Topics「金利急上昇リスクへの備え

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Topics「金利急上昇リスクへの備え」
金利急上昇リスクへの備え」
平成 27 年 10 月 09 日
■ IMF は 7 日、半年毎に公表する「国際金融安定性報告書(GFSR)
」の中で、債券市場において、
市場流動性が枯渇する場合、長期金利の急上昇リスクが高まることに注意を促している。
■ リーマンショック以降、先進国を中心として流動性を供給する「量的緩和」が長期金利の低下と株
価の上昇を促してきたが、米国の引き締め政策への転換により、市場が大きく反転するリスクが高
まりつつあるようだ。
日米長期金利推移(月次ベース)
■ とはいえ、市場のコンセンサスは「世界経済の減速リスクから、米国の利上げは緩慢なペースに留
まる」が大勢である。2013 年 5 月以降、テーパリングへの備えがある程度進んだとの観測もあり、
依然として「米利上げが市場を大きく揺さぶる可能性は低い」との見方が多い。
■ しかし、過去のケースを見ると、必ずしも楽観的な見通しが当るとも言い難い。1994 年 2 月グリ
ーンスパン FRB 議長は 3%に据え置かれていた FF レートを 3.25%に引き上げた。将来的なインフレ
の目を摘み取ることが目的で、インフレ率は比較的低レベルに留まっていたため、長期金利は逆に
低下するとの読みもあった。
■ この利上げ直後には、株価は小幅下落で反応したが、長期金利は逆に上昇した。更にその後「日米
貿易交渉が決裂」して円が対ドルで 7%上昇、インフレ指標も上昇したことで、世界的な債券急落
をもたらすこととなった。当初、ルービン財務長官もグリーンスパン FRB 議長も市場の反応が理
解できなかったらしい。
■ 背景には、徐々に存在の高まりつつあったヘッジファンドの存在が大きかった。100 倍ものレバレ
ッジをかけ、世界中の債券に投資するファンドは、金利が数十ベーシス逆に動けばポジション縮小に
迫られる。まず流動性の高い債券が売られ、最後に流動性の低い債券が投げ売られた。
■ 相場は、長期的にはファンダメンタルズに収斂するとしても、短期では需給の影響が大きい。当時
よりも今の方がヘッジファンドの残高は大きく、利回りを求めて流動性の低い債券まで買い進まれ
てきた。参加者のポジションが同じ方向に偏っているだけに、相場が逆回転すると皆が一斉に売り
に殺到するリスクが高くなる。
■ また、VaR(バリューアットリスク)でポジション管理をする場合、
「リスク金額=ポジション金額×
ボラティリティ」計算される。つまり、ボラティリティが高まると、保有する債券を売ってポジションを
縮小するため、売り圧力が一段と高まることになる。
■ IMF の警告は過去のケースをもとに市場参加者へ注意を促したものだろう。公募型の投資信託で
も流動性の低い(やや利回りの高い)債券を多く組んだファンドには注意が必要だ。万一 LTCM
型の破綻が起きれば、市場を大きく揺るがす事態になる可能性も指摘しておきたい。
■ 米国の利上げ時期については意見が分かれるが、
CME に上場されている米 30 日金利先物レートでは、
来年の年央にかけて 0.25%、年末にかけて更に 0.25%の利上げを織り込んでいる。過去の相場変動
を身をもって体験したファンドマネージャーほど、流動性の高いポジションをシフトしていると予
想される。
CME30day FF レート先物(10/9 引)
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