関節の診方

関節の診方
リウマチ膠原病センター
水木
伸一
本日の内容
•関節炎の鑑別診断
•関節の構造と機能
－解剖とエコー所見の対比
•関節の診方
－理学所見および病的エコー所見
関節炎の鑑別診断
単関節炎のアプローチ
関節穿刺
非炎症性関節炎
（関節液WBC<5000）
変形性関節症
炎症性関節炎
（関節液WBC>5000）
グラム染色
培養
-
結晶検査
CBC, ESR, RF, ANA
反応性関節炎
全身性リウマチ性疾患
+
+
感染
結晶誘発性関節炎
痛風
偽痛風
症例：71歳、男性
【主訴】：左膝痛・腫脹
【職業】：無職
【既往歴】：変形性膝関節症
【現病歴】：
変形性膝関節症に対して関節内注射を受けていた。
X-7日より急に左膝痛が出現。
X日症状が持続するため紹介にて当科を初診した。
71歳、男性
TEIC
VCM
MINO
MINO 内服
持続洗浄
滑膜切除術
発熱
25,000
25
20,000
20
15,000
15
WBC
10,000
10
CRP
5,000
5
0
0
培養
陽性
陰性
化膿性関節炎に対する治療
 ドレナージ
 抗菌剤治療
抗菌剤の選択
他の病原菌のリスクなし
第１セフェム
MRSAのリスク
（MRSA既往、施設入所者、下腿潰瘍、ｶﾃｰﾃﾙ留置者など）
バンコマイシン
グラム陰性菌のリスク
（高齢、衰弱、尿路感染合併、腹部手術後など）
広域
淋菌感染疑い
（健常、性的に活発）
セフトリアキソン
症例：60歳、男性
【主訴】：左膝痛・腫脹
【職業】：無職
【既往歴】：慢性腎不全、十二指腸潰瘍
【現病歴】：
X-4年より多関節痛が出現し、X-2年関節リウマチと診断され、ミ
ゾリビン、プレドニゾロンで治療を受け寛解状態であった。
X-2日急に左膝痛が出現し、X-1日発熱も出現し、X日当科を受
診した。
体温：38.1℃
血圧：121/74 mmHg
脈拍：97/分・整
【頭部】眼瞼浮腫ー。眼瞼結膜
貧血なし。眼球結膜黄染なし。
【口腔】咽頭発赤なし。白苔なし。
【頚部】リンパ節腫大なし。
【肺】呼吸音清。ラ音なし。
【心】心雑音なし。
【腹部】平坦軟。圧痛なし。腸蠕
動音亢進。
【四肢】チアノーゼなし。浮腫な
し。
：圧痛
：腫脹
WBC
Stab
Seg
Lym
Eosino
Baso
Mono
RBC
Hb
Ht
MCV
MCH
MCHC
Plt
尿
糖
タンパク
潜血
亜硝酸塩
白血球
16,080
87.3
4.4
0.2
0.1
8.0
413
11.6
35.7
86.4
28.1
32.5
25.3
±
-
/μl
%
%
%
%
%
%
X 104/μl
g/dl
%
X 104/μl
TP
6.6 g/dl
Alb
3.6 g/dl
T. Bil
0.7 mg/dl
AST
15 IU/l
ALT
9 IU/l
LDH
190 IU/l
AlP
232 IU/l
γ-GTP 13 IU/l
BUN
Cr
UA
Na
K
Cl
Ca
CK
HbA1c
74.6
3.54
136
4.3
100
80
73
mg/dl
mg/dl
mg/dl
mEq/l
mEq/l
mEq/l
mEq/l
U/l
%
CRP
C3c
C4
CH50
16.80
96.0
10.5
36.9
mg/dl
mg/dll
mg/dl
U/ml
ﾌﾟﾛｶﾙｼﾄﾆﾝ
RF
抗CCP抗体
抗核抗体
3.53 Ng/ml
11 IU/ml
17.9 IU/ml
-
細菌学的検査 (1)：
静脈血液2ｾｯﾄ/2ｾｯﾄ：
培養：陰性
関節液：
塗抹：白血球１＋
培養：陰性
ﾋﾟﾛﾘﾝ酸Ca結晶：＋
尿酸結晶：－
全身単純CT(1)：
炎症病巣なし
経胸壁心エコー(2)：
疣贅なし
大腿骨顆部
偽痛風と関連する要因
72.2 ± 12.8
3496 (45.0)
Pseudogout
(n = 795)
72.5 ± 12.8
358 (45.0)
–
–
<18.5
18.5–24.9
25.0–29.9
≥30.0
112 (1.4)
2366 (30.5)
2345 (30.2)
1165 (15)
16 (2.0)
246 (30.9)
262 (33.0)
150 (18.9)
1.40 (0.80, 2.44)
1.00
1.01 (0.84, 1.22)
1.02 (0.81, 1.29)
None
Past
Current
1409 (18.1)
144 (1.9)
4555 (58.6)
148 (18.6)
25 (3.1)
515 (64.8)
1.00
1.50 (0.92, 2.43)
1.15 (0.94, 1.41)
OA 1844 (23.7)
RA 141 (1.8)
Hyperparathyroidism 17 (0.2)
Diabetes 678 (8.7)
Hypertension 2802 (36.1)
Heart failure 348 (4.5)
Chronic kidney disease 532 (6.9)
利尿剤服用
Loop diuretics
1244 (16.0)
Thiazides
2268 (29.2)
370 (46.5)
24 (3.0)
10 (1.3)
94 (11.8)
335 (42.1)
56 (7.0)
78 (9.8)
2.91 (2.48, 3.43)
1.34 (0.85, 2.11)
4.87 (2.10, 11.3)
1.16 (0.91, 1.49)
1.12 (0.92, 1.36)
1.20 (0.86, 1.67)
1.29 (0.97, 1.73)
年齢
性別：男性
2
BMI, kg/m
Control (n = 7770)
Multivariate OR (95% CI)
アルコール摂取
合併症
182 (22.9)
263 (33.1)
1.35 (1.09, 1.67)
1.02 (0.83, 1.25)
(Rho YH. Rheumatology. 2012)
多関節痛のアプローチ
多関節痛
滑膜炎
NO
YES
全身性リウマチ性疾患
ウイルス感染に伴う関節炎
感染後関節炎（リウマチ熱、反応性関節炎など）
その他（サルコイドーシス、腫瘍随伴症候群など）
非炎症性関節痛
線維筋痛症
変形性関節症
甲状腺機能低下症
神経因性疼痛
代謝性骨疾患
うつ
RA鑑別疾患リスト（日本リウマチ学会）
鑑別難易度
高
１．ウイルス感染に伴う関節炎（パルボウイルス、風疹ウイルスなど）
２．全身性結合組織病（シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、
皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症）
３．リウマチ性多発筋痛症
４．乾癬性関節炎
中
１．変形性関節症
２．関節周囲の疾患（腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など）
３．結晶誘発性関節炎（痛風、偽痛風など）
４．血清反応陰性脊椎関節炎（反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎
症性腸疾患関連関節炎）
５．全身性結合組織病（ベーチェット病、血管炎症候群、成人スチル病、結節性紅斑）
６．その他のリウマチ性疾患（回帰性リウマチ、サルコイドーシス、RS３PEなど）
７．その他の疾患（更年期障害、線維筋痛症）
低
１．感染に伴う関節炎（細菌性関節炎、結核性関節炎など）
２．全身性結合組織病（リウマチ熱、再発性多発軟骨炎など）
３．悪性腫瘍（腫瘍随伴症候群）
４．その他の疾患（アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群など）
関節痛を来すウイルス感染症
よくみられるウイルス
時にみられるウイルス
B型、Ｃ型肝炎ウイルス
EBウイルス
HIV
ムンプスウイルス
A型肝炎ウイルス
コクサッキーウイルス
エコーウイルス
ヘルペスウイルス
サイトメガロウイルス
風疹ウイルス
パルボウイルス
デングウイルス
関節の構造と機能
胸鎖顎
肩鎖
肩
椎間関節
肘
股
手関節
膝
MCP
PIP
DIP
足関節
PIP MTP
中足関節
関節って、どこ？
仙腸関節
関節包、靭帯
滑膜
関節腔
（関節液、滑液）
軟骨
骨
関節の構造
関節リウマチの膝→
外傷の膝
↓
膝蓋骨の関節軟骨
大腿骨の関節軟骨
大腿骨の関節軟骨
関節腔
関節腔
関節腔
軟骨
滑膜
関節包
骨
皮膚
滑膜細胞
 マクロファージ
 線維芽細胞
滑膜下組織
骨
滑膜
関節腔
軟骨
滑膜下組織
関節腔
関節包
滑膜
関節包
骨
皮膚
骨
皮膚
骨
滑膜
関節腔
軟骨
滑膜下組織
関節腔
関節包
滑膜
関節包
骨
皮膚
骨
皮膚
関節腔
滑膜の炎症
軟骨
滑膜
関節包
骨
皮膚
滑膜細胞の増生、多層化
 マクロファージ
 線維芽細胞
滑膜下組織への
 炎症細胞浸潤
 血管新生
RA滑膜
RA滑膜
関節の診方
関節が痛いーどこが痛い？
筋炎
大腿四頭筋
関節包の拡がり
大腿骨
膝蓋骨
大腿骨
関節炎
膝蓋骨
半月板
膝蓋腱
外側側副靭帯
膝蓋腱
腱炎
滑液包炎
滑液包
骨髄炎
付着部炎
付着部
腓骨
腓骨
脛骨
脛骨
蜂窩織炎
膝の診方
膝蓋跳動
膝蓋骨
大腿四頭筋
1cm
大腿骨
膝蓋骨
大腿四頭筋
大腿骨
手指関節の診方
MCP関節
基節骨
中手骨
MCP関節
手関節の診方
伸筋腱
橈骨
手根骨
伸筋腱
橈骨
手根骨
肘の診方
上腕筋～
上腕二頭筋
上腕骨小頭～滑車
橈骨～尺骨
関節水腫
橈骨頭
橈骨頭
上腕骨小頭
上腕骨小頭
肩関節:Shoulder joint
肩峰
肩鎖関節
烏口突起
鎖骨
肩峰下滑液包
三角筋下滑液包
腱板
上腕二頭筋長頭腱
腱鞘
肩関節
（狭義）
三角筋
長頭
短頭
上腕二頭筋
肩の診方
三角筋
腱板
上腕骨頭
三角筋
腱板
上腕骨頭
足関節の診方
伸筋腱
脛骨
距骨
伸筋腱
脛骨
距骨
足MTP関節の診方
血管
中足骨
基節骨
まとめ
•関節炎に対応するには、単に関節に由
来するものか、全身性疾患に由来するも
のかを鑑別する必要がある。
•日頃から、全身を丁寧に診療することを
心がけたい。

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