From センターだより 第8回JW懇話会 「地球環境と3R」講演要旨 講演者: ㈶日本産業廃棄物処理振興センター特別顧問 岡澤 和好 地球環境の危機 われる主な物質や燃料の可採年数はあと数十年か 近年、世界のあちこちで熱波、水害、冷害が発 ら百年程度とみられています。もちろん、資源の涸 生しています。今ではこういった地球環境の異変 渇に伴うコストの上昇によって新しい技術が実用化 は周知の事実ですが、最初にこれを指摘したのは、 されることで、もう少し延びると思いますが。 1962年に出版された「沈黙の春」の著者レイチェ このように、環境が影響を受け、資源が涸渇して ル・カーソンであり、その中で農薬による環境汚 くる現状をみると、地球における人間の経済活動に 染に警告を発しています。その10年後の1972年に ついて考えていかなければなりません。 は、“地球は有限である”ことを世界にアピールし た「成長の限界」をローマクラブが出版していま す。1988年には、米国議会において“猛暑は地球 温暖化の影響”とJ.ハンセン(NASA)が証言し、 これをアメリカのマスコミが取り上げたことから、 世界的話題となり、「地球温暖化」が国際問題とし て取り上げられるようになりました。 このような地球環境の異変は、人間活動の拡大に 1 よるものと考えられます。過去100年(20世紀)の 30 変化をみますと、人口は4.3倍、化石燃料消費量は 持続可能な生産消費 16倍、世界総生産は20倍になっており( )、特に 1987年、ブルントラント委員会が「我ら共通 20世紀後半(1950-2000)の変化は著しいもの の未来」を公表しましたが、1992年の地球サ です。それに伴って地球環境は、森林面積の減 ミットにおいて、「持続可能な開発」を実現する 少、砂漠化などの変化がおきています。 ための基本的な考え方を整理し、その実践が提唱 また資源の有限性の面からみると、工業用に使 されました。2002年のヨハネスブルグ・サミッ JW INFORMATION 2007.1 1 日廃振センターの事業に関わる情報発信コーナーです。 講演要旨 昨年10月24日に第8回JW懇話会を開催し、 「地球環境と3R」と題して当センター岡澤和好特別顧問が講演すると ともに、事業推進部尾崎弘憲部長代理より「韓国電子マニフェスト視察調査報告」を行いました。 今回は、岡澤特別顧問の講演要旨を掲載します。 トにおいては、「持続可能な開発」を実践するた 資源消費の効率化の面では、イギリスで1990年か めの経済開発、社会開発、環境保護の推進内容を ら10年間で50%効率を上げている例がありますが、日 具体的に議論しています。このときに、「持続可 本でも、 「循環型社会推進基本計画」 で、2000年度から 能な生産消費のための10カ年計画」の策定を奨 2010年度までに40%向上させようとしています。 (2) 励したことから、これをサポートする専門家会 個別の天然資源に着目すると、銅の廃棄物から 議(廃棄物分科会)がマラケシュ(2003年)、 の回収は、世界の平均は50%、日本は65%の回 コスタリカ(2005年)で開催されました。次回 収率で、国内の被覆電線においてはほぼ全て回収 は、スウェーデン(2007年)で開催予定です。 されています。また、アルミ缶のリサイクル率 は、回収しやすいことや指標にしやすいため各 国が力を入れており、日本は85%です。スイス 持続可能な生産消費を実現するために資源利用効 (90%)やスウェーデン(85%)なども規制の 率の向上等に関し、さまざまな国際的取り組みがな 導入によりリサイクル率が高く、自主的な回収に されています。現状を見てみますと、GDP(国内総生 委ねているアメリカでも積極的なキャンペーンに 産)あたりの廃棄物等(廃棄物、排水、排ガス)排出 より50%に達しています。 センターだより 資源利用効率向上への取り組み 量は、日本に対して、ドイツは2倍、アメリカは4倍で す。また同様に、GDPあたりのエネルギー消費量は、 日本に対して、ドイツが1.4倍、アメリカは2.7倍です。 さらに、GDPあたりのCO2排出量も、世界で一番低く 抑えられています。これらを見ると、日本が資源やエ ネルギーを極めて効率よく利用していることが分かり ますが、それは日本がこれまで厳しい環境規制を実施 してきたことの一つの現れだと言えます。 2 2007.1 JW INFORMATION 31 講演要旨 3Rイニシアティブ ■東アジアの3R ■G8の3Rイニシアティブ また、G8での議論と併行して、日本の役割と 3Rという考え方も、「持続可能な生産消費」 して、東アジア地域における3R実践の支援を進 を実施するための効果的な手法と考えられます。 める必要があります。 2004年シーアイランド・サミットにおいて、 東アジアでは、主に、生ごみ、E-Waste(電子 資源利用効率の面で世界のトップを走る日本は、 電気廃棄物)、医療廃棄物を含む有害廃棄物の3 その経験を生かし、「3Rイニシアティブ」を提 つの廃棄物問題への対応が課題となっています。 案し、これを開始するための閣僚会合を2005年 E-Wasteは、中古品として再利用する名目で日 春に開催すると表明しました( )。この提案 本からアジアへ多量に持ち出されています。中国 はG8各国の賛同を得て、G8の新たなイニシア などでは、家電製品を製造するための銅やアル ティブとして合意されました。2005年グレン ミなどの原料が不足していることから、資源回収 イーグルズ・サミットでは、同年4月に東京で3R 目的での中古品の闇輸入が後を絶たない状況で イニシアティブが開始されたことを報告し、 す。持ち込まれたE-Wasteは、不適切な資源回収 2006年サンクトペテルブルグ・サミットでは、 による健康被害や、野ざらしとなった残渣などに 資源循環の最適化のため、資源生産性を考慮して よる環境汚染等が懸念されています。 目標を設定することが了承されました。 アジア諸国の経済発展により、廃棄物問題の深 今後、専門家の会議等によって3Rに関する 刻化、資源有効活用の必要性が高まると見込まれ 国際的な取り組みについて議論を深めた上で、 る中で、 「東アジア地域における循環型社会形成」 2008年の日本開催のサミットにおいて、日本政 に向けて、日本の経験の情報提供、技術移転、人 府からG8に対して3Rイニシアティブの成果報告 材育成に貢献することを通じて、わが国がリー を行うことになります。 ダーシップを取っていくことが必要です( 3 32 JW INFORMATION 2007.1 3 4 4 ) 。
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