一面せん断定圧試験における上下せん断箱の隙間の影響 大阪市立大学工学部 正 大島昭彦 高田直俊 同 学 ○坂本佳理(現東洋建設) まえがき 一面せん断は,せん断初期には上下加圧板から加わるせん断力で供試体が単純せん断型に変形し, 次第に可動・固定箱の前後の境界の影響が強くなり,最後は面でせん断される.最近の研究から,上下せん 断箱の隙間をせん断層の幅(試料の平均粒径の 10∼20 倍)程度開けることが必要で,隙間が小さいとせん断 層の発達が阻害され,過大な強度が得られることが指摘されている 1),2) .しかし,この方法では通常の砂質土 で隙間を 3mm 以上開けることになり,隙間から試料がこぼれ,強度が小さくなるとも考えられる.ここでは, 4 種類の試料を対象に上下せん断箱の隙間が定圧試験に与える影響を調べた結果,隙間は従来通り 0.2∼ 通過質量百分率 (%) 0.5mm でよく,過大な強度にはならないことを報告する. 1 0 0 実験方法 用いた試料は,島根県三隅町で採取した海砂, 8 0 豊浦砂,大阪市大和川で採取した川砂,京都府城陽市で 採取した川砂の 4 種類(それぞれ三隅砂,豊浦砂,大和 砂,京都砂と呼ぶ)で,試料の粒度を図-1 に,物理性 質を表-1 に示した.試験条件は,供試体直径φ 120mm , 層厚 H40mm ,圧密圧力σc=1kgf/cm2 ,上下せん断箱の隙 60 三隅砂 豊浦砂 大和砂 京都砂 40 20 0 0.01 0.1 間 d=0.2, 0.5, 1, 2, 3, 4mm ,各試料とも初期密度 Dr=25% 粒径 (mm) 1 10 図 − 1 試料の粒度 で,三隅砂,豊浦砂では Dr=75%も加えた.三隅砂は含 表−1 試料の物理性質 水比 10%の試料を締固め法で,それ以外は乾燥状態の試料 を空中落下法で所定の密度の供試体を作成した.試験機は せん断面上の垂直応力σU を直接測定する形式である 3). 試料 D max D 50 Fc ρs ρdmax ρdmin U (mm) (mm) (%) c (g/cm3) (g/cm3) (g/cm3) 三隅砂 0.425 0.15 5.0 0 0 0 実験結果 図-2 , 3 にそれぞれ三隅砂の Dr=25 , 75%の応 豊浦砂 0.425 0.19 力−変位関係を示した. Dr=25%では負のダイレイタンシ 大和砂 0.85 ーによって垂直変位∆ H が収縮側に生じるため,下せん断箱 京都砂 2.0 0.30 0.49 1.7 1.3 1.7 2.4 1.60 1.63 1.65 1.71 2.67 2.65 2.67 2.67 1.26 1.36 1.37 1.41 内面の下向きの摩擦力が増加し,σU は単調に減少する. d が大きいほど∆ H が収縮側に大きくなり,τ は減少 する. Dr=75%では初期に∆ H は収縮から膨張に転じるため,摩擦力も上向きに転じてσU が増加する. d が大 きいほど∆ H の膨張傾向が弱まり,せん断の途中からσU が減少し,やはりτ は減少する.三隅砂は細粒分含有 率 5%,含水比 10%で締固めているので,供試体の自立性は高いが,隙間から試料が崩れていると考えられる. 1.0 τ , σU (kgf/cm2) 0.4 隙間d (mm) 0.2 0.5 1.0 0.2 0 0 ∆H – D -0.5 0 4 8 D (mm) 12 1.0 0.8 0.6 2.0 3.0 4.0 ∆ H (mm) τ , σU (kgf/cm2) τ–D 0.6 σU – D 1.2 -1 16 図−2 三隅砂 Dr =25%の応力−変位関係 0.4 τ–D 隙間d (mm) 0.2 0.5 1.0 2.0 3.0 4.0 ∆H – D 0.2 0.5 0 0 1 0 4 8 D (mm) 12 16 ∆ H (mm) σU – D 0.8 図−3 三隅砂 Dr =75%の応力−変位関係 Effect of openi ng between upper and l ower s hear boxes of s pl i t box s hear tes t under cons tant pressure condition, Akihiko Oshima, Naotoshi Takada and Yoshimasa Sakamoto : Osaka City University 1.2 1.2 τ–D τ , σU (kgf/cm2) 0.6 隙間 d (mm) 0.2 0.5 1.0 0.4 0.2 2.0 3.0 0.5 ∆H – D 0 0 0 4 8 D (mm) 0.6 0 4 r = 75% 白塗り:φd = tan-1( τ f /σL) 黒塗り:φd' = tan-1( τ /σU) max 1 2 隙間 (mm) d 3 白塗り:φd = tan-1( τ f /σL) 黒塗り:φd' = tan-1( τ /σU) max r = 25% r = 75% 35 30 0 4 1 2 隙間 (mm) d 3 4 図−7 豊浦砂の摩擦角と隙間の関係 40 40 D r = 25% σ c = 1 kgf/cm2 D r = 25% σ c = 1 kgf/cm2 35 φ d, φ d ' (°) φ d, φ d ' (°) -0.5 16 12 40 図−6 三隅砂の摩擦角と隙間の関係 30 35 30 白塗り:φd = tan-1( τ f /σL) 黒塗り:φd' = tan-1( τ /σU) max 25 0 8 D (mm) 0 図−5 豊浦砂 D r =75%の応力−変位関係 φ d, φ d ' (°) φ d, φ d ' (°) ∆H – D 45 40 25 0 0.5 0 r = 25% 45 2.0 3.0 0.2 図−4 豊浦砂 Dr =25%の応力−変位関係 30 隙間 d (mm) 0.2 0.5 1.0 0.4 -0.5 16 12 50 35 τ–D 0.8 ∆ H (mm) τ , σU (kgf/cm2) 0.8 σU – D 1.0 σU – D ∆ H (mm) 1.0 1 2 隙間 (mm) d 3 図−8 大和砂の摩擦角と隙間の関係 白塗り:φd = tan-1( τ f /σL) 黒塗り:φd' = tan-1( τ /σU) max 4 25 0 1 2 隙間 (mm) d 3 4 図−9 京都砂の摩擦角と隙間の関係 図−4,5にそれぞれ豊浦砂の Dr=25 , 75%の応力−変位関係を示した. Dr=25%でも∆ H は膨張に転じる ため,両者の傾向は図−3と同じである.∆ H とτ ,σU の生じ方がリンクしているため, d が大きくなるほど τ が減少するのは,明らかに隙間から試料がこぼれる影響と考えられる.しかし,図−2∼5ともに d=0.2 , 0.5mm の試験結果はほぼ一致している.これらの傾向は他の試料でも同じであった. 図−6∼9に各試料の摩擦角と隙間の関係を示した.摩擦角は,通常のφ d =tan-1 (τ f /σL)とせん断面上の応力 比で定義したφ d ’=tan-1 (τ /σU)max で示した.φ d ,φ d ’ともに d が大きくなるほど小さくなり,その傾向はφ d の方 が強い. d=0.2 , 0.5mm のφ d ’はほぼ一致し,特に過大な値には思えない.φ d は,ダイレイタンシー負の三隅 砂 Dr=25%では約 7°過小に,正の Dr=75%では約 7°過大に,他の乾燥試料では 2∼4°過大になっている. 以上の結果から,隙間は従来通り 0.2∼0.5mm でよく,またその隙間で過大な強度にはならないといえる. 参考文献 1) 澁谷:土の一面せん断試験と結果の解釈における最近の進展, 直接型せん断試験の方法と適用に関するシンポジウム, pp.67∼86, 1995 . 2) 中丸,他:種々の砂の一面せん断試験機における強度・変形特性, 1)と同じ, pp.111∼118, 1995 . 3) 大島,他:一面せん断従来型定 圧試験と真の定圧試験の比較,第 31 回地盤工学研究発表会(投稿中), 1996 .
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