5年 整数と小数 よい素材で子どもをひきつける 滋賀県・草津市立老上小学校 1.はじめに よい素材を提示するだけで,子どもたちが動き 伊藤 真治 301.245-300=1.245 300-298.765=1.245 (正しい答えは 1.235) 出すことがある。そのような素晴らしい機会はめ ここでわざとひき算の答えを 1.245 と間違えて ったにないが,新年度早々,子どもに好評であっ 書いた。「先生,違う」と大きな声があがった。 た授業を少し紹介したい。 正しい答えを確認すると,結局,298.765 が 300 に近いことがわかるが,その結果に子どもたちの 2.授業の様子 5年生,整数と小数の単元である。 本時は 0 から 9 までの数字を使って,下の6つ の□に数字を入れて,指示通りの小数を構成する ことが課題である。 □□□.□□□ (同じ数字は一度しか使え 顔が輝いていた。 しかし,授業はまだ続く。次に,④「500 に最 も近い数を作りましょう」を出す。 子どもたちのノートを見て回ると,498.765 と 書かれているのが多い。 300 に近い数をつくる時に,298.765 が正解だっ ないという約束。) 最初の問題,①「一番大きな数を作りましょう」 たので,このことに影響されて,498.765 と書く を出す。当然答えは,987.654 で,難しくはない。 と書いて比べようとしていた。 何人かの子どもたちは,「大きな数から並べれば いいんだ」などと,得意げであった。 のである。数人の慎重な子どもたちは,501.234 この二つの数を並べて書いて, 次に,②「一番小さな数を作りましょう」を出 498.765 501.234 「これはどちらが近いのかな,ひき算をしてみよ す。123.450 とか 123.045 など,間違う子どももい う」と計算させる。不思議なことに,今度は 501.234 た。ただ大きい位の二つの数字が 1 と 0 になるこ の方が近いことがわかる。たった,0.001 の違い とに気づけば,残りの数は小さい順にならべれば である。どうして,こうなるのか不思議そうな顔 よい。「最初の数は 0 にならないから 1 になる。 をしている子が何人かいた。 そして,その次の数が 0 になる」などと,子ども は説明した。 さて,これからが本題である。ここで③「300 に最も近い数を作りましょう」と,とっておきの 問題を出す。数分考えさせた後,何人かの子ども ここまで授業が進んだら,調べたいことが生ま れている。それは,「400 に近い数はどうなるの か」ということを調べてみたいのである。 400 に近い数の場合は,候補は次の二つ, に黒板に答えを書かせてみる。すると,たいてい 398.765 401.235 どちらもひき算をすると,同じ 1.235 の差となる。 次の二つの答えが出てくる。 「では,400 に近い数も調べよう」と追究させる。 301.245 298.765 298.765 と書く子どもは少ないが,3 を使わない 一部の子どもたちは 400 に近い数を調べ,どちら も同じ差となることに感動したのであった。 で,300 に近い数を構成するのだから,それだけ で素晴らしい。 「この二つの数のうち,300 に近いのはどちら ですか」と問いかける。 3.おわりに この素材の魅力は,正しい答えが追究しないと 出てこないことであり,条件によって答えが変化 多くの子どもは,見かけにだまされて,301.245 することである。こういう素材を見つけて共有し を選ぶ。「では,どうやって調べるの?」と問え ていくことで,魅力的な算数科の授業が展開され ば,「ひき算」と声が上がる。 ていくだろう。 これからも研究を継続したい。
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