ネットライブで楽しい理科授業 群馬県総合教育センター 指導主事 1 大島 修 リアルタイム映像を教室に Webカメラを利用して 今日、文部科学省や教育委員会の指導により、各教室にイ ンターネット回線が設置されつつあるだけでなく、多くの学 校で古くなったコンピュータをインターネット専用として、廊下や集会室、図書館などに 置くようになった。そのため、子どもたちは授業に限らず、休み時間や放課後などインタ ーネットを利用して調べ学習や情報検索を頻繁に行うようになった。 理科の天気や天体、社会科の地理などの時間と空間の広いものを対象とする学習には、 資料集やビデオ教材が活用されているが、リアルタイムが要求される現象は、なかなか指 導しにくいのが現状である。そこでインターネットによるライブ映像がとても有効である と考えその一例を紹介する。 2 こんな授業にライブ画像を 本センターでは、気象の学習のために信州大学教育学部や上越教育 天 気 の 学 習 に 大学と協力して雲の様子のライブ中継を行っている。群馬県・長野県 図1 信州大学インターネットスクールトップ画面 図2 各地のライブ画像を同時に表示 ・ 新潟県は日本列島のほぼ中央で、太平洋側、内陸、日本海側に位置し、季節風などと関連 させると天気の様子を比較するのに大変適している。また、気象衛星の雲画像やアメダス データ、そして、本センターで提供している1時間毎の気象観測データと併せて使うこと により大きな効果が得られると考える。 小学校の理科学習でモンシロチョウを飼って成長の様子を観察 昆虫の生態観察に している学校は多い。しかし、それ以外の昆虫の孵化や羽化の様 子は、なかなか見られないのが実態である。そこで、カマキリやミノムシの孵化、アゲハ チョウやモンシロチョウの羽化のライブを行った。これは、授業で使ってもらうというコ ンセプトでなく、常時接続している学校では子どもたちが休み時間など気軽に見てもらい たいという程度で提供した。しかし、実際に電子掲示板には、感動の生の声が書き込まれ ていた。 昆虫の生態のライブに対して、カエルの卵の成長が見たいとか羽化を見逃したのでもう 一度見たいなどのメールや電子掲示板での書き込みがあった。それらに対しては、保存画 像から時間短縮した動画の提供も行っている。 また、課題としては水槽内で飼うことから、多くの生物で飼育と撮影が両立できるとは 限らず期待に添えないものも多かった。さらにライブの関係で夜間も照明をつけているた めに、早朝に孵化せず夜間になってしまうこともあった。 図3 アゲハチョウの羽化のライブ 掲示板へのアゲハチョウの羽化についての書き込み ■すごいっす。羽が生えてくるって感じですね~ 8/7(Thr) 23:43 ■久しぶりに見た羽化でしたので感激しました。 8/7(Thr) 23:45 ■わーわー○○さんすごい 8/8(Fri) *゜▽゜ノノ。・*:★*:・♪・’☆パチパチ 8:42 ■出てくるところ見なかったので、保存画像の動画を何度も見せてもらいました。 いじらしい感じです。ありがとうございました。 ■先ほど見たら右下のサナギも透けてきたような気がするのですが・・・?まだかな? 8/8(Fri) 8:49 8/8(Fri) 15:50 ■右下のサナギ、アップになりましたね。 楽しみだけど、見逃さないために、これからの時間貼り付けはきついなー 8/8(Fri) 16:59 ■3頭目の羽化が間近ですね。張り付いていますね(電話持ってきておこう、 、、) 8/8(Fri) 20:06 ■あ、大島さん、あと1時間くらいですよ、恐らく。今画像保存に入りました。 8/8(Fri) 21:18 ■性懲りもなく張り付いてみております。お腹が膨らんだり、20秒ごとの更新なんですが変化が明らかにわ かります。ドキドキ、目の前で見たかったなぁ~。また飼いたくなってしまいました 8/8(Fri) 21:43 ■ほんとだ、1時間前の画像と重ねると動いているね。 8/8(Fri) 22:10 以下 略 3 ライブ送信システム 経費数千円のシステム ライブシステムは、数千円の Web カメラとフリーソフト の ListCam を利用した。本センターでは、雲画像用と昆虫用 に2台の Web カメラを使って常時インターネット上に画像を転送している。このソフト はコンピュータへの負荷が大きいので転送は、2台のコンピュータを別々に利用している。 転送に関しての構成は、 図 5 の よ う に 単 純 で 、 Web カメラで対象を撮影しなが ら、一定時間毎に画像を JEPG ファイルとしてキャプ チャーし、ListCam で Web サ ーバに FTP 転送をかけてい る。そして、この画像を閲 覧できるサイトページを一 定時間毎に更新する命令を 図4 ListCamのMain画面 HTML で 記 述 し て い る 。 つ まり、インターネットを見 る側としては、一定時間(20 ~ 30 秒)毎に画像ファイル をリロードして、最新の画 像が見られることになる。 撮影の様子 図5 システムの概要図 ●雲画像のライブ 教育センター5階の窓に図6のように Web Webカメラ転送環境 カメラを固定して、現在北西方向の空を向け ○ Web カメラ: ている。冬期以外は、カメラの視野の中に太 コニカEミニ 陽が入ってしまうが、今のところ CCD チップ が焼けることは起こっていない。 ●昆虫の生態のライブ 主に卵やサナギから孵化や羽化の様子をラ KWORLD USB-PC CAMERA KW-330A ○転送ソフト:ListCam ( http://www.clavis.ne.jp/~listcam/index_j.ssi) イブしている。図7のように、水槽内にサナ ○コンピュータ:Pentium Ⅱ 266 ノート、 Celelon400 ディスクトップ 図6 窓枠に付けたカメラ 図7 サナギの羽化ライブの様子 ギなどと一緒に Web カメラを入れている。対象が小さい場合は、サナギとカメラの間に ルーペを入れて拡大している。そして、撮影・転送用のコンピュータをそばに置き、LAN 経由で画像を転送している。 ●その他のライブ 雲や昆虫の他、特別な天文現象についてライブを行った。 4 授業とその感想 ネットライブについて、昨年度に中学2年生の 天気の学習で雲の画像を利用した実践を行った。 生徒は、太平洋側の伊勢崎市の天気(北西方向と 北方向)、内陸の長野県塩尻市・長野市・諏訪市、 日本海側の上越市の天気(雲量、雲の形)、気象衛 星の雲画像やアメダスデータ、天気図を比較して 学習を行った。ライブによる学習として次の内容 があげられる。 ・地域による天気の違い ・季節風による太平洋側と日本海側の天気の違い ・気象衛星画像や天気図と実際の雲の量や種類の比較 ・アメダスデータと実際の天気の比較 ・気象データとの比較など 5 図8 学習の様子 ネットライブの今後 紹介した授業実践は、群馬・長野・新潟の天気の違いから学習の理解を深めるものであ るが、インターネット上のライブ画像は、それ以外に数多く存在している。たとえば次の ようなものがある。 Web カメラが普及し、一般でも簡単に利用できる時代になり、日々新しいサイトがオ ープンしている。特に台風や天文現象があるときなど、臨時に個人レベルでライブカメラ を利用したサイトが急増する。ぜひこれらのインターネットライブを活用し、タイムリー かつリアルな自然現象を学校内に導いて欲しい。 ・日食や月食 ・星座の動き ・自然災害 ・火 山 ライブエクリプス みさと天文台 利根川水系砂防事務所 阿蘇ライブカメラ http://www.live-eclipse.org/jpn/ http://www.obs.misato.wakayama.jp/ http://www.ktr.mlit.go.jp/tonesui/ http://www.rkk.co.jp/mmeye/
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