刑法予習編 第 7 回目 レジュメ - Studying Law Lab

刑法予習編
第 7 回目
レジュメ
・錯誤
<総説>
・錯誤とは、行為者が主観的に認識した事と客観的に発生した事態との間に
不一致があること
刑法の「錯誤」では、
どういう錯誤がある場合に、故意が阻却されるのか?
が問題となる
錯誤があるため、構成要件に該当する違法な事実の認識を欠く場合には
故意が阻却される
故意
<錯誤の種類>
事実の錯誤:事実面に関する錯誤によって、構成要件に該当する違法な事実の認識を
欠くに至った場合
法律の錯誤:行為の違法評価に関わる誤信によって、刑法が違法とする行為を許され
ていると思った場合
事実の錯誤 → 故意を阻却する
法律の錯誤 → 故意を阻却しない
←行為規範から逸脱している以上、処罰する必要がある
また、構成要件に該当する客観的事実の認識がある以上、故意
は認められる
また、事実の錯誤には、違法性阻却事由に関する事実の錯誤も含まれる
<具体的事実の錯誤>
具体的事実の錯誤:同一構成要件内の事実に関して錯誤がある場合
抽象的事実の錯誤:異なる構成要件の事実に関して錯誤がある場合
具体的事実の錯誤について
客体の錯誤:Aを殺そうと思って発砲したら、Bだった
方法の錯誤:Aを殺そうと思って発砲したら、外れてBにあたった
因果関係の錯誤:行為者が予想したのと異なる因果関係をたどって結果が発生した
具体的事実の錯誤の場合、故意が阻却されることはない
←殺人罪では「人」を殺すことを構成要件としているので、
およそ「人」であるという認識をもって殺している以上、構成要件該当事実の認識
があると言え、故意は認められる
=法定的符号説
⇒主観的認識と客観的事実とが同一の構成要件の範囲内で一致ないし符号すれば
故意は認められる
具体的符号説
⇒Aに対する故意とBに対する故意を別物と考える
⇒方法の錯誤について、故意が阻却される
↓
教科書では、方法の錯誤か客体の錯誤かで分けるのでなく、
実質的に考えて故意が阻却されるか否かを判断している
↓
「当該具体的事情の下でそういう行為を行えば、
いずれかの同種の客体に結果が生じることが保証された状況があり、
発生結果はその危険が実現するバリエーションの 1 つにすぎないと
いえる場合」
、故意は認められる
具体例・・・
・1 つの故意しかない場合でも、2 つの故意犯の成立を認めている
1 つの行為で 2 個の犯罪が成立しても 1 罪とする規定がある(54 条 1 項)
因果関係の錯誤:故意犯の実行にあたり、
意図した結果が行為者の狙った客体に発生したものの、
結果発生の態様ないし結果発生に至る因果的経路が
行為者の予想と一致しなかった場合のこと
法定的符号説
⇒「相当因果関係の範囲内において、行為者の予見した因果経過と具体的に発生した
因果経過が一致していれば」故意は阻却しない
⇒客観的な因果関係が認められる場合には、故意が阻却されるということはおよそ
存在しない
実際にも、判例で、因果関係の錯誤を理由として故意が阻却されるという結論を
とったものは見当たらない
教科書の考え方
⇒故意行為によって現実に生じた因果関係をたどるか、
行為者が予定した因果関係をたどるかは、
結果発生の態様のバリエーションの問題にすぎないといえる場合、
故意は阻却されない
(レジュメここまで)