乳児期の体重は小児期の身体組成と関連するのか? Is the weight in

乳児期の体重は小児期の身体組成と関連するのか?
Is the weight in babyhood related to the body composition in childhood?
1K05A601
指導教員
主査 坂本静男先生
Ⅰ.緒言
後藤 功
副査 鳥居俊先生
皮下脂肪面積を計測した。対象者の両親に質問
厚生労働省によって 1996 年に「成人病」が「生
紙を郵送し、出生時、3 ヶ月、1 歳時の体重につ
活習慣病」と改められ、成人だけでなく、小児もか
いて母 子 手 帳 を元 に記 入 してもらいアンケート調
かる疾患として認識され、現在、小児肥満が問題
査を実 施した。アンケートを元に 3 ヶ月時 までの
になっている。これまで小児 期の肥 満 と出生 体 重
体重の伸び率および 1 歳時までの体重の伸び率
との関 連 性 についていくつか報 告 されているが、
を算出し、出生時体重・3 ヶ月時体重・1 歳時体
現段階では、低出生体重が肥満になるリスクが高
重・3 ヶ月時までの体重 の伸び率・1 歳時までの
いといった先 行 研 究 と、出 生 体 重 が重 い場 合 に
体 重 の伸 び率 と、小 児 期 における現 在 の体 重 ・
肥満になりやすいといった先行研究が混在し、未
体 脂 肪 率 ・除 脂 肪 量 ・内 臓 脂 肪 面 積 ・皮 下 脂 肪
だ統 一 見 解 が得 られていない。また、現 在 子 ども
面 積・内臓 脂 肪皮 下 脂 肪 面積 比・BMD・BMC と
を対象とした身体組成に関する研究のほとんどは、
の相 関 関 係 を調 べ、相 関 係 数 を求 めた。有 意 水
DXA 法を用いての体脂肪率、体脂肪量を測定し
準は 1%、5%とした。
た研究であり、これまでその体脂肪量が内臓脂肪
か皮下脂肪かといった判定を核磁気共鳴画像法
Ⅲ.結果
(Magnetic Resonance Imaging: MRI)を利用して
小児期である現在の体重は、3 ヶ月時の体重、
測定した研究はない。そこで、本研究は、DXA 法
1 歳時の体重との間に有意な正の相関関係がみ
と MRI 法を併用して、乳児期(出生時、3 ヶ月時、
られた(p<0.01)。体脂肪率は 3 ヶ月時の体重、1
1 歳時)の体重と、小児期における身体組成との
歳 時 の体 重 と有 意 な相 関 を示 した(p<0.01)。除
関連性について検討することを目的とした。
脂肪量、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積と 3 ヶ月
時 の体 重 、1 歳 時 の体 重 との間 にも有 意 な正 の
Ⅱ.方法
相関関係がみられた(p<0.05)。内臓脂肪皮下脂
本研究は 7~12 歳の小学生男子 58 名を対象
肪面 積 比は、3 ヶ月 時 の体重との間(p<0.05)、1
とし、身長計、体重計(タニタ体組成計 DC-320)
歳時の体重との間に負の相関が観察された
を 用 い て 身 長 ・ 体 重 を 測 定 し た 。 DXA 装 置
(p<0.01)。BMC と 3 ヶ月時の体重、1 歳時の体重
DelphiA-QDR ( Hologic 社 ) を 使 用 し 、 whole
との間に正 の相 関 関 係 が得られたが、BMD はど
body mode に て 全 身 の 骨 密 度 ( Bone Mineral
の項目とも相関を示さなかった。
Density: BMD ) 、 全 身 の 骨 塩 量 ( Bone Mineral
Content: BMC)、体 脂 肪 率 、除 脂 肪 量 を測 定 し
た。MRI 装置を使用し、腹部の横断像を撮影し、
SliceOmatic
( TomoVision
Inc.,
Montreal,
Canada)を用 いて解 析 し、腹 部 の内 臓 脂 肪 面 積 、
Ⅳ.考察
本 研 究 結 果 より、小 児 期 における身 体 組 成 の
全ての項目 で出生体 重 との相 関関 係は認められ
ず、3 ヶ月時体重、1 歳時体重との間に正の相関
関 係 を示 した。先 行 研 究 では、3 ヶ月 時 体 重 、1
小児期の身体組成は、3 ヶ月時体重、1 歳時
歳 時 体 重 という項 目 で調 査 した研 究 はなく、この
体 重 との関 連 性 がある可 能 性 が示 唆 された。出
理由に関しては不明であるが、一つの可能性とし
生~1 歳時までは母乳を欲しがるだけ与える場合
て、出生体重よりも、3 ヶ月時の体重、1 歳時の体
が多く、まだ歩行ができないため、3 ヶ月時、1 歳
重 の方 が、その後 の成 長 に関 連 する環 境 要 因 が
時 の体 重 をコントロールする事 は難 しいが、出 生
強 く影 響 していることが推 測 される。また、内 臓 脂
~1 歳 時 までの身 体 組 成 は重 要 であり、本 研 究
肪皮下脂肪面積比は 3 カ月時、1 歳時体重との
結 果 で示 された関 連 性 を考 慮 して、食 生 活 、運
間に負の相 関が得られたことから、成長の過程 に
動 に注 意 し育 児 を行 うことが推 奨 される。このこと
おいて脂肪の蓄積は、内臓よりも皮下に蓄積しや
は、小 児 の肥 満 予 防 、しいては近 年 、急 激 に増
すい可能性があるのではないかと考えられる。
加 している小 児 のメタボリックシンドロームの予 防
の一助となると考えられる。
Ⅴ.結語