公益財団法人国際金融情報センター平成 26 年度事業報告書 当財団は

公益財団法人国際金融情報センター平成 26 年度事業報告書
当財団は、平成 26 年度において以下の事業活動を行なった。
Ⅰ.調査事業
1.カントリーリスク等に関する調査
(1)カントリーリスク等に関する調査
平成 26 年度は、①世界 24 か国についての半期毎の総合評価レポートおよび国別予測・
レーティングレポート、②24 か国の政治・経済・社会全般にわたる基礎情報を網羅した
基礎レポート、③その他の 37 か国に関する半期、一年毎の概要レポートなど、従来から
継続している定期レポートをインターネット経由で会員各位に提供してきた。
(2)トピックス・レポート、週報等
この一年間の世界経済を振り返ると、まず米国では、2014 年 10 月には緩やかな景気
回復、雇用環境の改善などを背景に FRB が量的緩和の終了を決定した。その後も同国経
済は個人消費を中心に回復傾向を辿り、失業率も 15 年 3 月には 5.5%まで低下した。FRB
では 15 年後半にも金利を引き上げて金融政策の正常化への道を歩むと見込まれている。
一方、欧州経済は引き続き力強さを欠き、次第にデフレリスクが高まっていった。こう
した中、15 年 1 月、ECB では量的緩和(資産購入プログラムの拡大)の導入を決定した。
この間、ギリシャでは 14 年 11 月に誕生した新政権とユーログループ、IMF 等との債務
交渉が難航、ギリシャのデフォルトの事態も懸念される情勢である。日本は 14 年 4 月に
消費税引き上げ(5%→8%)を実施したものの、その個人消費等の支出行動に及ぼす影響
は大きく、2 期連続で GDP はマイナス成長に陥り、政府は消費税再引き上げを延期した。
また日銀は 14 年 10 月に原油価格の低下に伴うインフレ期待の後退を懸念して追加緩和
に踏み切った。先行きの先進国経済についてはバーレル当たり 100 ドルから 50 ドルへの
原油価格の急落に伴う交易条件の改善が消費、投資の拡大に資するものとみられている。
新興国に目を転じると、景気減速に直面する国が増えた。中国では景気の減速、行き
過ぎたシャドーバンキングの拡大、不動産価格の下落、などが鮮明になってきて、14 年
の実質成長率は 7.4%と 24 年ぶりの低水準となった。政治面では政府高官の汚職追及の
動きが一段と強まった。ブラジル、南ア等では引き続き対外バランスの悪化、通貨下落
に見舞われている。また原油価格の急落はインド、トルコなど消費国には好影響を及ぼ
すものの、石油輸出国のナイジェリア、ベネズエラなどには深刻な悪影響を及ぼしてい
る。とりわけ、ロシアではウクライナ問題の深刻化、クリミアの併合を機に採られた欧
米の経済制裁に原油価格の急落が加わり、15 年はマイナス成長に陥るとみられている。
先行きの新興国経済については、米国の利上げ開始に伴う大量の資金流出や原油ならび
に資源価格の下落などの影響が懸念される。
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国際政治情勢をみると、イランが 15 年 4 月に 6 か国協議を通じて欧米諸国と核開発に
つき合意する、などの前向きの動きがあった一方で、混迷を極めるウクライナ情勢、イ
エメンでの内乱激化、ISIL などアラブ過激派によるテロの中近東からアフリカへの拡大
など、地政学的リスクが高まっているように窺える。
このように各地域、各国で急激な情勢変化が生じる中、当財団では、各国の最新の動
向を伝えるトピックス・レポートを相次いで発信した。新興国のなかで脆弱な経済・金
融情勢が続く 8 か国については、半年に一度の周期でコンサイスに問題点を取り上げた
特集を定期発行している。ギリシャ、スペイン、イタリアの動向など欧州ソブリン債務
問題についても、週次でアップデートする表形式でのレポートを引き続きブラッセル事
務所で作成している。また米国の政治経済情勢については、ワシントン事務所が情報を
不断にフォローしている。
主なレポートとその作成間隔は次の通りです。
① 本部及び海外事務所(ワシントン、ブラッセル)が調査・執筆した現地レポートや
出張報告(随時)
② 世界経済見通し(半期毎)
③ アジアの主要通貨・株式の動き及び中南米主要国の通貨の動き(毎週)
④ アジア域内の政治・経済・金融の動向(毎週)
⑤ 中南米主要国、前週の主な動き(毎週)
⑥ ロシア・中東欧の政治・経済・金融レポート(毎週)
⑦ 北アフリカ・中東の政治動向近況(毎週)
⑧ エマージング・マーケットとして注目される諸国の経済指標(毎週)
⑨ 為替予測(ドル円およびユーロ円の先行き相場に関する市場参加者の見通しの集約)
(月2回)
なお、26 年度中のレポート配信数は 1,602 件(昨年 1,602 件)、会員の検索数は
86,130 件(昨年 94,019 件)となっている(ともに基礎レポートは各章を 1 件と計算、
全 8 章で 8 件)。
2.講演会・セミナー
26 年度には、恒例の IMF 世界経済見通しに関する講演会のほか、金融庁長官、財務官
等を講師に国際金融セミナーを開催したほか、新興諸国に関係するセミナーを JETRO と
共催するなど、会員各位の関心の高い分野についての講演会、セミナーを開催した。
とくに 26 年度についてはアジア諸国を中心とした国際税制やマネーロンダリングに
関する国際的な議論の進捗など、関心の高い分野についての講演も盛り込んだ。
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3.ワークショップ
26 年度も、最新の国別予測・レーティングに関する説明会を会員に限定して、7月と
1 月に開催した。当財団各研究員が現地調査を通じて得た最新情報を会員に提供する出
張報告会も多数開催した。
Ⅱ.海外テロリスト等資産凍結対象者検索管理システム運営事業
26 年度、日本政府は資産凍結等の経済制裁の対象者について、従来から指定対象と
なっているアルカイダ系対象者のほか、新たにウクライナの不安定化に関与する者、
中央アフリカ、イエメンの平和等を脅かす活動に関与した者など、18 回にわたり、
のべ 202 名の制裁対象者情報を告示した。当財団ではそれら制裁者情報を速やかに
データ化し、利用金融機関で該当する人物の氏名チェックが確実に行えるよう情報
提供を行った。また、制裁者のアラビア語表記の情報やロシアの銀行に対する資産凍結
以外の経済制裁措置などについて、システムに新たに参考情報として掲載するなど、
外為法で求められる確認義務についてシステムの対応を積極的に行った。システムの
利用は国内業務を主とする金融機関やクレジットカード会社、送金事業者などにも
広がり、26 年度末には利用金融機関数は約 250 先に及んだ。27 年度に予定されている
改正犯罪収益移転防止法により、さらに厳格な本人確認が求められるようになること
から、海外要人口座の自主的チェック強化について、先行してシステムの機能拡張に
取り組んだ。
Ⅲ.個人利用システムの普及
インターネット等を通じて会員のみならず国民一般にも当財団の調査の成果普及を図
る狙いから、個人利用システムを開発、一昨年 2 月から稼働を開始した。26 年度の利用
件数は依然として低水準に止まった。
Ⅳ.受託事業
当財団は、会員等の委嘱を受けて、新興諸国・開発途上国の金融・財政や対外債務
管理等に関する各種調査・研究を行い、また研究会や研修会等に関する事務を行ってい
る。ただ一般競争入札を通ずる競争激化から 26 年度実績は前年の一件から皆減となった。
以 上
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