教育資金の一括贈与と結婚・子育て資金の一括贈与の共通点及び相違

平成 27 年 2 月 9 日
No.486
~教育資金の一括贈与と結婚・子育て資金の一括贈与の共通点及び相違点~
平成 27 年度税制改正大綱の中で、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(以下、
「結婚・
子育て資金の一括贈与」という)の創設が発表されました。本制度は、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課
税措置(以下、「教育資金の一括贈与」という)と金融機関に信託するという点で似ていますが、適用要件や契
約終了の時までに贈与者が死亡した場合の課税関係に違いがあり、注意が必要となります。そこで、今回は結婚・
子育て資金の一括贈与と教育資金の一括贈与について紹介します。
1.制度の概要
教育資金の一括贈与の概要
30 歳未満の子や孫に対して、教育資金の支払に充てるため、教育資金管理契約に基づき直系尊属がその受贈
者名義の金融機関の口座等に資金を一括して拠出した場合において、一定の要件を満たすときは、受贈者 1 人に
つき 1500 万円(学校等以外の者に対して支出する費用については 500 万円)を非課税とする制度です。
結婚・子育て資金の一括贈与の概要
20 歳以上 50 歳未満の子や孫に対して、結婚・子育て資金の支払に充てるため、結婚・子育て資金管理契約
に基づき直系尊属がその受贈者名義の金融機関の口座等に資金を一括して拠出した場合において、一定の要件を
満たすときは、受贈者1人につき 1,000 万円(結婚に関して支出する費用については 300 万円)を非課税と
する制度です。
2.教育資金の一括贈与と結婚・子育て資金の一括贈与の共通点・相違点
項目
(1)教育資金の一括贈与
(2)結婚・子育て資金の一括贈与
受贈者
30歳未満の子や孫等
20歳以上50歳未満の子や孫等
贈与者
受贈者の直系尊属
金銭等の拠出先となる金融機関
信託会社(信託銀行を含む。)、銀行及び金融商品取引業者(第一種金融商品取引業者に限る)
対象となる資金
非課税枠
特例対象期間
契約の終了
①学校等に対して直接支払われる金銭
①結婚に際して支出する婚礼(結婚披露を含む)に要する費
②学校等以外に対して直接支払われる一定の金銭で社会通念上相当と
用、住居に要する費用
認められるもの
②妊娠に要する費用、出産に要する費用、子の医療費及び子の
③通学定期代、留学渡航費(H27年度税制改正大綱により拡充)
保育料のうち一定のもの
※③は適用開始時期は未定
受贈者1人につき1,500万円
受贈者1人につき1,000万円
(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度) (結婚に際して支出する費用については300万円を限度)
平成25年4月1日~平成27年12月31日
平成27年4月1日~平成31年3月31日
(H27年度税制改正大綱により平成31年3月31日まで延長予定)
①受贈者が30歳に達した場合
①受贈者が50歳に達した場合
②信託財産の等の価額が零となった場合において終了の合意があった場合
③受贈者が死亡した場合
終了時の課税(①又は②の事由の場合)
非課税拠出額の残額については、これらの事由が生じた日に残額の贈与があったものとみなして、受贈者に贈与税が課税される
終了時の課税(③の事由の場合)
非課税拠出額の残額については、贈与税は課税されない
契約終了の時までに贈与者が死亡した場合の課税
贈与者の相続時点における非課税拠出額の残額については、
贈与者の相続時点における非課税拠出額の残額については、
生前贈与加算の対象とならないため、相続税の課税の対象とならない みなし相続財産として相続税の課税の対象となる
教育資金の一括贈与の場合、非課税拠出をした後に、教育資金に充当されていない残額がある状態で、贈与者
に相続が発生した場合は、生前贈与加算の対象とならないため、相続税の課税の対象になりません。
一方、結婚・子育て資金の一括贈与の場合、非課税拠出をした後に、結婚・子育て資金に充当されていない残
額がある状態で、贈与者に相続が発生した場合は、みなし相続財産として相続税の課税の対象となります。その
ため、基本的には相続税の節税に繋がりません。しかし、贈与者の相続時点における非課税拠出額については相
続税の二割加算対象外とされていますので、相続財産を一代飛ばして孫の世代に移転するうえでは効果があるケ
ースも考えられます。
(担当:谷本 俊)