インフルエンザワクチン接種Q&A 2015/2016シーズン用 2015年10月01日改訂 湘南かまくらクリニック 〒247-0066 鎌倉市山崎1202-1 email: [email protected] 公式ウェブサイト: http://www.sk-cl.jp/skcl/ TEL: 0467-43-1717 FAX: 0467-45-9777 目次 Q: インフルエンザワクチン接種年齢 Q: インフルエンザワクチン接種方法 Q: インフルエンザワクチン接種回数 Q: インフルエンザワクチン接種時期 Q: 妊娠中のインフルエンザワクチン接種 Q: Q: Q: Q: Q: Q: Q: 授乳期間中のインフルエンザワクチン接種 高齢者のインフルエンザワクチン接種 卵アレルギーの人のインフルエンザワクチン接種 ゼラチンアレルギーの人のインフルエンザワクチン接種 インフルエンザワクチン接種の副反応 インフルエンザワクチン製造株 インフルエンザワクチンに含まれる水銀 1 Q: インフルエンザワクチン接種年齢 インフルエンザワクチン接種は何歳から受けられますか? A: 生後6か月以上です。 生後6か月未満の乳児に対してはワクチン接種の効果や副反応に関する研究がまだ少な く十分な知見が得られていないことと、生後6か月までは母体由来免疫の効果が期待でき ることが主な理由です。 生後6か月未満のお子さんについては、同居している家族が、インフルエンザワクチン 接種を受けて、盾となってあげてください。 目次に戻る Q: インフルエンザワクチン接種方法 インフルエンザワクチン接種はどのようにするのですか? A: 3歳未満は0.25mL、3歳以上は0.5mLを皮下注射します。 1回接種量は、(6か月以上)3歳未満0.25mL、3歳以上0.5mLです。接種経路は、皮下 注射です。 目次に戻る Q: インフルエンザワクチン接種回数 インフルエンザワクチン接種は何回受けるのがよいですか? A: 13歳以上は1回または2回、13歳未満は2回です。 13歳以上の場合、2回接種をした方が抗体価上昇が高いという報告と、抗体価上昇に変 わりはないという報告の両方があります。 以前は13歳以上の場合でも2回接種でしたが、ワクチン接種希望者が増加してワクチン 製造が追いつかなくなったのを受けて、2000年7月から薬事法で、13歳以上の場合は1 回または2回と変更されました。 接種回数を1回にするか2回にするかは、接種を受ける人の意思と接種を担当する医師 の判断によります。その判断材料は、最近確実にインフルエンザに罹患したことがあるか どうか、前シーズンにインフルエンザワクチン接種を受けたことがあるかどうか、現在の 体調が良好かどうかなどです。 接種の際には、これらのことを接種を担当する医師に十 分伝え、よく相談して下さい。 2回接種の場合、2回目は1回目から1∼4週後に接種します。最も効果が高いのは4週後 とされています。 目次に戻る Q: インフルエンザワクチン接種時期 インフルエンザワクチン接種はいつごろ受けるのがよいですか? A: 12月上旬までにはワクチン接種を完了しておくことをお勧めします。 効果が現れるまでの時間は、ワクチン接種から2週間程度とされています。また、効果 の持続期間は、ワクチン接種から5か月間程度とされています。日本でのインフルエンザ の流行期間は例年12月下旬から翌年3月下旬までなので、12月上旬までにはワクチン接 2 種を完了しておくことをお勧めします。 インフルエンザワクチン接種は毎年受けることをお勧めします。流行する株が毎年異な るので、流行すると予測される製造株が毎年異なるからです。また、たとえ流行する株が 同じだったとしても、ワクチン接種の効果は翌年までは持続しません。 2回接種の場合、2回目は1回目から1∼4週後に接種しますので、1回目はもっと早く接 種することになります。 インフルエンザの流行がすでに始まっていたりインフルエンザにすでに1回罹患したり して間に合わなくなっても、流行シーズン中で次に流行するかもしれない型・亜型に備え てインフルエンザワクチン接種を受けておくことをお勧めします。 目次に戻る Q: 妊娠中のインフルエンザワクチン接種 妊娠中にインフルエンザワクチン接種を受けても問題はありませんか? A: 妊娠14週以降であればインフルエンザワクチン接種をお勧めします。 現行のインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスそのもの(生ワクチン)では なく、インフルエンザウイルスの一成分(不活化ワクチン)です。したがって、妊娠中にイ ンフルエンザワクチン接種を受けても、インフルエンザウイルスに感染して妊婦がインフ ルエンザを発症することはなく、胎児に悪影響を与えることはありません。また、インフ ルエンザワクチン接種を受けた場合に妊婦に生ずる特別な副反応の報告はありませんし、 胎児に異常の出る確率が高くなったというデータもありません。 インフルエンザワクチン接種直後に妊娠が判明しても、胎児への影響を心配して人工妊 娠中絶を考慮する必要はありません。同様に、インフルエンザワクチン接種による精子へ の影響もありませんので、妊娠を希望しているカップルの男性へのインフルエンザワクチ ン接種にも問題はありません。 一方、妊婦がインフルエンザを発症すると、とくに慢性肺疾患・心疾患の合併症をもっ ている場合、重症になることが多く、使用可能な薬剤も限られています。 ただし、妊婦または妊娠している可能性の高い女性に対するワクチン接種に関して、妊 娠中の接種に関する調査成績が十分に集積されておらず、安全性が確立していないとして、 接種によって得られる有益性が不明の危険性を上回ると判断される場合にのみ接種するよ う、日本国内のワクチンメーカの添付文書には記載されています。しかし、妊婦は接種要 注意者には含まれていますが接種不適当者には含まれていませんし、2009年に新型イン フルエンザが流行した際には、厚労省も妊婦にインフルエンザワクチン接種を勧めました。 インフルエンザワクチン接種によって重症化を予防する方がよいと通常は考えられるの で、妊婦にはインフルエンザワクチン接種をお勧めします。ただし、インフルエンザワク チン接種とは関係なく、一般的に妊娠初期は自然流産が起こりやすい時期なので、この時 期のワクチン接種は避けた方がよいと考えられます。欧米では妊娠14週から勧奨していま す。 目次に戻る 3 Q: 授乳期間中のインフルエンザワクチン接種 授乳期間中にインフルエンザワクチン接種を受けても問題はありませんか? A: 授乳期間中にインフルエンザワクチン接種を受けても支障はありません。 現行のインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスそのもの(生ワクチン)では なく、インフルエンザウイルスの一成分(不活化ワクチン)です。したがって、授乳期間中 にインフルエンザワクチン接種を受けても、インフルエンザウイルスに感染して母親がイ ンフルエンザを発症することはなく、母乳を介して乳児に悪影響を与えることはありませ ん。 ただし、お母さんがインフルエンザワクチン接種を受けたからといって、お母さん自身 にインフルエンザの予防効果を期待することはできても、母乳を介してお子さんにインフ ルエンザの予防効果を期待することはできません。 目次に戻る Q: 高齢者のインフルエンザワクチン接種 65歳以上の高齢者には、インフルエンザワクチン接種の他に肺炎球菌ワクチン接種がお 勧めだそうですが、なぜですか? A: 高齢者の場合、インフルエンザを発症すると、生命に関わる肺炎を合併しやすいから です。 高齢者は、インフルエンザを発症する頻度こそ小児に比べると低いのですが、一旦イン フルエンザを発症すると肺炎を合併する頻度が高く、肺炎を合併すると生命に関わること が多いので、肺炎の予防が重要なのです。 肺炎球菌は、高齢者における細菌性肺炎で最も多い病原微生物で、94種類もあります。 肺炎球菌ワクチンには13価結合型と23価多糖体の2種類があります。当クリニックでは、 この2種類のワクチンを組み合わせた肺炎球菌ワクチン接種を強くお勧めしています。 詳しくは、当クリニック公式ウェブサイトの「ワクチン接種」のページにあるpdf書類「高 齢者向け肺炎球菌ワクチン接種Q&A」をお読みください。 目次に戻る Q: 卵アレルギーの人のインフルエンザワクチン接種 卵にアレルギーのある人はインフルエンザワクチン接種は受けられますか? A: 卵アレルギーがあっても、ほとんどの場合問題なく受けられます。 インフルエンザワクチンは、発育鶏卵でインフルエンザウイルスを増殖させて製造する ために、最終製品であるワクチンの中に鶏卵由来のタンパク成分がごく微量ながら残存す る可能性があります。したがって、鶏卵アレルギーのある人はインフルエンザワクチン接 種によってアレルギー症状が起こる可能性がありますが、近年は高度に精製されているの で、鶏卵由来のタンパク成分の量は極めて微量であり、鶏卵アレルギーがあっても通常は 問題となりません。 しかしながら、鶏卵摂取後、ひどい蕁麻疹・発疹が出たり口腔内がしびれたりアナフィ ラキシーショックを起こしたりしたことがあるような、重篤な鶏卵アレルギーがある人は、 ワクチン接種を避けるか、インフルエンザ罹患による重症化リスクとワクチン接種による 4 副反応リスクとを比較して、接種前にかかりつけの医師とよく相談のうえ、十分に注意し て接種することをお勧めします。接種に先立って接種ワクチン液による皮内反応を実施す るなどの方法を採る場合もあります。 気管支喘息・アトピー性皮膚炎・花粉症・蕁麻疹などのアレルギー疾患の持病があると か、アレルギー体質であるなどといわれているだけでは、ワクチン接種に問題はありませ ん。 目次に戻る Q: ゼラチンアレルギーの人のインフルエンザワクチン接種 ゼラチンにアレルギーがある人は、インフルエンザワクチン接種は受けられますか? A: ゼラチンにアレルギーがあっても、問題なく受けられます。 以前は、インフルエンザワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンに対するアレル ギー反応(アナフィラキシーショックなど)が報告されていましたが、現在は、インフルエ ンザワクチンを製造している日本国内のワクチンメーカのどの製品にもゼラチンは含まれ ていません。 目次に戻る Q: インフルエンザワクチン接種の副反応 インフルエンザワクチン接種による副反応にはどのようなものがありますか? A: 一般的に副反応は軽微です。 接種局所の副反応としては、発赤・腫脹・疼痛・硬結・熱感・しびれ感などが10∼20% にみられますが、通常2∼3日で消失します。 全身性の副反応としては、発熱・悪寒・頭痛・関節痛・筋肉痛・リンパ節腫脹・倦怠感・ 意識消失・眩暈・悪心・嘔吐・嘔気・下痢などが5∼10%でみられますが、通常2∼3日 で消失します。 ワクチン成分にアレルギーがある人に接種直後に出現する過敏反応として、発疹・蕁麻 疹・湿疹・紅斑・掻痒などがまれにみられますが、数日間で消失します。とくに重症の鶏 卵アレルギーの人には、蕁麻疹、発疹、口腔のしびれ、アナフィラキシーショックなどが 現れる可能性があります。 現行のインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスそのもの(生ワクチン)では なく、インフルエンザウイルスの一成分(不活化ワクチン)です。したがって、インフルエ ンザワクチン接種を受けても、インフルエンザウイルスに感染してインフルエンザを発症 することはありません。 目次に戻る Q: インフルエンザワクチン製造株 2015/2016シーズン用のインフルエンザワクチンに含まれている製造株は何ですか? A: 以下の3株です。 2015/2016シーズン用の日本国内のインフルエンザワクチンに含まれている製造株は、 以下の4株です。 5 1) A/カリフォルニア/7/2009 (A型(H1N1)pdm2009株) 2) A/スイス/9715293/2013 (A型(H3N2)株) 3) B/プーケット/3073/2013 (B型山形系統株) 4) B/テキサス/2/2013 (B型ビクトリア系統株) 現在インフルエンザワクチンを製造している日本国内のワクチンメーカのどの製品も全 く同じ製造株を使用しています。北半球のどの国の製品でも、ほぼ同じ製造株を使用して います。 1998/1999シーズンから2009/2010シーズンまでのワクチン製造株には、Aソ連型で あるA型(H1N1)株1株、A香港型であるA型(H3N2)株1株、B型山形系統株あるいはビク トリア系統株のうちどちらか1株の計3株が含まれていました。2009年に新型インフルエ ンザが流行したため、2010/2011シーズンからのA型(H1N1)製造株は、ソ連型株から pdm2009株に変更されました。このpdm2009株は2009年に使用された新型インフル エンザワクチンの製造株と同一のものです。2015/2016シーズンからのB型製造株には、 山形系統株とビクトリア系統株の両者が含まれるようになりました。 なお、各シーズンのワクチン製造株は、シーズン毎に決定されるので、過去のシーズン と必ずしも同一ではありません。 目次に戻る Q: インフルエンザワクチンに含まれる水銀 インフルエンザワクチンに水銀(チメロサール)が含まれているというのは本当ですか? A: 現行国内製品のチメロサール含有量は痕跡程度です。 従来、インフルエンザワクチンをはじめほとんどの不活化ワクチンには、チメロサール という防腐薬が、細菌汚染予防目的で含まれていました。チメロサールは約49%のエチル 水銀を含んでいますが、健康被害が報告されているメチル水銀とは異なり、神経組織を始 めとした臓器親和性は低く、半減期は1週間未満(メチル水銀は約1か月半)とされています。 現在のところ、健康被害の報告は局所の発赤・腫脹、発疹などが主体であり、神経疾患を はじめ重大な健康被害を生じるというデータもありません。 しかし、水銀製剤である以上、理論上のリスクは残ったままです。WHOは当面はチメ ロサールを可能な限り減量し、将来は新たな保存薬を開発してこれを代替することを勧告 しています。日本でもこの勧告を受け入れ、減量の方向で努力が続けられています。現在 インフルエンザワクチンを製造している日本国内のワクチンメーカのどの製品のチメロサー ル含有量も痕跡程度(0.004∼0.008 mg/ml)となっています。 目次に戻る 6
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