相対性理論と時空間について 所属: 物理・数学 ゼミ 1年 2組 16 番 島田 佳季 第1章 はじめに 第1節 テーマ設定の理由 アインシュタインの考案した相対性理論の名前は誰もが聞いたことがあるだろう。私 はこの理論について深く興味がある。かつて絶対的だと思われていた時間・空間がこの 理論によって、相対的であると分かったのだ。アインシュタインの考えたこの不思議な 相対論の世界について多くの人に知ってもらいたいと思ったからだ。 第2節 研究のねらい 相対性理論によって導かれるこの世界の仕組み、成り立ちについて理解する。時間・ 空間とはどのようなものか、私たちの限られた感覚では察知できない様々な事象につい て、科学の力を使うとどのようなことがわかるのかを調べる。 第3節 第1項 研究内容と方法 研究の内容 相対性理論の考えに基づく時空間の相対的な関係について。 第2項 研究の方法 主に科学雑誌ニュートン。また内井惣七著「空間の謎・時間の謎」 第2章 研究の展開 ニュートンの時代には、空間と時間は絶対的だという考えが主流だった。 相対的である と考えるライプニッツなどの科学者もいたが、長らくこの考えが信じられていた。しかし アインシュタインの相対性理論によって私たちの世界観は大きく変わった。なんと時間と 空間は伸び縮みするのだ。 第1節 相対性理論を始めるにあたって 相対性理論は「相対性原理」と「光速度不変の原理」という二つの原理に基づいてい る。 まず、相対性原理とは、「慣性系(静止した系もしくは等速直線運動をしている系) では、すべての物理法則が同様に成り立つ」というものだ。たとえば、地上と等速直線 運動をする電車の中で、真上に物体を投げたとする。このとき、物体は地上でも電車の 中でも同様に手元に落ちてくる。これは物体に同じ物理法則が成り立って いる から だ。 次に光速度不変の原理とは、「光は観測する場所の速さや、光源 の運動に関係なく、 1 常に秒速 30 万キロメートルで一定」というものだ。つまり、普段私たちの身の回りで 成り立っている速度の合成が光の場合では成り立たないのだ。たとえば、 光速に近い速 さで運動する光源から、進行方向と逆向きに光を発射したとしよう。このとき、その光 を観測するとどうなるか。普通の感覚で考えれば、光は遅く見えるはずである。しかし、 なんと止まっている光源から出た光も、光速に近い速さで運動する光源から出た光も観 測すると、同じ秒速 30 万キロメートルなのである。 第2節 伸び縮みする時空 たとえば、長さが 30 万キロメートルの筒(以降は光時計と呼ぶ)があって、その底か ら光を真上に打ち上げるとしよう。このとき、当然光は 1 秒で上に達する。では、その光 時計を月面と、光速に近い速さで等速直線運動するロケットの中に置いたときを考えよう。 光速度不変の原理と相対性原理が成り立つので、月面とロケットの中のどちらの観測者が 観測しても光速は一定である。月面の観測者が月面の光時計を観測すれば、もちろん光は 1 秒で上に達する。では月面の観測者がロケットの中の光時計を観測するとどうなるだろ う。そう、このときロケットの中の光は斜めに進むのである。月面から見るとロケットの 中の光は光時計の上に達するまでに 1 秒以上かかってしまい、つまり月面から見ればロケ ットの中の時間は遅れていることになるのだ。 先ほどは月面の観測者から見たロケットのなかの時間の遅れについて考えた。ではここ で、ロケットの中の観測者から見るとどうなるだろうか。このとき、ロケッ トの中の観測 2 者は、自分が動いているといえるだろうか。自分が止まっていて、月面が自分に対して光 速に近い速さで動いているとは見られないだろうか。そう考えると、先ほどの状況が逆に なるのがお分かりだろうか。そう、今度はロケットの中の観測者から見ると、月面の観測 者の時間が遅れているように見えるのだ。 「 見る人によってロケットの中の時間が遅くなっ たり、月面の時間が遅くなったりと、そんなことがあり得るのだろうか」と思う人もいる だろう。しかし、これは正しく、時間の遅れはお互いさまなのだ。 さっきまでは時間の伸び縮みについて考えた。では、次は空間の伸び縮みについて考え てみよう。例えば、光速の 80%の速さで飛べる宇宙船が、1.3 光年先(1 光年は光が一年 .. . で進む距離)の母船まで 1 年 で飛ぶことを考える。ただし、この 1.3 光年という距離は母 ..... 船から見た 宇宙船までの距離である。普通に考えれば宇宙船は 0.8 光年しか進めないのだ が、このとき、宇宙船は光速に近い速さで飛んでいるので、母船から見ると宇宙船の時間 の流れは遅くなる。相対性理論に基づいて計算すると、母船の 1 秒に対して、光速の 80% で飛ぶ宇宙船では 0.6 秒しか進まない。つまり、宇宙船にとっての 1 年は、母船にとって の 1.67 年(1 年÷0.6)に相当する。光速の 80%で 1.67 年飛び続ければ、到達距離は 1.33 光年となり、宇宙船にとっての 1 年で母船に到達できることになる。 ここまでは母船から見たときの話であった。ここで、今度は宇宙船から見てみよう。宇 宙船から見ると、母船が光速の 80%で近づいてくる。宇宙船にとっての 1 年では、母船は 0.8 光年しか近づいてこないので、1 年では母船に到達できないように思われる。これでは さっきのことと矛盾してしまう。ではどう考えればいいか?もし距離が縮んだら 1 年で母 船に到達することは可能ではないだろうか。そう、つまりは母船にとって 1.3 光年あった 距離は、光速の 80%で移動する宇宙船からすると 0.6 倍にちぢむのだ。宇宙船にとっての 母船までの距離は 0.78 光年(1.3×0.6 光年)となり、一年間で母船が近づいてくる距離 0.8 光年より短くなるので、宇宙船は 1 年間で母船に到達できることになる。また、時間 の時と同じように、空間の縮みもお互いさまである。宇宙船から見れば母船までの距離が 0.6 倍にちぢんだが、母船から見れば光速の 80%で飛行する宇宙船の長さが 0.6 倍に縮ん で見えるのだ。この例からわかるように、時間の伸び縮みと空間の伸び縮みは同時に起き ているのだ。 第3節 E=mc 2 質量とエネルギーは同じ? ここからは、有名なあの式について考えよう。 まず、粒子加速器という機械を使って電子を加速させることを考える。 止まった電子にエネルギーE を与えて光速の 86.6%まで加速できたとする。そしてさらに エネルギーE を与えても、なぜかその速度からは光速の 7.7%分しか加速しないのである。 さらにエネルギーE を与えても、光速の 2.5%、1.2%と加速量は減少していくばかりであ る。これはなぜか? なぜなら、物体の速さには光速という上限があるからなのだ。 では電子に加えていったエネルギーはどうなったのか。物理学には、「エネルギー保存則」 という大事な法則があり、エネルギーは決してなくなったり新たに生まれたりしない。 アインシュタインの出した結論は、 「質量とエネルギーは同じものである」という驚 くべき 3 ものだった。電子に力を加えても、光速に近づくとエネルギーが質量と置き換わって、力 の効果を打ち消すのである。光速に近づけば近づくほど、質量は無限大に増加していくの である。この関係を数式で表したのが「E=mc 2 」という式である。 (E の単位はジュール[J]、 mは質量[kg]、c は光速秒速 3 億メートル) たとえば、ウランの核分裂によって、10gの質量がエネルギーに変わったとする。先ほ どの式によると、このときに放出されるエネルギーは 900 兆ジュールにもなる。たった少 しの材料からこれほどまでのエネルギーが作り出されるのである 。 第4節 重力とはなにか ここまでの話は重力の影響を考えない特殊相対性理論の話であった。ここからは重力 の影響も考える一般相対性理論に踏み込んでいく。 まず、慣性力というものについて述べる。 例えば、電車に乗っていると、停車すると きに体が前につんのめるのは感じたことがあるだろう。このときには、慣性力というも のが働いているのだ。ニュートン力学ではこの力は見かけの力とされている。しかし、 アインシュタインはまったく異なる結論を出した。なんと、慣性力と重力は同じだとい うのだ。この考えは「等価原理」と呼ばれる。次のような思考実験を行う。ある人が窓 のない宇宙船に乗って、その宇宙船が加速度運動をしたとする。このとき、慣性力によ って、その人は下向きに見かけの重力を受ける。宇宙船には窓がないので、宇宙船がど こかの天体上に止まっているのか、加速しながら宇宙空間を進んでいるのかを外の様子 から判断することはできない。このとき、中の人は体をひっぱる下向きの力が慣性力な のか重力なのかを区別することはできない。 本題に入っていこう。まず、ゴムシートのような二次元の空間を考える。そこで、こ のゴムシート(二次元空間)上に一つのボールを置いたとしよう。すると、もちろんゴ ムシートは曲がるだろう。そこで、もう一つ別のボールをこのゴムシート上に置いたと しよう。すると、シートはさらに曲がり、二つのボール近づいていく。アインシュタイ ンは同じことが空間の中でも起こっていると考えた。すなわち、空間上に天体などの質 量をもった物体が存在することで、空間が曲がり、二つの物体は近づいていくのだ。そ う、この現象が重力の正体である。つまり、重力とは曲がった空間が引き起こす現象な のだ。質量が空間を曲げ、曲がった空間が重力を引き起こすのだ。太陽系の天体が太陽 の周りを公転するのは、太陽の大きい質量によって曲がった空間の影響を受けるからだ。 4 また、先ほど重力によって空間が曲がると述べた。空間が曲がるとどうなるか。下の 図を見てほしい。 赤い矢印が光の軌跡だとしよう。点Oに質量を持つ物体が存在して、重力が発生している。B さんの場所よりもCさんの場所のほうが質点Oに近いので、Cさんの場所でのほうが重力が強い。 このとき、b1、c1 から同時に光を発射する。そうすると、光は曲がった空間の中を直進するので、 Aさんから見ると光(赤矢印)は曲がっているように見える。しかいし、このとき、b1b2 間の距離より c1c2 間の距離のほうが短くなる。つまり、c1c2 間のほうが、b1b2 間よりも光が遅く進んでいること になる。しかし光速度不変の原理より、光速は一定なので、これはおかしい。 確かにAさんから見れば光速が変化しているように見える。しかし、Bさん、Cさん .. からそれぞれの目の前の光を観測すれば、二人は光とともに点Oに向かって 落下 してい るので、確かに光は秒速 30 万キロメートルで直進しているのだ。つまり、天体が作り 出す重力の影響がある場合、光速度不変の原理が成り立つのはそれぞれの観測者の近く 5 の狭い範囲に限られるのだ。 一方、遠くから見た場合、見かけ上の光速が変化して、光速度不変の原理が破れたよ うに見えるのだ。 「光が進んだ距離=光速×時間」なので、BさんCさんにとって光速が変わらず 秒速 30 万キロメートルなら、「距離b1b2>距離c1c2」になるためには、Cさんにとって の時間がBさんよりも遅くならなければつじつまが合わない。質点Oに近く重力が強い ところでのほうが時間の流れが遅いので、遠くの観測者(ここではAさん)から見ると 光がゆっくり進むように見えるのだ。つまり、重力が強い場所ほど時間の流れが遅くな るのだ。 また、相対性理論の予測するところでは、大きな質量を持ち、光をも飲み込んでしま うブラックホールの境界では、なんと時間が止まってしまうのである。 第5節 相対性理論に登場する式 ここでは、相対性理論に登場する式の一部を紹介する。 時間の遅れを表す式: ×t 移動する観測者の速さを v 光速をc、静止した観測者の時間をt、移動する観測者の 時間を T とすると、上の式が成り立つ。 アインシュタイン方程式: 辺は空間の曲率(空間の曲がり具合)、右辺は物質場の分布を表している。 つまり、右辺に物質やエネルギーを代入すれば、その周りの時空の曲がり方がわかるの だ。 ここからは私の個人的な意見なのであるが、もし仮にマイナスのエネルギーがあると したら、その周りの時空はマイナスの曲がり方をするのではないか。つまり、正のエネ ルギーによって生まれる重力に対し、マイナスのエネルギーによって生まれる斥力が存 在しうるのではないか。この宇宙は現在加速膨張をしているが、重力はひきつけあう力 なのだから、何かほかの斥力が存在するはずである。その斥力と関係があるのではない かと考えている。 第3章 感想 まとめ 私は以前からこの相対性理論に興味があったのだが、今回のこのレポート作成にあった て、さらに理解を深め、知識を増やすことができた。この理論は私たちの世界観は大きく 変更された。また、宇宙の始まりという、人類が自分たちの起源を知る上での最大の難問 にも答えを与えようとしている。そんな理論を使うことによって、GPSなどの身近な技 6 術も発展したのだ。その恩恵を享受している私たちは、たとえ少しでもこの理論について 知っているべきだと思う。この文章を読んで少しでも相対性理論に興味を持っていただけ たら幸いだ。 第4章 参考文献 ニュートン 現代物理学 3 大理論 ウィキペディア アインシュタイン方程式 7
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