Kinect を用いたペナルティーキックのキック方向予測 Kick Direction

Kinect を用いたペナルティーキックのキック方向予測
Kick Direction Prediction of Penalty Kick by using Kinect
感性情報学講座 0312011125 林慶亮
指導教員:小嶋和徳 石亀昌明 伊藤慶明
1. はじめに
1930 年から 2010 年までの FIFA(国際サッカ
ー連盟)ワールドカップ全試合のペナルティー
キック(PK)の回数は 204 回 1)である.そのうち
ゴール成功は 144 回(70.6%),
ゴール失敗は 60
回(29.4%)となっている.失敗 60 回のうちゴ
ールキーパー(GK)がシュートをセーブしたの
は 38 回(18.6%)のみとセーブする確率は低い.
試合時間内で勝敗が決まらない場合,PK 戦に
よって勝敗を決めるため,PK で GK がシュート
を阻止することは非常に重要である.そこで,
本研究では Kinect より取得したシュート動作
の骨格点データから左右蹴り分けの自動識別
を行い,キック方向を予測するための動作を分
析する.
2. 研究概要
本研究では,Kinect V2 を使用して PK のキ
ッカーの骨格点データ(Body データ)を取得し,
SVM によって左右の蹴り分けを学習し自動識
別を行う.
2.1. 取得データ
データ取得対象者は,サッカー経験者 24 名
(うちキーパー3 名)で,左右のサイドを 1 回ず
つ狙った PK を蹴ってもらいデータを取得した.
2.2. データ取得環境
ゴールの大きさや PK の位置は実際の日本サ
ッカー協会の規則 2)に則った.
図 1 のように Kinect V2 をボールから 1.7 メ
ートル離れた位置に設置し,Kinect V2 の認識
範囲内でキッカーには助走を取ってもらう.
2.3. データ取得条件
実戦に近い PK のデータを取るため,以下の
条件で,対戦形式でデータ取得を行った.
A) 1 チーム 8 名の 3 チームに分かれてもらい
総当たりで対戦する.
B) 1 人 1 回ずつ両チーム交互にキックを行う.
図 1 データ取得環境
C) 通常の PK 戦とは異なり,両チームが 8 回
のキックを完了する前に勝敗が決定した
場合でも,終了せずに全 16 回のキックす
べて行う.
D) 1 チーム 2 試合するため一人 2 回キックす
るが,2 回目のキックの方向は 1 回目のキ
ックと異なる方向とした(持ち球 右:1 回
左:1 回).1 回目はどちらの方向に蹴って
もよい.ただし,このルールは GK には知
らせず,GK がキックする場合は左右自由
に蹴ってもらう.
E) GK は自分の守備順以外の時にキッカーが
キックするのを見てはいけない.
F) 実戦に近い真剣さを得るために優勝チー
ムには賞品,最下位は罰ゲームとした.
3. 実験
前節で述べた条件で取得したデータを用い,
SVM による機械学習を行い,PK において左右の
蹴り分けの特徴の違いがみられるか実験を行
った.SVM には libSVM を利用した.
3.1. 学習・評価方法
取得したデータのうち右利きのキックかつ
正確にデータが取れていると判断されるもの
20 人分のデータ(右 20 回,左 20 回)を実験に
使用した.
15 人の蹴った 30 回分のデータを学習用に使
用し,残りの 5 人の蹴った 10 回分のデータを
評価用に使用した.
3.2. 特徴量
ボールが蹴られる前の GK が取得可能な情報
を利用する.本研究では,足を引いた瞬間と蹴
る瞬間の 2 フレームのデータを尻の骨格点を
中心とした相対値に変換し,その相対値を最大
値が 1,最小値が 0 になるように正規化して,
次の特徴量を抽出した.
① 2 フレームの各骨格点の差のユークリッ
ド距離(20 個)
② 2 フレームの各骨格点の差のベクトルの
向き(40 個)
ッド距離とベクトルの向きをそれぞれ太線と
矢印で示したイメージ図である.
ベクトルの向きは式[1]を用いた.
(𝑥1 − 𝑥2 ), (𝑦1 − 𝑦2 )
[1]
3.3. 実験結果
今回データ取得の際に GK のシュートコース
の予測のデータも取得していたが,PK 全 50 回
のうちシュート方向に飛び込めていたのは 25
回(50%)となっていた.一方 libSVM による判
別を行った結果,表 1 のような結果が得られ
た.表 1 の背景が灰色のものが正解した結果で
ある.判別の正解率としてはどちらの特徴量も
70%となった.本論文では GK のシュートコー
ス予測の精度向上につなげるため,特徴点を絞
った実験を行う.
表 1 実験結果
正解方向
特徴量①結果 特徴量②結果
左
左
左
左
左
右
右
右
右
右
左
左
右
左
右
右
右
右
右
左
左
左
右
右
右
右
右
右
右
右
4. まとめ
図2
2 フレーム間のユークリッド距離
本研究ではサッカーの PK におけるシュート
動作の骨格点データから左右蹴り分けを機械
学習によって判別し,結果として 2 つの特徴量
とも正解率 70%と,GK による予測よりも高い
推定が可能となった.今後は,特徴点を絞り込
み GK のシュート予測につなげてゆく.
参考文献
BBC iWonder What makes the perfect
World Cup shootout penalty?
http://bbc.co.uk/guides/zgg334j
(2014/12/16 閲覧)
2) サッカー競技規則-日本サッカー協会
http://www.jfa.or.jp/match/rules/pdf/la
w_soccer_all_11.pdf
(2014/12/16 閲覧)
1)
図 3 2 フレーム間のベクトルの距離
図 2,図 3 は足を引いた瞬間と蹴る瞬間の 2
フレームの骨格点ごとの位置の差のユークリ