2015 年 11 月 16 日 豪州主要経済指標 経済指標・イベント 10 月 失業率 今週の注目点 直近 前回 日付 経済指標・イベント 5.9% 6.2% 11 月 18 日 豪州 第 3 四半期 賃金指数 (前年比) 前回 市場予測 2.30% 2.30% 金融市場・原油・為替 指数等 S&P/ASX200 指数 2015年11月13日 2015年11月6日 前週比 2014年11月13日 前年比 5,051.26 5,215.01 -3.1% 5,442.70 -7.2% 1,237.4 1,295.2 -4.5% 1,158.0 +6.9% 豪州 90 日バンクビル利回り 2.23% 2.19% +4bps 2.79% -56bps 豪州債券 10 年物利回り 2.95% 2.79% +16bps 3.35% -40bps 豪ドル円 87.38 86.77 +0.61 100.98 -13.60 豪ドル米ドル(セント) 71.27 70.43 +0.84 87.23 -15.96 61.2 60.9 +0.3 69.4 -8.2 S&P/ASX200 不動産投信 豪ドル TWI 先週の主な話題 先週、米連邦準備制度理事会(FRB)による 12 月の利上げ観測を背景に米ドル相場が上昇、これがコモディティ価格の重石となり、新興国市 場を巡る警戒感が再燃、米国の経済成長に対するリスクも再び高まったことから、株式市場は再び下押し圧力を受けました。日本株(+1.7%) が上昇した一方、米国株(-3.6%)、ユーロ圏株(-3.1%)、中国株(-2.3%)は下落しました。原油価格及び鉄鉱石価格が再び直近の底値に近付 いたことで、資源関連銘柄を中心に下落しました。その結果、豪州株(-3.1%)は下落し、9 月の安値付近に迫る展開となりました。コモディティ価 格が下落したものの、豪州の雇用統計が予想以上に強い結果となったことから、豪ドル相場は上昇しました。債券利回りは、雇用統計を受けて 豪州で上昇した一方、米国、日本、特に欧州において低下しました。中でも欧州については、欧州中央銀行(ECB)による追加緩和観測が高まっ たことが利回り低下を促しました。 パリでの同時多発テロは、過激派組織「イスラム国(IS)」の掃討を行う有志連合国が、テロの脅威に直面していることが改めて認識させられる、 恐ろしい事件です。テロリストによる攻撃はその人的被害を考えれば非常に残忍であり、被害に遭われた方々に対し心よりお悔やみを申し上げ たいと思います。金融市場への影響については、今回のパリでのテロによって短期的に投資家心理が悪化することは避けられないでしょう。し かし、過去 10 年間におけるアルカイダ関連の様々なテロと株式市場の関係を振り返りますと、テロ直後には悪影響が広がるものの、その後経 済的な打撃が大きくないことが明らかとなるにつれ株式市場は立ち直っており、テロの脅威が長期化するに伴い影響は低減する傾向にあると思 われます。例えば、9.11 直後に 12%下落した米国株式市場は 1 ヶ月で回復、また 2005 年 7 月のロンドン同時爆破テロの際、当日 1.4%下落 した英国株式市場は 1 日で持ち直しました。 米ドルの上昇ならびに、それが米国の経済成長、コモディティ価格、新興国市場に及ぼす影響を巡り、再び警戒感が強まっています。FRB によ る 12 月の利上げ観測が高まる中、8 月から 9 月に広がった懸念が再燃しています。つまり、米ドルの上昇によって、コモディティ価格に下押し 圧力が掛かると同時に、新興国が危機に陥るリスクが浮き彫りとなり、これらが、米国経済に悪影響が及ぶのではないかとの警戒感です。FRB がこれらの点に留意しなければ、またも利上げを断念せざるを得ないこととなり、9 月会合の二の舞となる可能性があります。こうしたリスクを最 小限に抑えるべく、複数の FRB 高官は、利上げのペースが非常に緩やかになるとの見方を強調しつつ、ややハト派寄りのスタンスを示そうとし ています。これを端的に表わしているのが、ニューヨーク連銀のダドリー総裁による講演であり、高官らの発言はいずれも、米ドルの上昇圧力の 抑制を狙っています。(FRB が利上げに踏み切り、ECB や日銀等の他の中央銀行が緩和策を維持する場合)最も自然な相場展開は米ドルの 上昇であることから、FRB は「緩やかなペースで利上げを進める」とのハト派的なメッセージを発信すると見られ、加えて、利上げペースの決定 においては、米ドル相場が強いブレーキとなることを念頭に置く必要があります。従って、今後も動向を注視すべきでしょう。 米国株式市場は引き続き 2011 年と同様の軌道を辿っています。2011 年との類似性から推察するに、10 月の力強い上昇を経て、この 11 月は 反落すると見られ、FRB の利上げ懸念がその主たる要因になると考えられます。しかし、利上げが見送られれば、投資家の間で「FRB は強気 の姿勢を取るつもりはなく、米ドルや世界経済の成長への影響に配慮している」との安心感が広がることから、米国株式市場は年末に掛けて、 力強い上昇が見込まれます。その他の株式市場も総じて同様の展開となる可能性が高いものの、豪州株については引き続き、コモディティ価格 の低迷が重石となり、アンダーパフォームすると予想されます。 出所:ブルームバーグ、AMP キャピタル エルニーニョ現象が豪州経済に及ぼす影響は警戒すべきなのでしょうか。関連指標によれば、エルニーニョ現象によって深刻な天候不順が発 生するリスクは、一段と高まっています。貿易風は平常時には太平洋を超えて西側(ラニーニャ)に向かって吹きますが、エルニーニョ現象時に は、この貿易風が弱まったり、逆転したりすることで東太平洋では雨量が増加、西太平洋では小雨/干ばつが発生します。エルニーニョ現象の 指標としては通常、太平洋の海面気圧を測る南方振動指数(SOI)が用いられており、同指数は現在、大規模なエルニーニョ現象が発生した 1997 年~1998 年の水準に近付いています。そのため、アジアと豪州東海岸で干ばつが発生するリスクが高く、農業生産高の減少と食料品価 格の高騰が危惧されます。豪州においては、エルニーニョ現象が農業生産高に与える影響はまちまちで、例えば、1997 年~1998 年の大規模 なエルニーニョの際には、影響はほとんど見られず、むしろ過去 10 年間における比較的小規模のエルニーニョでは、より大きな影響が生じまし た。以下のチャートをご参照ください。 出所:豪州統計局(ABS)、AMP キャピタル また、農業生産高は現在、対 GDP 比で 2%に過ぎないことから、その変動が豪州経済に与える影響は以前ほど大きいものとは考えられません。 とは言え、経済成長がトレンド以下にある現在の状況下、大規模なエルニーニョ現象によって干ばつが発生し、農業生産高が落ち込むのは決し て良いことではありません。例えば、農業生産高が 20%減少した場合(1982 年~1983 年の実際の被害規模)、GDP 成長率は約 0.45%低下 することになります。食料品価格には多少の上昇圧力が掛かる可能性があるものの、RBA にとっての主な懸念事項は、経済成長への打撃だと 思われます。 世界経済指標 米国の経済指標は強弱交錯の内容となりました。新規失業保険申請件数が非常に低い水準を記録、JOLT 労働調査・求人件数も好調となるな ど、雇用関連指標が堅調を維持し、ミシガン大学消費者信頼感指数も上昇しました。一方、小売売上高は低調に留まり、堅調な雇用環境やガソ リン価格の下落からの好影響はほぼ見受けられませんでした。また、NFIB(全米独立企業連盟)中小企業楽観指数は依然伸び悩んでおり、10 月の生産者物価指数(PPI)及び輸入物価指数は予想以上に低下しました。欧州と日本で緩和策が続く状況下、米国の利上げは、米ドルの上昇 を招くだけであり、従って、米国の輸入物価及びインフレ率には下押し圧力が掛かり、FRB の目標であるコア・インフレ率 2%の達成は困難と予 想されます。市場は現在、FRB による 12 月の利上げを 64%の確率で織り込んでいます(先週は 68%)。私自身は基本的に 12 月利上げを予 想していますが、米国の経済指標がまちまちの内容であること、コモディティ価格が再び下落していること、世界経済の成長に対する懸念が浮 上していることなど、複数の要因が重なっているため、9 月同様、利上げが回避される可能性もなお残っていると見ています。 日本の経済指標は若干ながら改善しました。景気ウォッチャー調査において現状判断 DI が上昇したほか、9 月の機械受注も堅調な伸びとなり ました。東京都心のオフィス空室率が 2012 年の 9.4%から 4.5%に大きく低下している点から見て、日本の実体経済の改善は明らかと言えま す。 豪州経済指標 先週発表された豪州の経済指標は全般に良好で、特に、雇用統計の好結果が際立ちました。ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)発表の直 近の企業景況感指数が平均以上の水準を維持したほか(但し、企業信頼感指数は低調)、ウエストパック消費者信頼感指数も長期平均に持ち 直し、恐らく今回も「ターンブル新政権」要因がプラスに働いたと思われます。また、雇用者数も驚異的な伸びを示しました。10 月の雇用統計は 信じがたいほど好調な内容で(雇用者数:月間で約 6 万人増、失業率:5.9%に低下)、いずれ反動が生じる可能性が高いものの、雇用者数は 基本的に増加傾向にあることから、豪州経済がまずまずの状態で推移していることが示唆されます。またそれを後押しする要因として、資源ブー ムの中心となった西オーストラリア州から、豊富な人口を抱えるニューサウスウェールズ州やビクトリア州などへ経済の牽引役がシフトしつつあ ることが指摘できます。従って、現時点で 12 月に利下げが行われる可能性は極めて低くなっており、来年年頭に利下げが行われるには、複数 の経済指標の悪化が条件になると弊社では見ています。 今週の注目点 米国では、直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合議事録(水曜日)に注目が集まることは間違いないでしょう。FOMC 後に発表された 10 月の雇用統計が堅調な内容となったことから、市場は現在、64%の確率で 12 月の利上げを織り込んでいます。一方、総合 CPI は前年比 +0.1%、コア CPI も前年比+1.9%の低水準に留まり、鉱工業生産は僅かに増加、NAHB(全米住宅建設業者協会)住宅市場指数は 64 と良好 な水準を維持する見通しです(以上火曜日)。 豪州では、直近の豪州準備銀行(RBA)理事会議事録(火曜日)に関しては、新たに多くの内容が追加される可能性は低いでしょう。既に、同理 事会の数日後に四半期金融政策声明が発表されているためです。 相場見通し 株式市場は力強く持ち直した 10 月を経て、一服や調整が避けられない状況にありました。特に米国株は買われ過ぎており、再び楽観ムードも 見受けられた一方、FRB の利上げによって米ドルが上昇、その結果コモディティ価格と新興国通貨に悪影響が及ぶとの懸念も再燃していたた めです。まさに足元でその渦中にあり、一段の調整も見込まれます。しかし第 3 四半期とは異なり、中国に関する警戒感は今回、さほど強いも のではないと思われます。 しかし株式市場は、11 月の調整を挟んで、年末最後の 2 週間に掛けては例年通り「サンタクロース・ラリー」に突入し、長期的には上昇基調を 辿ると予想されます。その背景として(1)現在、株式のバリュエーションが債券に対して割安であること、(2)FRB が世界経済の成長を脅かす対 応を取るとは考えにくいこと、(3)それが世界経済の持続的回復に寄与すると見られること、などの明るい要素が存在しているためです。弊社で は、豪州 S&P/ASX200 指数の目標値を維持しており、現時点からの道のりは長いようにも思われますが、年末までに 5,500 前後まで上昇する と見ています。 債券利回りが低水準にあることから、債券投資のリターンが中期的に低調になる可能性が考えられます。但し、ポートフォリオの分散化という点 で、国債の魅力度は依然高いと言えます。 豪ドル相場は長期的には下落基調を維持する見込みです。というのも、FRB は向こう半年間のいずれかの時点で利上げを開始する見通しであ り、一方で、RBA は利上げではなく利下げに踏み切る公算が大きく、コモディティ価格も下落トレンドにあるためです。豪ドル相場は、来年に掛け て 0.60 米ドルまで下落する可能性もあります。 重要事項:この⽂書に含まれる情報は⼀般的な情報の提供のみを⽬的として AMP Capital Investors Limited(ABN 59 001 777 591, AFSL 232497)(以下「AMP キャピタル」とい います。)が作成したものです。これは現地において適⽤される法令諸規則や指令に反することとなる地域での配布または使⽤を意図したものではなく、かつ、特定の投資ファンドまたは投資戦略への 投資を推奨、提案または勧誘するものではありません。読者は、この情報を法的な、税務上の、あるいは投資に関する事項の助⾔と受け取ってはなりません。読者は(この情報を受領した地域を含 む)特定の地域において適⽤される法令諸規則その他の要件に関して、並びにそれらを遵守しなかったことにより⽣じる結果について、専⾨家に意⾒を求め、相談しなければなりません。この⽂書の 作成に当たっては細⼼の注意を払っていますが、AMP キャピタルあるいは AMP リミテッドのグループ会社は、予測を含むこの⽂書の中のいかなる記述についても、その正確性または完全性に関して表 明⼜は保証をいたしません。脚注に⽰される通り、この⽂書中のいくつかの情報は、当社が信頼できると判断する情報源から取得しており、現在の状況、市場環境および⾒解に基づいています。 AMP キャピタルが提供した情報を除き、当社はこの情報を独⽴した⽴場で検証しておらず、当社はそれが正確または完全であることを保証することはできません。過去の実績は将来の成果の信頼で きる指標ではありません。この⽂書は⼀般的な情報の提供を⽬的として作成したものであり、特定の投資家の投資⽬的、財務状況または投資ニーズを考慮したものではありません。投資家は、投資 判断を⾏う前に、この⽂書の情報の適切性を考慮し、当該投資家の投資⽬的、財務状況⼜は投資ニーズを考慮した助⾔を専⾨家に求めなければなりません。この情報は、その全部または⼀部で あるかを問わず、AMP キャピタルの書⾯による明⽰の同意なく、いかなる様式によっても、複製、再配布あるいはその他の形式で他の者が⼊⼿可能な状態に置いてはなりません。
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