8%から鈍化し、②主力の染色加工事業が減収減益
になっている―との見方もできなくはないが、前第3四半期会計期間
(2014年10-12月)に染色加工事業でユニフォーム用途が大きく伸びた反動を踏まえれば堅調な
状況が続いているといえよう(資料2・3、出所:同社決算短信)
。営業増益の主因は「その他
事業」であり、電子機器関連で電力工事関連、情報システム関連が堅調だったことが寄与した。
染色加工、繊維販売の両事業はともに婦人衣料用途が堅調だった。円安を背景に北米への輸出
向けが伸びた。対して、ユニフォーム用途は在庫調整の影響を受けた。利益面では、染料や薬品
が最大生産国の中国での環境規制の強化に伴い生産量が減ったことで値上がりし、今も高止まり
していることや、円安で輸入仕入価格が高騰していることがマイナス材料となった。一方で、原
油価格の急落に連れた燃料費の下落が補った。
経常利益での増益率が大きいのは、持分法による投資利益が増加したためである。中国にある
持分法適用関連会社(東麗酒伊織染(南通)有限公司)はファストファッションブランドへの供
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給が好調、中国向けも伸びている。今期より持分法適用関連会社の決算日を12月末から3月末に
変更していることを考慮しても大幅な増加である(資料4、出所:同社決算短信)。
これを受けて、経常利益と純利益の通期会社計画に対する進捗率が高くなっている(売上高
76.4%、営業利益75.7%、経常利益92.9%、純利益94.6%)。今期の営業利益は会社計画並み(15.5
億円)ながら、経常利益は26億円(会社計画比+18.2%、前期比+22.4%)程に上振れそうだ。
(資料2) 業績の推移(四半期)
(資料3) 業績の推移(通期)
サカイオーベックス(3408)
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(資料4) 持分法による投資利益の推移
(注) ( )内は持分法適用関連会社の決算期間
繊維産業は原糸メーカーの中国や東南アジアへの生産移管が進んだ。染色の工程も海外へと移
り、国内での染色整理加工数量は2000年代に大きく減った。減少率は2010年代に入り徐々に縮小、
このところはほぼ横ばいでの推移になっている(資料5、出所:一般社団法人日本染色協会)
。
同社にとっては、東レが国内生産を維持したことや、高付加価値製品への対応が下支えとなっ
てきた。ただ今後、染色の工程が国内に回帰するとは考えられず、染色加工事業で売上を大きく
伸ばすのは難しい。そこで注力するのが「繊維販売」と「炭素繊維」だ。M&A(企業の合併・
買収)も視野に入れる。
繊維販売事業は現在、ユニフォーム、スポーツウェア、医療介護関連など向け生地の提案・販
売、衣料品のOEM(相手先ブランドによる生産)が柱となっている。今後はODM(相手先ブ
ランドによる設計・生産)を強化する。染色加工事業と連携して素材開発に取り組んだり、2014
年1月に買収した子会社イタバシニットが持つ縫製技術を活かしたりして婦人服やスポーツウェ
アを企画し、アパレルメーカー、百貨店に売り込んでいく。
炭素繊維事業は福井県有特許技術をもとに、炭素繊維束を拡げてテープ状にした開繊糸の製造
方法を確立した。釣具、ラケット、F-1マシンのボディ等にも採用されている。展示会への出展
などで拡販を進める。
(資料5) 国内の染色整理加工実績(長・短繊維織物・ニット生地合計)
これらの事業は徐々に成果が出てきている模様だ。来期もその傾向は続くと見込まれるものの、
大幅な収益拡大は見込みづらい。既存事業では、来期も染色加工事業は婦人衣料用途向けを中心
に安定した受注が見込めそうだ。燃料費は一段と下がり、染料価格は今期ほどのマイナス材料に
はなりそうにない。円高の影響としては、輸入仕入価格が下落に転じる半面、持分法適用関連会
社(東麗酒伊織染(南通)有限公司)の円換算後の利益が減少する。来期業績は小幅な増収増益
と想定したい。
株価は昨年末にかけて上昇し、12月18日には243円と2006年5月以来の高値を付けた。その後は
株式市場の混乱も響き、増配の発表(今年2月10日)も買い材料視されず、現在は昨年12月の高
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値から3割強下落した水準にある。この株価水準はバリュエーションの観点からは魅力がある。
上述した来期利益予想に基づくと、EPSは29円程度が見込まれ、予想PERは6倍弱となり、過去の
推移や同業他社との比較からみて割安感がある(資料6、各社決算短信)
。投資判断はOUTP
ERFORMを継続する。
(資料6) 染色加工メーカーの業績・投資指標の比較
3408
東1部
3569
東1部
3580
東1部
3571
東2部
3577
東1部
3578
東2部
(注)
営業利益
株価
売上高
経常利益
純利益
伸び率
伸び率 利益率
伸び率 利益率
伸び率
(百万円)
(百万円)
(16/2/29) (百万円)
(百万円)
(%)
(%) (%)
(%) (%)
(%)
22,034
6.6
1,393
4.7
6.3
1,885 14.9
8.6
1,333 32.4
167 24,845 12.8
サカイオーベックス
1,463
5.0
5.9
2,125 12.7
8.6
1,346
1.0
25,500
2.6
1,550
5.9
6.1
2,200
3.5
8.6
1,500 11.4
97,982
8.4
5,849 51.9
6.0
6,409 43.7
6.5
4,204 55.0
1,095 103,766
セーレン
5.9
6,566 12.3
6.3
7,329 14.4
7.1
4,898 16.5
107,000
3.1
8,200 24.9
7.7
8,600 17.3
8.0
5,800 18.4
36,753
2.4
362 -71.8
1.0
993 -45.1
2.7
772 -35.6
585 36,662 -0.2
小松精練
412 13.7
1.1
957 -3.7
2.6
632 -18.2
38,000
3.6
1,000 142.4
2.6
1,400 46.3
3.7
1,000 58.2
10,490 -1.3
433 33.6
4.1
1,187 196.7 11.3
828
7.3
ソトー
993 11,408
8.8
434
0.3
3.8
656 -44.7
5.8
501 -39.4
12,200
6.9
500 15.0
4.1
660
0.5
5.4
550
9.6
15,419
6.9
638 62.0
4.1
502 17.2
3.3
351 153.7
東海染工
120 16,339
6.0
759 19.0
4.6
748 48.9
4.6
461 31.3
16,400
0.4
770
1.3
4.7
750
0.2
4.6
460 -0.3
4,374 -4.3
-260
- -5.9
-160
- -3.7
-857
倉庫精練
79
3,344 -23.6
-685
- -20.5
-859
- -25.7
1,066
3,410
2.0
-220
- -6.5
-400
- -11.7
-420
上段:2014年3月期実績、中段:2015年3月期実績、下段:2016年3月期会社計画。東海染工、倉庫精練の2016年3月期配当金は未定。
予想
EPS
利益率
PER
(円)
(%)
(倍)
6.0 20.66
5.4 20.88
5.9 23.38
7.1
4.3 70.53
4.7 82.00
5.4 97.08
11.3
2.1 18.05
1.7 14.77
2.6 23.36
25.0
7.9 65.10
4.4 39.44
4.5 43.22
23.0
2.3 10.27
2.8 13.54
2.8 13.50
8.9
-19.6 -120.38
31.9 149.70
-12.3 -58.98
-
BPS
(円)
190.39
225.82
964.92
1,103.80
727.92
761.83
1,254.42
1,267.27
150.30
174.02
156.97
311.88
-
PBR
(倍)
0.7
1.0
0.8
0.8
0.7
0.3
予想配当
配当金
利回り
(円)
(%)
2.00
2.00
3.50
2.1
15.00
20.00
22.00
2.0
12.00
12.00
12.00
2.1
40.00
40.00
40.00
4.0
3.00
4.00
0.00
5.00
-
---------------------------------------------------------------------------------------------------------アナリストによる証明
本資料に示された見解は、言及されている発行会社とその発行会社等の有価証券について、各アナリストの個人的見解
を正確に反映しており、さらに、アナリストは本資料に特定の推奨または見解を掲載したことに対して、いかなる報酬
も受け取っておらず、今後も受け取らないことを認めます。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------レーティングの定義
O U T P E R F O R M:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンを 10%超上回ると予想される。
N E U T R A L:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンの+10%と-10%の間に入ると予想される。
U N D E R P E R F O R M:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンを 10%超下回ると予想される。
トータルリターン:株価変動率+配当利回り
目標株価は 12 ヵ月間の投資を想定しており、将来発行されるレポートで修正されることもあります。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------本資料に記載された意見及び予想は、記載された日付における今村証券の判断であり、これらは予告なく変更される場
合があります。今村証券は本資料の記載された日付以降に内容の変更・修正を行う義務を負いません。本資料はお客様
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客様に対して投資の助言を提供するものでもありません。また、本資料に記載されている情報もしくは分析がお客様に
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