一面せん断定圧試験における供試体寸法と許容粒径の

土木学会第 52 回年次学術講演会(投稿中), 1997.9
一面せん断定圧試験における供試体寸法と許容粒径の関係 (第 2 報)
和歌山県土木部 正 ○深見知亨
大阪市立大学工学部 正 大島昭彦 高田直俊
同 大学院 学 住 武人
まえがき 粗粒土の試験においては,試料の粒径に対して必要な供試体の最小寸法,あるいは供試体寸法に対し
て許容できる試料の粒径を明らかにしておく必要がある.特に一面せん断試験の供試体は剛なせん断箱と加圧板で
囲まれ,変形の拘束が強いので,供試体寸法に対する許容粒径が小さいことが予想される.この問題に対して,前
報 1)で最大粒径が異なる細粒分を含まない粒径のそろった砂を対象にした試験から,供試体直径は試料の最大粒径
の 70 倍程度必要であることを報告したが,粒径分布の広い試料では上記条件が緩くなる可能性がある.ここでは,
最大粒径が同じで,粒度が異なる 3 種類のまさ土を対象に, 4 通りの相似な供試体寸法で得た定圧せん断特性から
供試体寸法と許容粒径の関係を調べた結果を報告する.
100
で採取したまさ土(予めロサンゼルス試験機で脆弱な粒子を
破砕させた),およびそれらを乾燥質量比 1 : 1 で混合した
もの(それぞれ生駒まさ土,猪名川まさ土,混合まさ土と呼
ぶ)である.試料の粒度を図−1に,物理性質を表−1に示
した.最大粒径はいずれも 2mm で,粒度が異なる.
用いた試験機は,上箱可動,下面垂直力載荷で,上面の反
力板側でせん断面上の垂直応力σU を直接測定できるものであ
通過質量百分率 (%)
実験方法 用いた試料は,奈良県生駒市と兵庫県猪名川町
80
生駒まさ土
混合まさ土
猪名川まさ土
60
40
20
0
0.001
0.01
0.1
粒径 (mm)
1
2
図−1 試料の粒度
る2).同じ試験機でせん断箱を取り替えることによって供試体
表−1 試料の物理性質
の[直径φ (mm),層厚 H (mm)]を[60 , 20],[90 , 30],
ρs
ρdmin ρdmax wopt
Dmax D 50
Fc
Uc
D /D
3
(mm) (mm) max 50 (%)
(g/cm ) (g/cm3 ) (g/cm3 ) (%)
もφ / H=3 の相似形である.それぞれの供試体の[せ 生駒まさ土
23 136 2.67 1.39 1.99
2.0 0.39
5.2
10
38 138 2.67 1.30 1.82
2.0 0.16 12.5
ん断変位速度(mm/min),最終変位(mm)] は,[0.4 , 混合 〃
15
猪名川 〃 2.0 0.06 33.3
55 79 2.67 1.24 1.74
19
[120 , 40],[150 , 50] の 4 通りに変えた.いずれ
試料
8],[0.6 , 12],[0.8 , 16],[1.0 , 20]で,[せん断変
位/供試体層厚] で定義したせん断ひずみ速度とせん断ひずみが,いずれも 2%/min , 40%になるようにした.供
試体はいずれも最適含水比 w opt に調整した試料を締固め法によって相対密度 Dr =75%に作成した.圧密応力σc =0.5 ,
1 , 2kgf/cm2 ,上下せん断箱の隙間 0.5mm3)で,加圧板側の垂直応力σL 一定の従来型定圧試験を行った.
実験結果 図−2(1)∼(3)にそれぞれ生駒,混合,猪名川まさ土の σc =1kgf/cm2 の供試体寸法による比較例を上述
したせん断ひずみγ とせん断応力比τ /σU ,垂直変位∆ H の関係で示した.いずれも供試体直径φ が小さいものほどτ /σU
は大きく,∆ H の膨張量が大きい傾向が見られるが,図(1)の生駒まさ土と図(2)の混合まさ土では,φ 150 とφ 120 は
ほぼ一致しており,相似なせん断挙動が見られる.図(3)の猪名川まさ土では,φ 150 ,φ 120 ,φ 90 はほぼ一致して
いる(この試料ではφ 150 の∆ H はやや大きい).これらの傾向はσc =0.5 , 2kgf/cm2 においても同じであった.
図−3にそれぞれ生駒,混合,猪名川まさ土の供試体寸法ごとの強度線と強度定数を示した.強度は(τ /σU )max で
定義している.細粒分が多い試料であるため,粘着力 cd の項が現れる.図(1)の生駒まさ土では,φ 150 に比べてφ 120
のφ d はやや大きいが,その差は 1°以内である.一方,φ 90 ,φ 60 のφ d は(φ 60 では cd も)明らかに大きい.図(2)
の混合まさ土では,φ 150 とφ 120 の cd ,φ d はほぼ一致し,φ 90 も cd が少し大きいもののφ d はほぼ一致している.そ
れに比べて,φ 60 のφ d は明らかに大きい.図(3)の猪名川まさ土では,やはりφ 150 とφ 120 の cd ,φ d はほぼ一致して
いる.それに比べてφ 90 ,φ 60 のφ d はやや大きいが,その差は 1°以内である.
以上から,生駒,混合,猪名川まさ土の供試体直径の許容限界は,それぞれφ 120 ,φ 90 ,φ 60 以上と判断できる.
Key words : 一 面 せ ん 断 試 験 , 許 容 粒 径 , 供 試 体 寸 法 , 強 度 定 数 , 砂 質 土
〒 558 大 阪 市 住 吉 区 杉 本 3-3-138
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FAX 06-605-2725
2.5
1.2
τ / σU
1.0
2
τ / σU
φ6 0×H20
φ9 0×H30
φ120×H40
φ150×H50
0.6
∆H
1.5
1
0.2
0.5
∆H (mm)
0.4
0
20
γ (%)
30
(1) 生駒まさ土
40
0
2
∆H
τ / σU
τ (kgf/cm2)
∆H (mm)
1
(2) 混合まさ土
0.5
○
□
△
▽
60
20
0.21
37.1
90
30
0.23
34.6
120
40
0.18
34.8
150
50
0.17
35.0
20
γ (%)
30
40
τ (kgf/cm2)
1
(3) 猪名川まさ土
∆H
0.2
Mark
φ
H
cd
φd
○
60
20
0.30
33.9
20
γ (%)
2.5
□
△
2
2.5
▽
90 120 150
30 40 50
0.28 0.28 0.28
33.5 32.6 32.9
0.5
1
0.5
0
0
10
1
1.5
σU (kgf/cm2)
1.5
∆H (mm)
τ / σU
0.5
2.5
2
φ6 0×H20
φ9 0×H30
φ120×H40
φ150×H50
0.4
2
(2) 混合まさ土
0.8
0.6
2.5
0.5
τ / σU
1.0
2
1
0
0
1.2
0
Mark
φ
H
cd
φd
0
0
10
1
1.5
σU (kgf/cm2)
1.5
φ6 0×H20
φ9 0×H30
φ120×H40
φ150×H50
0.2
0
0.5
2.5
0.8
0.4
▽
150
50
0.21
35.6
0.5
τ / σU
0.6
△
120
40
0.20
36.5
1
0
1.2
1.0
□
90
30
0.21
37.9
0
(1) 生駒まさ土
10
○
60
20
0.33
38.9
1.5
τ (kgf/cm2)
0.8
0
Mark
φ
H
cd
φd
30
40
(3) 猪名川まさ土
0
0
0.5
1
1.5
σU (kgf/cm )
2
図−2 せん断応力比と垂直変位の比較 (σ c =1kgf/cm ) 図−3 強度線と強度定数の比較
2
前報1)で報告した供試体直径は試料の最大粒径の 70 倍程度必要という条件から,今回対象とした最大粒径 2mm の
試料では供試体直径は 140mm 以上必要となるが,粒度の良い試料ではこの条件が緩くなる.粒度の影響をどう取
り入れるかは難しいが(平均粒径や均等係数のみでは無理),表-1 に示した最大粒径と平均粒径の比 Dmax /D50 で粒
度を表現し,供試体の許容粒径を供試体直径と試料の最大粒径の比 φ /Dmax で定義すれば,この一連の試験では,
Dmax /D50 が 5 以下でφ /Dmax ≧70 , 5∼10 でφ /Dmax ≧60 , 10∼30 でφ /Dmax ≧45 , 30 以上でφ /Dmax ≧30 と結論できる.
参考文献
1) 大 島 ,他 :砂 の 一 面 せ ん 断 定 圧 試 験 に お け る 供 試 体 寸 法 と 許 容 粒 径 の 関 係 ,第 51 回 土 木 学 会 , III−A16 , 1996 .
2) 大 島 ,他:一 面 せ ん 断 従 来 型 定 圧 試 験 と 真 の 定 圧 試 験 の 比 較 ,第 31 回 地 盤 工 学 研 究 発 表 会 , pp.665~666 , 1996 .
3) 大 島 ,他:一 面 せ ん 断 定 圧 試 験 に お け る 上 下 せ ん 断 箱 の 影 響 ,第 31 回 地 盤 工 学 研 究 発 表 会 , pp.667~668 , 1996 .