Kinectを用いたPC操作インターフェースの作成 電気電子工学科

Kinectを用いたPC操作インターフェースの作成
電気電子工学科 T213019 小川 裕貴
白井研究室
概要
るほどタイムラグが大きくなることがわかった。
現在、Kinect をはじめとするモーションキャプチ この結果を踏まえて、次に手と Kinect との距離を
ャデバイスが医療現場や子供の教育現場など様々 50cm に固定した後に、手の動きの速さを変えてタ
な場面で利用されている。このような現状を鑑み、イムラグを測定した。その結果を図 1 下に示す。こ
れから、手の動きの速さが速い程タイムラグの生
本研究はこの Kinectの有意義な利用法を考えるもの
じる時間が大きくなることがわかった。なおグラ
である。具体的には、体が不自由な人、例えば満
フは、それぞれの条件で 5 回測定した結果の平均値
足にマウスが握れない人を対象にして、ジェスチ
をプロットしたものである。
ャー認識により PC 操作、特にマウス操作、クリッ
ク動作を可能にするツールを実現する。
1.
研究内容
Kinect とはモーションキャプチャデバイスであ
り、人の位置や動き、声、顔の認識が可能である。
Kinect のジェスチャー認識により PC 操作、特にマ
ウス操作、クリック動作を可能にするツールを作
成する。そのアプリケーションの開発環境には
Microsoft Studio 2013 を、プログラミング言語は C#、
ライブラリは Kinect for Windows SDK を使用した。
Kinect による認識対象の PC 操作と、それに対応
するジェスチャーは、以下を考えた:
図 1. 条件別タイムラグの測定結果
 マウスのポインタ操作。これには「手の平を広
げた状態での移動」で行う。
Word を対象として、ジ
 マウスのクリック動作(左ボタンのみ)。これ
ェスチャーにより文字入
には「手の平をカメラに近づける動作」で行う。
以下に、Kinect を用いたマウス操作の実現のため 力方法として、PC 下部の
タスクバーにスクリーン
のアルゴリズムの概略を示す:
キーボードを配置し、い
(1) Kinect の接続確認
つでも呼び出せるように
(2) 人の存在を確認
した。
(3) 人の骨格を認識
図 2. Word に文字入力している画像
(4) 手の位置と手が開いた状態であることの認識
(5) 手の位置の座標を操作対象とする PC の画面上
3. 考察
の座標に対応付け
前節で述べた実験から、Kinect と手との距離は
(6) 手の移動を PC 画面上のマウスの移動に対応付け
50cm
とし、手を 1cm/s~2cm/s 程度で動かせば、タ
(7) 手をカメラに近づけたら、クリック動作
イムラグを気にすることなく操作できることが明
らかになった。ただし未解決の問題もある。例え
2. 結果
前節で述べたアルゴリズムに従いプログラムを作 ば複数の人物が検出された場合に、特定の人の動
成した。これはジェスチャーを認識し、マウスの 作だけを認識できるような工夫が必要である。ま
ポインタを動かし、クリックが可能なものであっ た、手の動きが速くなった時に生じるラグは、そ
た。実際に CPU が CORE i7, 内臓メモリは 8GB, の動きを PC 画面上の座標に変換するための計算速
Windows10 OS のノートブック上で動く Microsoft 度が遅いため、また、Kinect と手との距離が広がり
社製の文書作成プログラム Word を対象として、ジ すぎるときに生じるラグは、人の骨格の認識の処
ェスチャーにより文字入力実験を行った。しかし、理に時間が掛かるからであり、これらは速い PC で
プログラムの実行において、操作において違和感 あれば解消できる可能性がある。
があった。それは、手の移動とマウス移動の反応
までのタイムラグによるものであることが明らか 参考文献
[1] 西林孝、小野憲史 (2011) 「キネクトハッカーズ
になった。
マニュアル」ラトルズ
そこで、マウスの移動において、手の動きとコ
[2]
中村薫、田中和希、宮城英人 (2012) 「KINECT
ンピュータ画面上のマウスの動きの関係を、Kinect
for
Windows SDK プログラミング C#編」秀和シ
と手の距離を変えて調べた(図 1 上)。測定結果より、
ステム
Kinect との距離が 50cm の時はほぼタイムラグが生
じないこと、また一般に手と Kinect との距離が広が