技術情報「牛の一生における管理」 お知らせ

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牛の一生における管理
~牛の低カルシウム血症を考える~
広島県立総合技術研究所 畜産技術センター 飼養技術研究部研究員 末永晋一 氏
1 はじめに
平成 27 年 2 月 28 日,第五回大動物臨床研修会(東京大学農学部)で「牛の一生における管理~牛の低カル
シウム血症を考える~」の話題提供がありました。低カルシウム血症は起立不能や,第四胃変位を引き起こす
等,分娩後の生産性を著しく低下させる病気です。低カルシウム血症への対策として,「分娩前にカルシウム
の投与量を下げた方が,分娩後の低カルシウム血症の発生が抑えられる」という考えが古くからあり,実践し
ている農家さんも多いと思います。一方で,効果が確定的でないと思われる農家さんも多いと思います。
2 講演内容
今回の公演の中で,つぎのような話がありました。
「分娩前にカルシウムの投与量を下げるという方法,飼料中のカルシウム含量のコントロールという方法だ
けでは,乳熱を予防するということは困難である」ということでした。
これに対して,分娩後の低カルシウム血症を効果的に抑制する対策として,①飼料のカリウム含量を乾物
中 2%以下にする。②飼料のカルシウム含量を乾物中 0.7 ~ 1%程度に調整する。③飼料のマグネシウム含
量を乾物中 0.35 ~ 0.4%にする。④分娩前,適切な体重,適正な BCS(ボディコンディションスコア)にする。
⑤牛舎の環境改善等,ストレス低減に努める。これら①~⑤のことを総合的に考えることを指摘されました。
3 飼料中のカリウム
これまでも,低カルシウム血症に関して多くの研究が行われています。当センターにおいても分娩前にカ
ルシウムの投与量を下げるだけでは,効果が不明確なことを経験しています。この原因として,牛の泌乳能
力が高いこと,飼料中のカリウムが高いことや,マグネシウムが低いこと等の可能性が考えられました。低
カルシウム血症は,カルシウムだけでなく,カリウムやマグネシウムやリン等とのバランスが重要で,特に,
飼料中のカリウムの影響を強く受けることが報告されています。現在,本県が力をいれている飼料イネは,
下記の表に示したように,カリウムが低い
という特性があるため,分娩前後の低カル 表 . 主な自給飼料のカリウム含有量
飼料名
(生草)
乾物中のカリウム (% )
シウム血症の予防対策として有効であると
イネ
(飼料用品種・黄熟期)
1.40
考えています。
イタリアンライグラス
(一番草・出穂期)
3.29
今後は飼料中のミネラル分析を定期的に
チモシー
(一番草・出穂期)
2.60
行うことが重要です。次回は低カルシウム
スーダングラス
(出穂期)
3.22
血症予防のための飼料設計について解説し
トウモロコシ
(黄熟期)
2.02
ます。
アルファルファ
(一番草・開花期)
3.90
※日本標準飼料成分表
(中央畜産会 2009 年版)
より抜粋
お知らせ
※募集定員、受検資格、試験日程等は同校の教務課までご連絡下さい。
広島
17
2015年
(平成 27年)6月
〔№ 255〕