一面せん断従来型定圧試験と真の定圧試験の比較

一面せん断従来型定圧試験と真の定圧試験の比較
大阪市立大学工学部 正 ○大島昭彦 高田直俊
同 学 坂本佳理(現東洋建設)
まえがき 加圧板がせん断箱中で移動する通常の形式の一面せん断試験機では,供試体とせん断箱内面の
周面摩擦のため,ダイレイタンシーに起因する供試体の体積変化に伴ってせん断面上の垂直応力が変化する.
すなわちダイレイタンシーの正,負によって垂直応力はそれぞれ増加,減少し,したがって得られる強度は
過大,過小になる.これを避けるために加圧板とせん断箱を一体化した中型試験機を試みている
1)
が, 操作
の繁雑さなどから,必ずしも通常の試験には適していない.このことから通常形式の試験機で加圧軸側の垂
直応力を制御して,せん断面上の垂直応力を一定とする試験(真の定圧試験と呼ぶ)が提案されている
AAAA
が,定圧試験の簡便さを損なうことになる.ここでは,従来方
反力ネジ
式の定圧試験でもせん断面上の垂直応力を測定して強度を整理
すれば,真の定圧試験,定体積試験と一致することを報告する.
実験方法 試料は,乾燥豊浦砂( Dmax=0.425mm , D50 =0.19
mm ,ρs=2.65 ,ρdmax=1.63 ,ρdmin =1.36 g/cm3 )である.図-1 に
試験機の概略を示した.改良型試験機の形式を踏襲し,せん断
面上の垂直応力σU を直接測定するため,上せん断箱と反力ロー
4)
ラーの間に 2 台の平行平板型 の荷重計を入れる改造を行った.
せん断の進行とともに上荷重計にかかる加圧力の作用点が移動
するが,それによって出力がずれないことを確認している.図
-2 に加圧軸側垂直応力σL とせん断面上の垂直応力σU の算定方
法を示した.σU は上せん断箱の自重(荷重計,上板を含む)を
考慮している.試験条件は,供試体直径φ 120mm ,層厚 H40mm ,
A
A
AA
AA
A
τ
上下せん断箱の隙間 d=0.5mm5),せん断速度 0.8mm/min で,従
来方式の定圧試験は通常通りσL (=σc )が一定(無制御)で,真
反力ローラー
供試体
上せん断箱
下せん断箱
下加圧板
AA
AA
A
AA
上ガイド
ローラー
加
圧
軸
下ガイド
ローラー
加圧軸位置
決めボルト
下垂直
荷重計
の定圧試験はσU (=σc )が一定になるようにσL を制御した.
反力板
上垂直荷重計
初期密度 Dr=25 , 75%
(空中落下法),圧密圧力σc = 1 , 2kgf/cm ,
2
2),3)
実験結果 図−3,4にそれぞれ Dr=25 , 75%における試験
結果を比較した.従来方式のσU は,圧密終了時に下せん断箱内
面の下向きの摩擦力でσL の約 90%となる.図(1)の応力−変位関
ベロフラム
シリンダー
係によると,せん断初期の負のダイレイタンシーで垂直変位∆ H
が収縮する間のσU は従来方式の方が小さく,τ は小さい.その後,
ダイレイタンシーが正に転じて∆ H が膨張に向かうと摩擦力も
図−1 一面せん断試験機の概略
上向きに反転し,σU は大きくなる.この段階でτ が最大となるため,τ f は従来
方式が約 10%大きい.しかし,図(2)の応力比−変位関係に示すように,両者の
垂直応力比σU/σL (垂直応力伝達率を表す)と応力比τ /σU はほとんど一致してお
り,相似的なせん断挙動が生じている.またこの場合の周面摩擦によるσU の変
化割合は±20%程度である(供試体の直径と層厚の比が 3 の場合).図(3)のσU に
よる応力経路には定体積試験による経路も合わせて示したが, 3 種類の試験の
P1 + P2 + W
A
P1:反力(上荷重計No.1)
P2: 〃 (上荷重計No.2)
W :上せん断箱自重
P2
P1
W
σU =
供試体
強度線はほとんど一致している.ただし,図(3)の表中に示すように,通常の(τ f /σL)
で定義した摩擦角φ d は,(τ /σU)max で定義した摩擦角φ d ’より 2∼4°大きい.
以上から,従来方式の定圧試験方法でもせん断面上の垂直応力σU を測定して
(τ /σU)で強度を整理すれば,正しい強度定数を得ることができる.
P σ =P
L
A
図−2 σU,σLの算出方法
Comparison between ordinary and true split box shear tests under constant pressure condition
Akihiko Oshima, Naotoshi Takada and Yoshimasa Sakamoto : Osaka City University
1.5
τ–D
(1) 応力−変位関係
1.5
τ (kgf/cm2 )
τ (kgf/cm2 )
τ –D
∆H – D
0
0
∆ H (mm)
0.5
0.5
1.0
τ–D
4
8
D (mm)
∆H – D
凡例は(2)と同じ
0
-0.5
16
12
0
1.2
4
8
D (mm)
16
1.0
(2) 応力比−変位関係
0.8
0.8
τ/ σU – D
τ/ σ U , σ U/ σL
τ/ σU – D
τ/ σ U , σ U/ σL
12
1.2
(2) 応力比−変位関係
0.6
0.6
0.4
0.4
σU = 1
真の定圧 σU = 2
〃 σL= 1
従来定圧 σL= 2
〃 0.2
0
0
4
8
D (mm)
12
(3) 応力経路
1
8
D (mm)
12
Mark
条件 σU=1 σU=2 σL=1 σL=2
e0 0.699 0.702 0.704 0.705
Df 2.000 2.596 2.046 3.078
τf
0.760 1.473 0.866 1.669
φd
39.8
40.8 40.0 40.9
φd'
36.0
37.2 36.4 37.3
φd = tan-1(τf /σL), φd' = tan-1(τ /σU)max
2
32.0°
4
16
3
τ (kgf/cm2)
τ (kgf/cm2)
2
0
0
16
Mark
条件 σU=1 σU=2 σL=1 σL=2
e0 0.864 0.863 0.867 0.864
Df 4.290 4.924 5.074 5.768
τf 0.665 1.285 0.731 1.406
φd
36.0
34.6 36.2 35.1
φd' 33.6
32.7 33.7 32.9
φd = tan-1(τf /σL), φd' = tan-1(τ /σU)max
σU = 1
真の定圧 σU = 2
〃 σL= 1
従来定圧 σL= 2
〃 0.2
3
35.4°
(3) 応力経路
1
▲は定体積
試験による.
▲,▼は定体積
試験による.
0
0
σU / σL – D
σU / σL – D
1.0
0.5
0.5
凡例は(2)と同じ
0
τ–D
∆ H (mm)
(1) 応力−変位関係
1.0
0
1
σ U (kgf/cm
2)
2
3
0
0
1
σ U (kgf/cm2)
2
3
図−3 豊浦砂 Dr=25%における従来型定圧試験と
図−4 豊浦砂 Dr=75%における従来型定圧試験と
真の定圧試験の比較 (φ 120×H40, d=0.5mm)
真の定圧試験の比較 (φ 120×H40, d=0.5mm)
参考文献
1) 高 田 , 他 : 一 面 せ ん 断 試 験 と 単 純 せ ん 断 試 験 の 比 較 ,直 接 型 せ ん 断 試 験 の 方 法 と 適 用 に 関 す る シ ン ポ ジ ウ
ム , pp.173∼ 180, 1995 . 2) 澁 谷 ,他 :豊 浦 砂 の 一 面 せ ん 断 強 度 に 及 ぼ す 供 試 体 寸 法 と 形 状 の 影 響 , 1)と 同 じ ,
pp.95∼ 102, 1995 . 3) 本 郷 ,他 :一 面 せ ん 断 試 験 機 の 自 動 化 と 適 用 性 , 1)と 同 じ , pp.135∼ 140, 1995 . 4) 谷 :
切 削 加 工 の 分 野 で 使 用 さ れ る ロ ー ド セ ル に つ い て ,生 産 研 究 , 34 巻 6 号 , pp.35∼ 42, 1982 . 5) 大 島 , 他 : 一 面
せ ん 断 定 圧 試 験 に お け る 上 下 せ ん 断 箱 の 隙 間 の 影 響 ,第 31 回 地 盤 工 学 研 究 発 表 会 ( 投 稿 中 ) , 1996 .