平成26年度 第2回 岡山県バスケットボール協会 医事科学委員会講習会 足関節捻挫の診療と治療法 医事科学委員会 平川 宏之 はじめに 今までの講習会のアンケートで 医学的な専門用語を使うことで難しすぎるという ご指摘をいただきました。 今回はできる限りわかりやすくお話ししようと 思いますのでしっかり勉強されている方には 簡単すぎる内容かもしれません。ご了承のほど よろしくお願い申し上げます。 捻挫とは?? くじき,亜脱臼ともいう。 関節に強い外力が加わり, 関節包や関節靭帯の断裂と,関節端の挫傷が 起きているのに,関節間の相対関係は 正常に保たれている状態をいう。 足関節に最も多い。過度の運動,または その機能外の運動が強制的に関節に与えられた 場合に起る。 捻挫とは 関節に正常可動範囲以上の外力が加えられる。 →亜脱臼位 関節包や靭帯(じんたい)が引き伸ばされて損傷。 その後、関節の位置関係は正常に戻る。 靱帯と関節包 靱帯 骨と骨を直接結び付けている結合組織 骨がばらばらにならないようにつなぐ すじ(筋) すじを傷めた → 筋腱を傷めた 関節包 関節を包む結合組織 靱帯と関節包 関節包と靱帯は一体であったり、結合している 捻挫の受傷原因 バスケットボール 15% ジャンプ着地 10% ツイスト運動 方向転換 衝突 45% その他 転倒 30% つまずき 急激なストップ動作 足関節捻挫の特徴 外側を傷めることが圧倒的に多く内側は少ない 外くるぶしと比べ内くるぶしが短い 背屈位に比べ底屈位で関節の遊びが少ない 内がえしのほうが外がえしを比べると容易 足関節捻挫の部位(外側靱帯損傷) 損傷部位の触診 ①前距腓靱帯 外くるぶしの前 ②踵腓靱帯 外くるぶしの下 ③前脛腓靱帯 外くるぶしの指2本分 上の前 捻挫の程度 Ⅰ度 靱帯がのびる (損傷) Ⅱ度 靱帯が部分的に切れる (不全断裂) Ⅲ度 靱帯が完全に切れる (完全断裂) その他の分類 レントゲンストレス撮影 受傷した方向にひねりを加えて、関節にどれだけゆるみが生じるかをみる その他の検査 超音波検査 MRI検査 捻挫の治療 Ⅰ度とⅡ度の捻挫ではRICE処置を行う Ⅲ度の捻挫ではRICE処置を行い、 2~3週間の固定をすることがある 稀に手術を行うときもある (日本整形外科スポーツ医学会より) 捻挫の初期治療 (受傷~3日間) RICE処置 被害を最小限にくいとめる 出血 腫脹 RICE処置は早期復帰の重要なポイント 圧迫のしすぎに注意→逆に組織を傷める (コンパートメント) 微弱電流、パルス療法 ギプス固定 利点 強固な固定ができる 欠点 アイシングができない 関節を動かすことができない 私見 骨折では必要だが... 捻挫の亜急性期治療(3日~7日間) 交代浴、アイシングに加え 下腿三頭筋の低周波刺激による筋収縮 自宅では、テーピングパッド (バンテージ)による圧迫、 断続的なアイシングを行う 弾力包帯 捻挫の回復期治療 (7日~) 捻挫をしてかたくなった関節を柔らかくし 動きをよくする。 足首の周囲の筋肉を鍛え、衰えた筋力を 取り戻す バランスを取る練習をする 実践練習を行い 復帰する いつ競技復帰可能なの?? 重症度によって異なる。 数日から2か月までさまざま 重要な点は痛みがなくなったら治ったのではない 組織が修復し機能が改善して治癒 (その間、サポーター テーピングが必要) 超音波エコーなどを用いて評価 治療に難渋する症例 前脛腓靱帯損傷を合併 治療に難渋する症例 足全体の腫脹がなかなかおさまらない 要注意サイン 拍動痛 足関節全体の腫脹 圧迫が強すぎたためにおこる組織の虚血状態 痛みがつづくけれど... 長期の外向き歩行による影響 筋力不足による影響 関節が緩いための影響 つま先立ちが正確にできるか 片足立ちで扁平足になっていないか 後脛骨筋腱の走行 扁平足の変形要素と疼痛部位 いつまでも全体が腫れている・・・ 水腫が貯留している可能性あり 軟骨損傷を示唆 MRIなどで検査が必要 捻挫による軟骨損傷 症例 15歳男性 平成20年8月、ディフェンス中、 方向転換をした際 内がえし強制し受傷した 靱帯部に圧痛なし 外くるぶしに圧痛を認める 成長軟骨の損傷 (骨端線) 成長期には成長軟骨がある 靱帯より軟骨の方が弱いため 軟骨側が損傷する (骨端線損傷は小学高学年から 中学生によくみられる) Take home message 捻挫は亜脱臼 初期治療が重要である 1か月以上痛みが続く場合は原因を究明
© Copyright 2024 ExpyDoc