粘土の定体積一面,単純せん断試験による強度・変形

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第40回地盤工学研究発表会
(函 館) 2 0 0 5 年 7 月
D - 06
粘土の定体積一面,単純せん断試験による強度・変形特性の比較
一面せん断試験,単純せん断試験,定体積せん断
大阪市立大学大学院 国 大島昭彦
大阪市立大学工学部 学 ○高橋晋一郎 (現東亜建設)
1. まえがき
一面せん断試験は,一次 元圧密・平面ひずみ条 件を自動的に満足し, せん断面上の応力を直 接測定できるため,実 用
的に優れた試験法である 。しかし,この試験で はせん断箱端部に変形が 集中して端部から変形 が進む,いわゆる進行 性
破壊の形態を取るため, 供試体内のせん断変形 はレンズ状に生じて不均 一となる。この不均一 な変形が強度特性に与 え
る影響の不明確さ,それによって変形特性を表すためのせん断ひずみが定義できないという問題が残っている。
この問題に対して,砂質土の定圧,定体積一面せん断試験では,供試体の直径φ と高さ H の比φ /H=3 の条件で,レンズ
状の変形領域の最大高さは H/ 3 程度となり,その最大高さでせん断ひずみを定義して,均一なせん断変形が期待できる
単純せん断試験と比較す ると,定圧試験で応力 −ひずみ関係が,定体積 試験で応力比−ひずみ 関係がほぼ一致するこ と
を既に報告した 1)~3) 。本報では,粘土の定体積条件で一面,単純せん断試験を行い,両者の比較から,一面の不均一な変
形が強度特性に与える影響および変形領域を考慮したせん断ひずみの定義の妥当性を検討した結果を報告する。
2. 実験方法
,OK84
試料は,大阪湾粘土と市販のカオリンを混ぜて p 0 =1kgf/cm2 で予圧密した再構成粘土 OK66(wL=66%,wp =30%)
(wL=84%, wp =30%) およ び大 阪市 此花 区でブ ロッ クサ ンプ リン グし た不撹 乱沖 積粘 土( wL=74%, wp =33%, p c=1.5
kgf/cm2 )を用いた。試験は供試体寸法φ 120×H40mm の多段式繰返し単純せん断試験機を用い4) ,せん断箱部を取り替え
て単調載荷の一面,単純せん断試験を定 体積条件 (自動制御)で行った。なお, 一面では反力板側垂直応力σU を,単純 で
は加圧板側垂直応力σL とσU の平均応力σM を有効垂直応力σとしている。
ガイド板 きしめん
せん断後の供試体の内部変形を測定するため,図-1 に示すように予め供
供試体
試体内に「きしめん」を設置し,試験後に中央部を鉛直に切り出し,その
16
H40
断面を写真撮影して変形状態を捉えた。
3. 定体積一面,単純せん断試験の比較
φ120mm
<断面図>
以下では,代表例として不撹乱沖積粘土の試験結果を示す。
図-2 にせん断応力τ −せん断変位δ 関係,垂直応力σ −δ 関係を示す。τ −δ
図-1 供試体変形マーカーの設置方法
1
5
の方がτ の立ち上がり が急で,τ のピーク 値
は大きく,その時の変位は小さい。さらに,
0.5
1.0
1.5
2.0
3.0
白抜き:τ−δ
2
黒塗り:σ−δ σ c(kgf/cm )
凡例は(2)と同じ
0.8
一面はピーク後のτ の減少が大きく,ピーク
2
せん 断 変形 の 違い に よ るも の と考 え ら れ
る。σ−δ 関係は,正規 圧密領域のせん断 初
期にお ける負 のダイ レイタ ンシー による σ
0.6
3
0.4
2
0.2
1
τ (kgf/cm )
位置が明確に 現れている。 これは後述す る
4
σ (kgf/cm 2)
関係は,過圧 密,正規圧密 領域ともに一 面
<上面図>
の減少は単純 の方が早い。 過圧密領域の 正
のダイ レイタ ンシー による σ の増 加傾向 は
一面の方が強く現れている。
図-3 に応力経路を示す。正規圧密領域で
0
(1) 一面
0
は,初期の立 ち上がりの勾 配は,単純の 方
レイ タン シー によ る
2
σ c(kgf/cm2)
0.5
1.0
1.5
2.0
3.0
全応 力に よる 強度 定
数φ cu は一面の方が 大
きい が, 有効 応力 に
よる φ 1 ',φ 2 'は 両者 で
ほぼ 一致 して いる 。
なお ,p c は圧 密試 験
1.5
τ (kgf/cm 2)
が大 きい とい える 。
1
(2) 単純
8
δ (mm)
12
16 0
4
8
δ (mm)
0
16
12
図-2 応力−変位関係(不撹乱沖積粘土,pc=1.5 kgf/cm2 )
が緩やかであ ることから, やはり負のダ イ
σの 減 少 は 単 純 の 方
4
(2) 単純
σ c(kgf/cm2)
0.5
1.0
1.5
2.0
3.0
φ2'=29.0°
φ1'=22.8°
(1) 一面
φ2'=29.2°
φ1'=22.1°
φcu=16.9°
φcu=14.9°
0.5 c =0.30
cu
0
0
0.5
c cu=0.30
1
1.5
2
σ (kgf/cm2)
2.5
3
3.5 0
0.5
1
1.5
2
σ (kgf/cm2)
2.5
3
3.5
図-3 応力経路(不撹乱沖積粘土,pc=1.5 kgf/cm2 )
の値と一致した。
Comparison of strength and deformation characteristics of clay between box and simple shear tests under constant volume
condition, Oshima Akihiko and Takahashi Shinichiro (Osaka City University)
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AAAAA
AAAA
AAA
A
AAAA
AAAA
AAA
AAAA
AAAA
AA
図-4 に代表例として,σc=1.5kgf/cm2 における一
面,単純の供試体中央部の変形写真とそのトレース
図を示す。一面では,砂質土の定圧,定体積試験と
(1) 一面
同様に,変形領域はレンズ状に生じ,その最大高さ
は供試体高さの 1/ 3 程度となっている。単純では,
供試体全体が変形しているが,左上から右下にかけ
て斜めのすべり面が生じている。
(2) 単純
以上の傾向は,他の試料でも同じであった。
図-4 供試体中央部の変形(不撹乱沖積粘土, σc=1.5kgf/cm2 )
4. せん断ひずみの定義と応力−ひずみ関係の比較
図-4 の一面の変形領域から,供試体高さ H の 1/3 のみがせん断されていると考えられるので,この変形領域を考慮し
てせん断ひずみγ (%)を以下のように定義する(同様に単純の場合の定義式も示す)
。
3δ
δ
γ=
(一面) (1) γ = (単純) (2)
H
H
図-5 に上式を用いて求めた各試料の一面,単純のτ −γ 関係の比較を示す。図-2 の応力−変位関係に比べて両者の整合
性がよくなる。また,τ −γ 曲線の初期勾配を表すせん断剛性率G は両者でほぼ一致していることがわかる。ただし,その
後は一面の方がτ は大きくなる。先のφ cu を含めて一面の方がせん断強度は大きいが,一面の強度が過大というわけではな
く,せん断モードの違いによる有効応力変化が両者で異なるためと考えている。
定体積条件ではダイレイタンシーが有効応力の変化で現れることと変形領域の違いを考慮して,応力比τ / σ −γ 関係で整
理した結果を図-6 に示す。過圧密領域でやや差があるものの,一面,単純の整合性がさらによくなる。
1
1
1
0.8
0.6
0.6
0.4
0.6
0.4
0.2
0.4
0.2
0.2
(1) OK66
0
0
0.8
τ (kgf/cm 2)
0.8
凡例は(2)と同じ
0.5
黒塗り:一面
1.0
2
1.5 σc(kgf/cm ) 白抜き:単純
2.0
3.0
τ (kgf/cm 2)
τ (kgf/cm 2)
凡例は(2)と同じ
10
20
γ (%)
(3) 不撹乱沖積粘土
(2) OK84
30
0
0
40
10
20
γ (%)
30
0
0
40
10
20
γ (%)
30
40
図-5 応力−ひずみ関係
0.8
0.8
σ c(kgf/cm2)
0.5
1.0
1.5
2.0
3.0
凡例は(2)と同じ
0.6
τ /σ
0.4
0.4
0.2
0.4
0.2
0.2
(1) OK66
0
0
凡例は(2)と同じ
τ /σ
0.6
τ /σ
0.6
0.8
黒塗り:一面
白抜き:単純
10
20
γ (%)
(2) OK84
30
40
0
0
10
20
γ (%)
(3) 不撹乱沖積粘土
30
40
0
0
10
20
γ (%)
30
40
図-6 応力比−ひずみ関係
5. まとめ
砂質土の定圧,定体積試 験と同様に,粘土の定 体積試験においても一 面の変形領域はレンズ 状に生じ,その最大高 さ
は供試体高さの 1/ 3 程度となり,その変形領域を考慮した式(1)によるせん断ひずみの定義方法は妥当であるといえる。
ただし,せん断モードの違いによる有効応力変化が異なるため,一面と単純のせん断強度は一致しない。
参考文献 1)大島,
2)大島,
3)大島,
4)大島,
他:定圧一面,単純せん断試験の供試体変形と強度特性の比較, 第 34 回地盤工学研究発表会, pp.419∼420, 1999.
他:砂質土の定圧条件における一面,単純せん断試験の強度特性の比較, 土木学会第 57 回年講, III-295, 2002.
他:砂の定体積一面,単純せん断試験による強度・変形特性の比較, 土木学会第 58 回年講, III-248, 2003.
他:繰返し定体積単純せん断試験機の試作, 第 35 回地盤工学研究発表会, No.386, 2000.
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