水資源を巡る課題とダムの再開発

総合建設コンサルタント
NTCコンサルタンツ株式会社
水資源を巡る課題とダムの再開発
水利用に関する課題
◆わが国の年間の降水量は約 6,500(億 m³/年)ですが、そのうち約 35%は蒸発散し、残りの約
4,200(億 m³/年)が利用可能な水の量です。実際に使われている水の量は 840 (億 m³/年)で、その
約 3 分の 2 を占める 550(億 m3/年)が農業用水となっています。
※平成 19 年度版「日本の水資源」
:国土交通省より
◆日本の食料自給率は 40%未満であり、大量の水を
使って作られる農産物を海外からの輸入に頼っ
ています。この輸入量は仮想水(バーチャルウォ
ーター)と呼ばれ、630 (億 m³/年)にもおよぶ試
算結果※もあります。
※沖大幹助教授
東京大学生産技術研究所
◆水資源(農業用水)の効率的な利用や開発は、食
料の安全保障の観点からも緊急性の高い課題で
あり、水資源の効率的運用を目的としたダム(た
め池も含む)の整備は、極めて重要であるものと
考えます。
◆気候変動(地球温暖化)により、水田の蒸発散量
が増大し、総水使用量の 2/3 を占める農業用水の
不足問題は深刻化することが予測されます。
農林水産省
「第三回地球温暖化・森林吸収源対策推進本部資料」
防災に関する課題
◆気候変動がダム施設の安全性に大きな影響を与
えています。例えば、「気温の上昇」→「降雨強
度の増加」→「洪水量増加」→「ダム,ため池の
洪水吐(余水吐)の能力不足」というフローが成
立するため、防災上の観点から、施設改修の必要
性は高まっています。
◆建設後の経過年数が増加する施設が増えており、
老朽化などにより事故発生の潜在的なリスクが
増大しています。
S30 年建設のダム:福島県
余水吐越流部の劣化状況
今後の展望
◆近年の農業用ダムは、良好な基礎地盤を有するダムサイトが減少し、変形性、透水性等に対し特
別な基礎処理が必要とされるものや、築堤材料に高度な技術的工夫が必要となるケースが増えつ
つあります。そのため建設コストは、飛躍的に増大する傾向を示しています。
◆築造から 20 年以上が経過した農業用ダム(「長期供用ダム」という)の機能維持管理技術や再開
発技術は、社会資本整備にかかわる重要かつ高度な技術として注目されています。
◆弊社では、農業用ダムの調査・設計・施工、管理および耐震性に関する技術課題に対して、数多
くの業務実績を蓄積する中でダム技術の高度化に努めています。
総合建設コンサルタント
NTCコンサルタンツ株式会社
ダム(ため池)の再開発に関する弊社実績
【フィルダム】
フィルダムの再開発としては、①堤体の嵩上げ、貯水池の掘削による貯水容量の増大、②貯水池
の運用変更による貯水容量の再配分、③洪水吐の規模拡大等による安全度の向上、④既設堤体及び
貯水池の機能の回復あるいは改善等があります。
事例
堤体嵩上げの総合的コンサルティング(岩手県)
■1954 年より供用している山王海ダムの嵩上げに対し、
「調査・計画」
,
「設計・施工計画」、
「ダム管理」までを実
施しました。
■嵩上げ工法は、効率的に容量を増大できること(総貯水容量 9,594 千 m3→38,400 千 m3)、新たな補償問題・環境
面への影響が少ないこと等の利点を有する一方で、既設ダムの安全性の評価、既設ダムを供用しながら施工する
場合の転流の方法等、解決すべき課題が多くありました。
○2001 年完成
○堤高 H=61.5m
○嵩上げ高 24.5m
○中心遮水ゾーン型フィルダム
【コンクリートダム】
近年、コンクリートダムにおいてもフィルダムと同様に再開発が行われる事例が増えてきていま
す。堤体の嵩上げでは、①既設ダムの安全性評価、②新旧コンクリートの接合や基礎地盤の改良方
法、③施工期間中の貯水池運用計画とダムの安定性等についての課題があります。
事例
老朽化ダム全面改修の総合的コンサルティング(滋賀県)
■1951 年より供用している野洲川ダムの全面改修に対し、
「調査・計画」
,
「設計・施工計画」
、
「ダム管理」までを
実施しています。
■老朽化が進み、洪水時の放流能力が不足するため、全面改修を実施。洪水吐を撤去して放流能力の大きい新しい
洪水吐を設置、堤体下流面を補修しています。
○施工中
○堤高 H=54.4m
○嵩上げ高 1.7m
○重力式コンクリートダム
お問い合わせ
NTC コンサルタンツ株式会社
担当:水土事業部 技術部
TEL:052-261-4035 FAX:052-261-2299