(別紙) 近年の北西太平洋の広範囲に及ぶ調査船調査から、マイワシ

(別紙)
近年の北西太平洋の広範囲に及ぶ調査船調査から、マイワシ太平洋系群の 0 歳魚は、
日本沿岸に滞留する「沿岸滞留群」と、黒潮-親潮移行域から千島列島東方沖の亜寒
帯水域におよぶ広範な海域を回遊する「沖合回遊群」があることがわかっています。
この「沖合回遊群」は、稚幼魚期に広大な海域を生育場として資源量を増大させる
潜在的能力がある一方、環境変化の影響を受けやすいため、漁獲対象となる資源に新
規に添加する量である加入量の年変化が大きくなり、太平洋系群の資源動向を左右し
ます。
秋季の千島列島東方沖の索餌場における 0 歳魚の分布密度は、加入量の指標となる
ことが明らかになっており、この密度が比較的高かった 2010 年生まれは、2011 年以
降の北部太平洋海域のまき網漁業の好漁をもたらしました。その後、2011~2014 年生
まれも加入量が多く、2014 年にかけて漁獲量は緩やかな増加傾向にあります(図1)。
このような状況下で、今回(2015 年秋)、千島列島東方沖で実施した調査から、中層
トロールによる採集尾数は、近年で最も多かった 2010 年を上回ることが分かりまし
たので、ご報告します(図2)。
今回の調査における CPUE(有漁調査点の中層トロール 30 分 1 操業当たりの採集尾
数)は、2014 年以前を大幅に上回り、計量魚群探知機で推定した分布密度も、比較的
高かった 2010 年を大幅に上回りました(図3)。
これらの結果から、2015 年生まれの千島列島東方沖における分布密度は、近年にお
いて高かった 2010 年生まれよりも高く、2015 年生まれの加入量は 2000 年以降では卓
越して多いと判断されました。これは親魚量の着実な増加に加えて、仔稚魚の生残に
関わる環境が好適だったためと考えられますが、その環境要因などについては、今後、
詳細な解析が必要です。
マイワシの資源量は、数十年ごとに地球規模で起こる海洋環境のレジーム・シフト
(用語参照)と同期して変動し、北西太平洋の寒冷レジームで資源が増大したことが
知られています。寒冷レジームでは、餌料環境等がマイワシにとって良好になり、稚
仔魚期の生残率の高い年の頻度が高くなると考えられます。過去の資源動向からみて、
1980 年代のような高水準期へ移行するためには寒冷レジームとなる必要があると考
えられます。
東北大学の須賀教授、杉本助教の研究によると、2014 年から 2015 年にかけて約 20
年ぶりにレジーム・シフトが起こった可能性が指摘されています。2015 年生まれの加
入量の多さは、本格的な資源増加期に入るきっかけとなるかもしれません。
現在、当センターと都道府県水産試験研究機関は、加入量の早期把握および産卵場
の変化等の現象の把握が可能な調査観測体制を維持しており、顕著な変化が認められ
た場合には迅速に状況を把握することが可能であると考えています。
調査結果は速やかに結果を発信し、マイワシを利用している漁業関係者の経営等に
役立てられるようにしていきます。
なお、本調査は水産庁の我が国周辺水域資源評価等推進委託事業の一環として実施
されています。
用語説明
計量魚群探知機
魚の種類・大きさ・尾数等が推定可能な魚群探知機
レジーム・シフト
大気・海洋・海洋生態系から構成される地球表層システム
の基本構造(レジーム)が数十年間隔で転換(シフト)すること。ここでは寒い
年が数十年継続する期間を寒冷レジームと呼ぶ。
図1.マイワシ太平洋系群の漁獲量の推移
漁獲量(万トン)
300
20
250
15
200
10
150
5
100
0
50
0
1975
1980
1985
1990
1995
2000
2000
2005
2010
2005
2010
図2.中層トロール漁獲調査による0歳魚の漁獲分布
加入豊度の高い年(2010年)と2015年の比較
2010年
10℃
15℃
15℃
20℃
20℃
25℃
高豊度年
2015年
12℃
15℃
15℃
20℃
20℃
25℃
25℃
図3.千島列島東方沖における0歳魚のCPUEと分布密度
中層トロール漁獲調査および計量魚群探知機による音響資源調査結果
CPUE(尾/網)
3,000
CPUE平均値
CPUE中央値
分布密度
150
100
2,000
50
1,000
0
20
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
*2015年の分布密度は暫定値
0
分布密度(千尾/km2)
147*
4,000