教育講演：超音波検査の人材育成公益社団法人岐阜県診療放射線技師会安田鋭介講演要旨１．【表示画像の理解】超音波検査は、人体の実質臓器や管腔臓器および腹腔を断層画像として映像化する技術であり、C T や M RI とこの点においては共通する。しかし、モニター上に映像化される断層画像の表示は、体幹全体を仰臥位とした横断像で表示されるのではなく、体表に接触した超音波探触子面を視野とする断層画像が表示される。つまり、超音波検査の断層画像は超音波探触子面が必ずモニターの上側に位置し、探触子面から遠ざかるにしたがってモニターの下側へと表示される。このことは、モニター上に表示される断層画像の上側が頭側あるいは腹側で、下側が足側あるいは背側とする一般的な表示概念とは異なる。超音波検査をこれから始めようとする技師にとって、手にした自由度の高い超音波探触子とモニターの表示断層画像とを結びつけて理解することが、撮像技術向上の鍵となる。２．【疾病と画像を読む力】超音波検査は、患者と向き合い患者との会話や腹部を観察しながら体表に超音波探触子を接触させて行うため、検査中にも多くの臨床情報が得られる点において CT や M R I などには無い有利な特徴を持っている。超音波検査を行うにあたりその前提は、診療録を読み、主訴と現症を把握することで予想される疾患を推測し、その疾患を説明できる直接所見や間接所見を念頭において検査を進めることが求められる。つまり、これから始めようとする技師が良質な超音波検査を行うには、１）診療録を読む力患を結びつける力３）超音波画像と疾患を結びつける力が必須であり、実践能力向上の鍵となる。３．【検査技術の訓練と開発】１）医用超音波の理解 1 ２）臨床症状と疾この「３つの力」物理的特性、超音波診断装置、アーチファクトと画像劣化、超音波組織特性などを理解する。２）超音波探触子の走査法と臨床画像の理解上腹部・下腹部領域の系統だった走査手順と得られる超音波画像を解剖学的に理解する。３）消化器領域の解剖学と消化器疾患の理解実質臓器の脈管を手がかりとした撮像技術の修得と疾患に特徴的な超音波画像所見を理解する。４）臨床医学の学びと超音波医学に関する最新情報の導入日常行われる症例検討会へ参加することで「症例から学ぶ」生きた臨床医学が身につき、日常の検査に「即」役立つ。また、研究会や学会参加による新しい知識や情報を収集する。４．【人材育成の鍵】「人は『目標』がなければ生きられない」これを知ることで人生に対して積極的になれるため、その「キッカケ」を与えることが重要と思われる。我々は、次の時代の担い手になるはずの若者に「勇気」と「希望」を与えることが大きな使命であり、自らも常に臨床医学の「先端の現場」に身を置き続けることが望まれる。我々は、常に彼らに関心を寄せ、彼らを超音波医学の「先端の現場」に導き、「疾病発見の喜び」を実感させながら付き合いを重ね、全人格的な付き合いを心がける必要がある。日常の診療現場で自分自身に関心を寄せていることに痛感した若者は確実にエキサイトし、大きな一歩を踏み出し、新たな道を切り開いていくと思う。 2