2015 年度 一 説明的文章の問題 立命館慶祥中学校 入試講評 国語 出典:齋藤孝『コミュニケーション力』より 「コミュニケーション」とは何か。という提起に対して、作者自身が「意味」や「感情」を相互にやりとりを する行為であると述べている。その「意味」と「感情」という二つの要素を的確につかみ、筆者の主張を読み取 ることが、問題を解答する上で大きなポイントでした。 今回の漢字問題は平均してよく出来ていましたが、その中でも「効率」という漢字は「高率」や「公立」とい う間違った解答がいくつか見られました。聞いたことがある字でもその知識が曖昧なため、正確な漢字が書けな い場合が多くあります。日ごろから、教科書や資料などで見る漢字も読むだけではなく、 「読む」⇔「書く」の 両面から学習していきましょう。 問四の長文記述問題では、主題である「コミュニケーションとは何か」という提起に対する筆者の主張が把握 できているかどうかが問われる問題でした。傍線部①「コミュニケーションを事前に十分とるべきであった」に 込められた筆者の考えは、コミュニケーション=情報伝達ではなく、 「意味」や「感情」をやりとりする行為を 事前にすべきであった、ということである。また、六十字の字数制限内で答えるには、 「意味」 「感情」だけでは なく、さらに本文中の他の表現に置き換え、具体的な表現にする必要があった。傍線部の後に、 「一つには、∼。 もう一つは∼。 」という箇所があり、そこを字数制限内でまとめる必要がありました。 「意味」 「感情」というワ ードが多く解答用紙に書き込まれていたが、文章の一部分をそのまま抜き出すだけになっていた解答が多く見ら れたのが残念でした。ぜひ、文書を要約する学習も取り入れてもらいたいと思います。 二 物語文の問題 出典:椰月 美智子『 十二歳 』より ポートボールのチームに入っている少女の、チーム内での人間関係や普段の練習状況から主人公の心情を読み 取り、出題内容に沿った解答を導き出せるかが、大きなポイントでした。主人公の心情が明確に表現されていて、 平易な内容の小説ですが、読解したことを、問題文の条件にあわせて的確に表現できるかどうかが、高得点のポ イントとなりました。 問一の漢字の読み書きでは、c の「余裕」以外は、非常に高い正答率でした。 問三は、主人公の心情を本文から抜き出す問題でしたが、 「私の気持ちに、だ」とありますので、 「私の気持ち」 を具体的に説明している一文を抜き出しましょう。金谷が主人公に対して取った行動を説明した一文を抜き出し ている答えが多くありましたので、問題の意図をしっかりと押さえて解答しましょう。 問七は、小説問題のメインとなる記述問題で、解答の観点は次の二つです。 「私の普段の練習内容」と「自分 の意志ではどうこうできないこと」を 60 字以内でまとめましょう。 「理由」と問われていますから、文末は「か ら。ので。ため。 」にして答えましょう。誤答の例として、金谷に対する心情や練習に対する心構えを書いてい るものがありました。この問題も意図をしっかりと押さえて解答しましょう。 問九は、本文の内容を問う問題でしたが、良くできていました。本文の内容を的確に把握できていると感じま した。 2015 年度 立命館慶祥中学校 入試講評 算数 大問1 計算力の定着を測る問題です。四則の混じった計算などが正確に計算できるかが問われています。 〔1〕(3)においては,分配法則 の逆を利用すると容易になるということに気づいて計算する問題ですが,できに差がありました。こういった工夫を取り入れるこ とで,計算が容易になり間違いを防ぐことにつながっていきます。日ごろより何となく計算をしているところでも,何かしら工夫 ができないか考えてみることも大切な学習になると思います。 大問2 割合・比・速さなどの文章題の問題です。どれも標準的な問題でしたが,日ごろよりこのタイプの問題に慣れているかどうかで 正答率に差がつき,2極化する結果となりました。割合・比・速さなどは,数学や理科の学習には欠くことのできない大切な分野 です。数多くの問題に触れ,単に公式を暗記してあてはめるだけではなく,その公式の成り立ちまで理解を深めてほしいと思いま す。 大問3 図形に関わる標準的な力を問う問題です。 〔1〕では平面図形の角度, 〔2〕 〔3〕は平面図形の面積, 〔4〕では空間図形の体積に関 するものを出題しました。平面図形では,特別な直角三角形(三角定規の三角形)についての知識や補助線を引いて解くことなど を身につけていることが必要です。また,空間図形の問題では,手前側からは見えない裏側を正しく捉える力も求められます。日 ごろから立体模型を自ら作り,いろいろな角度から空間図形を見る練習をしておくことが大切です。 大問4 公約数など数の性質に図形を絡めて出題しました。具体的な操作をイメージし,具体的にその図を書くことができれば,規則性 に気が付き,正解にたどりつくことができます。規則性のある問題は,受験では定番の問題です。実際に書いて実験することで規 則性が把握できるため,日頃から粘り強く書く習慣をつけていくことが大切です。 大問5 速さに関してグラフを利用して考える問題を出題しました。条件をグラフに表現した後は,図形の問題として計算をして解いて いきます。特に,〔1〕〔2〕では速さが距離と時間の比であることを三角形の辺の比に置き換えて出題をしています。そのため,グ ラフの縦軸,横軸の単位を見落としてしまったことで,考えにくい問題となりました。最後の設問は,見慣れない出題が多く難し い問題です。これは,問題を解くために必要な筋道を立てて考える力を鍛えるには良い難易度の問題ですので,ぜひとも,このレ ベルの難易度の問題にも日頃から挑戦してほしいと思います。 算数の学習は,運動トレーニングに似ているところがあり,日ごろからどれだけ問題を解いているか,どの難易度の問題を練習 しているかで力の差が現れきます。受験の日までにできるだけ数多くの問題に触れ経験を積むことで,入試問題のレベルであって も正確に解く力がついてきます。少なくても 1 日 1 題。これが受験算数突破の最低目標です。 2015 年度 立命館慶祥中学校 入試講評 社会 Ⅰ【地理】中部地方の自然環境を問う問題 《やや難》 中部地方を中心に,日本の自然環境について,基本的なことがらと絡めた問題を出題しました。地理的認識を しっかり持っていないと正解できない問題にも見えますが,問題を解くためだけではなく,日常的に地理的な興 味や関心を持つようにすれば対応できる問題です。 Ⅱ【地理】各県の特徴と日本と世界の関わり 《やや難》 日本の主な地域や,日本と関わりの深い国についての,基本的な知識を問いました。Ⅰに比べて正解率は高か ったですが,もっと点数を取れた人もいたのではないかと思います。このような問題を最後までしっかり見直し て,高得点につなげてほしいと思います。 Ⅲ【歴史】古代から終戦までの流れと地理との融合問題 《やや難》 古代から終戦までの時代の流れについて,年表を使用して知識を問う問題を中心に出題しました。 〔5〕や〔8〕 などは地理との融合問題でしたが,正答率が高くしっかり学習できていると感じました。 〔9〕C は細かい年号 を問う出題でしたが,この歌が日露戦争に反対するために詠まれたことが理解できれば解答できたと思います。 Ⅳ【歴史】歴史建造物に関わる問題と地理との融合問題 《普通》 2014 年 6 月に富岡製糸場が世界遺産に登録されたので時事的な面も含めて出題しました。 〔1〕の建物名を答 える問題では,説明文に製糸の工場と記載してあるにもかかわらず,製紙と誤答する受験生が多く見られました。 また〔5〕の論述では,江戸時代の関所で「入鉄砲に出女」が厳しく取り締まられたことは,ほとんどの受験生 が知っているようでしたが,その理由まで理解している受験生は少なかったです。今後は,歴史的事象や政策の 背景などまで学習するよう心がけてほしいと思います。 Ⅴ【公民分野】政治全般に関する基礎知識を問う問題《やや難》 地方自治・三権・財政など政治分野の基本となる内容について,質問しました。 〔2〕のところでは,特別会 が開かれるタイミングなど,いわゆる「国会の種類」に関する知識を駆使して解答する必要があります。〔3〕 の裁判に関する問題では,民事裁判と刑事裁判の仕組みと違いや,それぞれがどのように「控訴」「上告」して いくのか,また高等裁判所の所在地など,一歩踏み込んで質問しましたので,やや難しかったかもしれません。 Ⅵ【公民分野】時事問題《易》 近年,日本各地で見られるようになった「電気自動車のための充電スタンド」について,資料を提示し,解答 してもらいました。多くの受験者が正解できていましたが, 「燃料電池車専用の水素補給スタンド」と解答する など,似たようなものとの間違いがありました。 2015 年度 立命館慶祥中学校 入試講評 理科 Ⅰ.化学・物理分野の基本問題 〔1〕は水溶液の性質に関する問題であり,いくつかの特徴から水溶液を見分けさせる問題である。 〔2〕は基本的な時事問題であ る。〔3〕は物質の密度に関する問題である。物体の体積が小さくなることによって密度が大きくなることが理解できるかを問う問 題である。〔4〕は振り子に関する基本的な知識を問う問題である。ひもの長さと振り子の周期の関係,振り子の振れ幅とおもりの 速さや木片の移動距離の関係を問う問題である。全体的に平易な問題であったため,正答率は高かった。 Ⅱ.生物・地学分野の基本問題 〔1〕はヒトの小腸のはたらきについて選択させる問題であった。〔2〕は顕微鏡を使った観察について問う問題であった。(2)で は,花粉の戦略について考えて解答する。〔3〕はセキツイ動物の分類に関する問題である。ア,ウ,エには明らかに誤りがあるの で消去法によって正答を導き出すこともできる。〔4〕は太陽の日周運動についての問題である。秋分の日では,太陽は真東から昇 り,南の空へと昇っていき 6 時間後に南中,さらに 6 時間後に真西に沈むことから,棒の影がどのように変化するかを考える。太 陽の高度と棒の影の長さの関係に注意して解答する。〔5〕は火山に関する問題である。マグマのねばりけが火山活動にどのように 影響するかをイメージすることが求められる。〔6〕は日食や月食の理解を問う問題である。太陽と月と地球の並び方によってどの ように影ができるかを考えて解答する。 Ⅲ.物理分野の応用問題 読解力,および論理的思考力をはかることをねらいとして出題した。 〔1〕は,微小な値の扱いと単位変換について問うた。[nm] の単位を初めて利用したためか,正解率は低かった。 〔2〕∼〔4〕は正解率が高く,特に〔3〕では,問題文中から題意を読み取り, ヒトが認識する色と反射光の関係を理解できていた。一方,〔5〕については,放射性物質の半減期に代表される「一定時間で半分 の量に減少する」という現象が読み取れていない受験生が多かった。そのため,作図・計算については比較的簡単であったはずだ が,正答を逃していたケースが多く見受けられた。〔6〕では,緑色と誤答する例が多かった。黄色いカロテノイドが緑色のクロロ フィルで普段は隠れていること,シール下の光が当たっていない部分でもクロロフィルが分解されていることを本文から読み取れ れば,黄色という正答にたどり着けたと思われる。〔7〕については,光の反射だけではなく吸収についても正しく読み取れている かどうかを問うた。大問Ⅲを通しての,全体的な正答率はやや低かった。 Ⅳ.生物分野の応用問題 図表で示された情報を処理し,考えを組み立て,論理的な思考を行える力をはかることをねらいとして出題した。〔1〕は昆虫の 特徴についての基礎知識を問う問題である。 〔2〕は昆虫の分類に関する問題である。日常的な自然体験に基づく知識も必要となり, やや正答率は低かった。〔3〕は完全変態と不完全変態の違いを問う問題。〔4〕 〔5〕は実験の情報を読み解いて,整理する力を問う 問題である。〔6〕オニグルミには順位の高い先端にある若い葉ほど,ハチの幼虫のいやがる物質が多く含まれており,幼虫は葉脈 切りを行うことで,葉への毒物質の移動を防いでいる。この結論をもとに,図を用いて実験結果を推測する問題である。〔7〕昆虫 が繁栄している理由は分からなくとも,体温が一定であるとした選択肢を消去できる。 <学習アドバイス> 理科で大切なのは,自然のできごとをよく観察し,「なぜ」「どうして」そうなっているのかを,粘り強く考えることです。です から,問題を解くときにも同じように,まずは問題文をじっくりと読み,何を問われているのかを粘り強く考えて,解答すること を心がけてください。普段の学習の場面でも,教科書に書かれていることや,身の回りのできごとに対して「なぜ」 「どうして」の 気持ちを持って,その理由を考える習慣を身につけましょう。基礎的な知識を覚えることや計算練習ももちろん大切ですが,さら に「自分の考えを組み立てながら」学習に取りくむことがポイントです。
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