第2部 基本計画 第2節 自然環境の保全・創造と人と自然が共生するまちづくり ∼豊かな自然とともに生きるまち∼ 自然環境は、生態系の維持に重要な役割を果たすとともに、私たちが日々生活するなかで必要不可 欠なものであり、豊かな生活環境に大いに貢献しています。 この自然環境は一度損なわれると、復元に相当の時間と労力を要し、また復元が困難なものもあり ます。 本町においては、豊かな自然が今も残されており、希少な動植物をはじめとする多様な生きものが 生息しています。それを支える水・緑・土にわたる地域の生態系としての自然を保全し、その生息環 境の復元に努めます。 こうした生態系と共生するまちづくりのためには、住民全体の理解と協力がとりわけ大切です。そ のため、特に子どものときから身近な自然に親しみ理解を深め、自然の大切さを実感できるように努 めます。 また、生活環境改善のために自然環境を改変する際には、生態系の維持・保全や緑の創出など、失 われる自然環境が最小限になるよう、生態系に配慮した創意工夫が行われるように努めます。 1 山林の保全 ● 現状と課題 町の森林面積は、6,975haと町域の約80%を占め、防災、水源涵養(※)、二酸化炭素(※)の吸収、 生物多様性の保全などの公益的機能を果たしていますが、近年においては、林業者の高齢化や後継 者不足、また、収益性の低下などから林業への関心も薄く、放置された山林が増加している状況です。 しかし、防災や水源涵養そして環境保全の視点から、町や森林組合において造林、育林を推進し、 また森林ボランティア「猪名川町里山倶楽部」の協力のもと、杤原めぐみの森、内馬場の森の2箇 所で里山林の保全活動を行っています。各小学校区に整備した学校里山林では環境教育の場として 活用し、阪神地域の最高峰の大野アルプスランドは自然とのふれあい機能を生かした身近な里山林 として憩いとやすらぎの場として利用されています。 今後、山林の機能を生かした憩いとやすらぎの場づくりが、山林の保全に重要な役割を担うこと となります。 里山での環境学習 17 森林ボランティアの活動 基本計画 第2部 環境施策 ・森林資源の有効活用 ・ボランティアの育成 ・里山の整備 ・緑とのふれあいの促進 環境に配慮した行動 住民は ◆ 森林ボランティア活動、里山保全活動に参加し、森林保全に協力します。 ◆ 鎮守の森など身近な緑を大切にします。 ◆ 兵庫県が実施する融資制度を活用し兵庫県産木材を積極的に活用します。 事業者(山林、農地の所有者も含む)は ◆ 森林の保全・整備活動を積極的に推進します。 ◆ 住宅建築の際には兵庫県産木材が利用されるよう消費者にPRするとともに、自らの事業に おいても積極的に利用します。 ◆ 間伐林を利用した家具、ベンチ類を積極的に取り入れます。 ◆ 林道の維持管理に努めます。 行政は ◆ 伐採跡地などには造林されるよう誘導します。 ◆ 森林ボランティアの育成、支援に取り組みます。 ◆ 不法投棄防止に向けた意識啓発を進めます。 ◆ 山林の崩壊など危険箇所には、治山、治水対策を推進します。 ◆ 近郊緑地保全区域(※)や県立自然公園区域の保全に努めます。 ◆ 里山保全に対する住民・事業者が進んで参加できる場の確保と仕組みづくりに向け取り組み ます。 ◆ 兵庫県産木材の利用促進に向けた啓発を行うとともに、公共事業において積極的に利用します。 (単位:ha) 森林面積・人口林率の推移 (単位:%) 18 第2部 基本計画 2 農地の保全 ● 現状と課題 町の農業就業戸数は平成22年(2010年)778戸で耕地面積339haのうち水田面積が90.1%を占 めています。 このような状況の中、町内農業者は零細で分散型の農地所有者が多く、米の価格の低迷、就業者 の高齢化などから、農地として活用されない耕作放棄地が増えてきています。 農地が果たす役割は、食物の生産だけでなく、生物多様性の保全、水源の涵養、自然とのふれあ いの場の提供など、環境面からも多機能を有しており、保全に向けた取り組みを都市住民も含めた 幅広い参加のもと推進する必要があります。 (単位:戸) 農家数の推移 稲刈の風景 ※平成22年の数値は概数値 (単位:ha) 経営耕地面積の推移 そばの花の全景 昭和35 40 45 50 55 60 平成2 7 ※平成22年の数値は概数値 19 12 17 22 基本計画 第2部 環境施策 ・農地保全の推進 ・農地の有効利用の推進 ・農業振興の促進 環境に配慮した行動 住民は ◆ 貸農園や体験農場を利用します。 ◆ 環境に配慮された農業などにより生産された農作物への理解を深め、また、地域でとれた農 産物を地域で消費する地産地消(※)に努めます。 事業者(山林、農地の所有者も含む)は ◆ 地域でとれた減農薬や有機肥料(※)による農作物などを積極的に販売します。 ◆ 遊休農地や休耕田は、雑草を除去し適正に管理します。 ◆ 遊休農地や休耕田を体験農場として都市住民との交流を図ります。 ◆ 農地の保全に向け農業ボランティアを受け入れます。 ◆ 中山間地域等直接支払い制度(※)を活用し農地・水・環境保全事業等の共同作業に参加し ます。 行政は ◆ 集落周辺の景観形成に寄与し住民に潤いを与える棚田(※)の保全を支援します。 ◆ 農作業の効率化に向けた環境を整備します。 ◆ 道の駅いながわ内に整備した農産物販売センターを拠点として、安心・安全な猪名川町ブラ ンドの野菜づくりを推進します。 ◆ 事業所、学校給食での地場産農産物の利用を推進します。 ◆ 遊休農地や休耕田を体験農場とするよう誘導し、その斡旋をします。 ◆ 担い手不足から荒廃する農地が増加しており、農地保全に向けた取り組みを推進します。 田植えの風景 20 第2部 基本計画 3 水辺の保全 ● 現状と課題 大野山に源を発し、町の中央を流れる猪名川は、特別天然記念物のオオサンショウウオをはじめ、 水生生物やホタルなどが生息する一級河川で、その支流にはメダカなどの魚類や水生昆虫なども生 息し、猪名川流域市町等の水源となるだけでなく、住民の憩いとやすらぎの場としての機能を提供 しています。 身近で豊かな自然環境を形成する水辺の環境については、安全性、治水、利水の側面からだけで なく、環境保全機能に十分配慮し、生き物の生息・育成の基盤として捉え保全整備を行なう必要が あります。 環境施策 ・水辺の有効活用の促進 ・水辺の生態系の保全の促進 ・親水空間整備の促進 ・生物と共生する水辺空間の整備の促進 環境に配慮した行動 住民は ◆ 河川愛護活動などのボランティア活動に積極的に参加します。 ◆ ホタルなど水辺の生物を保護・育成します。 ◆ 川遊び、自然観察会に積極的に参加します。 ◆ 魚類や水生昆虫などの生息調査に参加し自然資源の大切さを学び保護に努めます。 ◆ 水と親しみ、潤いとゆとりを与えてくれる親水護岸のある公園を利用します。 事業者(山林、農地の所有者も含む)は ◆ 地域と協力して、河川の愛護活動に参加します。 ◆ ため池、井堰などの周辺をビオトープ(※)として保全します。 ため池の点検 21 基本計画 第2部 行政は ◆ 水と親しみ憩える空間づくりとして、水生生物の観察の場や川にふれあえる場などの親水空 間の整備を促進します。 ◆ 魚類や水生昆虫などの水生生物が生息しやすい河川環境と自然護岸の整備を促進します。 ◆ 河川の愛護活動を行う団体に対して、草刈機など清掃用具を貸し出します。 ◆ 川の学習会や水生生物観察会など、川とふれあえる機会を提供し環境学習などに活用します。 ◆ 川と親しむための遊歩道の整備を促進し、その活用を図ります。 ◆ ヨシなどの水草の増殖抑制施策と活用方策を検討します。 ◆ 清流猪名川を取り戻すために町独自の「清流基準」(※)を守るよう取り組みます。 ◆ 魚類や水生昆虫などの生息調査を実施し、その結果を公表し、常に良好な生態系の保全に努 めます。 ◆ ため池、井堰などの周辺をビオトープとして保全します。 ◆ 希少水生生物を保護し、生息環境を保全し、豊かな自然環境を守り育てます。 希少生物が生息する水路 清流で遊ぶ子ども 22 第2部 基本計画 4 緑化の推進 ● 現状と課題 町では、豊かな自然環境を後世に伝えていくため、開発行為に対する適正な指導を行うとともに、 ニュータウン地域や幹線道路沿い、河川敷などの緑化に努めています。 また、緑とのふれあいの場 として重要な施設である公 園については、地域特性を考 慮し、町公園化推進計画、緑 の基本計画に基づき整備、維 持管理を行う必要がありま す。その際には、住民参加に よるワークショップ(※)の 開催やアドプト制度(※)の 導入を推進し、参画と協働の 中での取り組みが求められ ます。 花の公園づくり活動 環境施策 ・公共施設などの緑化 ・土地所有者などによる緑化 ・事業所内の緑化 ・緑の回復 環境に配慮した行動 住民は ◆ 地域における緑化活動運動などに参加します。 ◆ 庭、ベランダ、屋上などの緑化を進めるとともに庭の生垣、庭木などは適切に管理します。 ◆ 公園・緑地の整備、維持管理の際には、積極的にワークショップ、アドプト制度に参加します。 事業者は ◆ 開発区域内や事業所内の緑化に努め、地域との調和を図るとともに、一定規模の開発につい ては、指導基準により適正な緑化を実施します。 23 基本計画 第2部 行政は ◆ 住民が身近に緑とふれあうことができるよう、公共施設などの緑化に努めます。その際には ワークショップの開催やアドプト制度の導入を推進し、住民の参画と協働を促します。 ◆ 公園・緑地の整備、維持管理を行う団体に対して、草刈機などの用具を貸し出します。 ◆ 道路整備時等には、植樹帯やポケットパーク(※)を設けるなど、快適な空間づくりを進め ます。 ◆ 開発行為に対する適正な指導を行うとともに、ニュータウン地域や幹線道路沿い、河川沿い などの緑化を推進します。 ◆ 地域で行われる緑化活動「花いっぱい運動」などを推進します。 ◆ 町ホームページや広報紙を活用し緑化の啓発活動を行います。 (単位:ha) 都市公園等面積の推移 140 (単位:㎡) 45 40 120 35 30 100 25 80 20 60 15 40 10 20 5 0 0 公園づくりのワークショップ 24
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