講義ノート09_アンペールの法則

物理学序論2 (電磁気学入門)
第9講 151127
アンペールの法則
1
電流と磁場
電流は磁場を作る。
向きは磁石を置けば判る。
磁場の強さ:別の電流を置いて測る。
直線電流の作る磁場の向きと強さ
磁場の方向を決める右手ルール
2
ビオとサバールは直線状の針金に電流を流し、
細い糸に吊した磁針を用いて電流の周りに生じる磁場の強さを測って
ビオサバールの法則を得た.
電場におけるクーロンの法則に対応。
ビオ・サバールの法則
垂直成分のみ寄与
3
ビオサバールの法則応用例1: 長い直線電流の作る磁場
i
無限に長い* 直線電流は直線の方向 (z 方向)に沿って一様であるから
対称性により 磁場は z に依存しない.
軸対称性を持つから磁場の(最終結果の)強さは 電流からの
距離 R だけの関数となるはずである.
方向は,右手ルールを使えば電流の上流から見て
時計回りとなる.
図のように s の距離にある ds からの寄与は sinq = R/(s2+R2)1/2
を使えば
B
*
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
*無限に長いといえども閉じた電流である.ただし,距離 R からの寄与は 1/R2 に比例するので,
半径 R の半円周で積分しても, 全体の寄与は 1/R に比例し,R ∝で消えるので無視できる.
4
2本の平行電流に働く力
電流 ia が作る磁場 Ba は,ib の地点で下向き
Fba= ib L x Ba
Fab = ib L Ba sin 90°=m0L iaib/2pd
方向は,電流 ia の方向.
平行電流は引力,反平行電流は斥力
レールガン: 物体を短時間に加速する装置
平行なレール(導体)の片方に大電流を流すと,
電流は導電性のフユーズを通り他方のレールを通って元に戻る.
フユーズは解けて導電性の気体となる.
大電流により両レールの間には下向きの磁場があるので,
気体を流れる電流に力を及ぼし,フユーズの隣に置いた物体
には外向きの力がかかり発射される.
最大 5x106 g (5トン) の物体が 1ms の間に 10 km/s の速度にまで
加速される.
5
電流単位:アンペアの定義と m0の次元 (MKSA単位)
6
ビオサバールの法則の応用例2: 円弧電流
電流は必ず閉回路を作るので,電流素片が単独であることはなく
一般的には計算は難しい
しかし,導線が円弧で,点 P が曲率円の中心にある時は簡単に計算できる.
教科書p166, 例題30-1 :
図(a)の場合,導線を3つに分けて各々からの寄与を
別々に計算し重ねあわせの原理を使って足し算する.
(1) 区間1 の寄与:ds とそこから中心へのベクトル r
のなす角はゼロ.
(2) 同様に B2 =0
(3) 区間2では,各点において ds と r のなす角は
直角である.磁場の向きは右手の親指を
電流方向にとったとき,他の丸めた指の方向であるので
図では紙面下向きとなる.円弧3の長さは全円周の1/4であることを使うと
7
ビオサバールの法則の応用例3: 環電流が中心軸に作る磁場
単ループの電流が軸上に作る磁場を考察する.
図でわかるように電流素片 ids が,中心から z の距離
にある地点に作る磁場 dB は ds と r に垂直であるが
軸対称性から軸に垂直な成分は円の反対側にある素片
の寄与と相殺するので,軸方向の成分のみを
足し合わせればよい
∫ds = 2pR を使えば
ただし, A = p R2 は円リングの面積である.
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なお、これは電気双極子の式 E=(1/4pe0)[{3(p・r)r-pr2}/r5] に [p= (0,0, p), r = (0,0, z)] を入れて
得られる式 Ez= (1/4pe0)(2p/z3)に,1/e0 → m0, p = qd → m=iA の置き換えで得られる式と一致する .
8
すなわち、環電流が磁気能率であることの一つの証拠となる。
ビオサバールの法則の応用例4: 無限に長いソレノイドコイルの中心磁場
例題3で計算した環電流の作る磁場を重ねると
ソレノイドコイルの作る中心磁場が判る.
単位長さ当たり導線の巻き数を n とすると,
ソレノイドの長さ dz の部分の巻き数は ndz となる.
ここの電流が図の P 点に作る磁場は,前例の結果
を用いると
これをソレノイド全体にわたり積分すると
9
アンペールの法則:
C は任意の閉曲線で, A は C を境界とする任意の平曲面,
i は平面を貫く電流, J は電流密度.
閉回路に沿って、 磁場の接線成分を積分した量は
閉回路を貫く電流の代数和に等しい。(符号は右手ルールによる)
A
C
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
証
明:
ステップ1:無限に長い直線電流を中心とする円周経路で
成り立つ  OK.
ステップ2: 長い直線電流と同じ中心軸を持つ同心円から
2本の中心線で切り取った任意の台形ループで,
証明:
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ステップ3: 直線電流を中心とする円に,ステップ2の
台形経路をつなげても,積分値は変わらない [右図(a)].
ab 部分は元の円弧と台形の寄与が相殺して消える.
a’b’ 部分を持ち上げてa’’b’’ にしても,aa’’,bb’’ では
磁場が垂直なのでやはり積分値は変わらない [右図(b)] .
ステップ4: 微小台形を少しずつ加えて経路を広げて
(減じて)行けば, 任意の経路を実現できるが,
それでも積分値は不変である.
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
説明:右下図は中心軸を等しくする任意の数の
微小台形図形をつなぎ合わせることにより,
任意の形に経路が変更可能であることを示したもの 。
この変形は同一平面で行ったが,3次元的な変形
も可能である.
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
すなわち,
元の円型線積分から経路をどのように変えても
電流が貫く限り線積分の値は変わらない.
ステップ5: 磁場は電流との相対位置により決められるから,
積分経路の代わりに電流経路を曲げても良い.
すなわち,
直線電流の制限ははずして良く,どんな形の電流回路でも成立する.
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ステップ6: 重ねあわせの原理により,任意の数の電流を加えても良い(代数和).
すなわち連続極限で
ステップ7: 最後にストークスの定理を使えば,微分型のアンペールの法則を得る.
ビオ・サバールの法則からアンペールの法則を導いたが、
アンペールの法則からビオサバールの法則を導くことも可能 (証明省略)。
両法則は数学的に同等である。
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磁場の構成には閉ループの外にある電流も寄与するから,
閉ループによるアンペールの法則だけからは,磁場の全容をつかめない.
しかし, 対称性の良い電流配置では有用性がある.(電場におけるガウスの法則と同じ).
静電場では,ガウスの法則を補う法則として, 電場は渦無し(∇x E = 0)という法則があった.
静磁場では, ビオサバールの法則がクーロンの法則に対応し
アンペールの法則がガウスの法則に対応する.
アンペールの法則を補うものとして,磁場におけるガウスの法則 (∇・B = 0 ) がある (後述).
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アンペールの法則の応用例1
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アンペールの法則応用例2: ソレノイド磁場
(a)
(b)
(c)
(d)
円リングをらせん状に連ねた長い導線を流れる電流の作る磁場
(a) 円リングの近傍では直線電流と見なせるので磁場は同心円
隣り合う巻線間では磁場は打ち消し合う
離れたところではつながって平行になる
(b) 内側では反対側電流の作る磁場と同方向なので強め合う
外側では対抗電流の作る磁場と逆方向なので弱め合う.
コイルから離れた遠くでは非常に弱くなる. (棒磁石と同じ)
(d) 巻き線が密で十分長い理想的なソレノイドでは,
外へのもれがなくなり,磁力線の連続性を考慮すると
外の磁場はゼロとなる*.
(d) 対称性を考えて磁場は長軸方向に一様となる.
図のようなアンペールループを考える.
単位長さ当たりのコイルの巻き数を n とすれば,ループを
貫くコイルは nh 本有り,電流は ienc= i(nh) .
辺 cd の磁場はゼロ,辺 bc, ad は磁場に垂直なので,いずれも
寄与しない. アンペールの法則は
∫Bsds = Bh = m0inh
すなわち
B = m0in
これは,ソレノイド内の何処でも同じ.
すなわち,磁場の中心軸からの r 依存性はない.
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* 別途計算したソレノイドの中心磁場の値(B = m0in)を使い、
アンペールの法則を適用すれば、 この議論は厳密に成立する。
アンペールの法則応用例3: トロイドコイルの作る磁場
トロイドはソレノイドの両端をつなげた中空のドーナッツ型
コイル.
磁場はコイル内に閉じ込められていて,同心円を描く.
方向は右手のルール/コイルの向き(⦿がこちら向き,
⊗が向こう向き )に右ねじの進む方向
アンペールのループを図のようにとれば, 積分方向は
時計回りが正.
総巻き数を N とすると
アンペールの法則により
(B)(2pr) = m0iN
これより
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
注: ソレノイドと違い、磁場の強さは r に依存する。
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磁気に関するガウスの法則
復習: 電場におけるガウスの法則
S2
閉曲面を通る全フラックスは,内部にある発散源に等しい (S1),
正負の発散源=電荷:電力線を生み出す.
電気力線は正電荷に始まり負電荷に終わる.
発散源を含まない閉曲面を通る全フラックスはゼロである (S2),
S1
磁場における磁力線の特徴:
発散源・吸収源がなく連続である.
 磁力線は保存される.
 閉曲面を通る磁力線の全フラックスは常にゼロである (S3).
磁場におけるガウスの法則:
ガウスの発散定理を使えば
これは磁荷(別名:磁気単極子=モノポール)
が存在しないことを意味する.
(ガウスの発散定理)
S3
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磁気双極子 (magnetic dipole)
物質の電気的性質を理解する基本概念は電気双極子と磁気双極子:
誘電体は電気双極子の集合体、磁性体は磁気双極子の集合体とみなすことができる.
磁気双極子は歴史的には,NとSという正負の磁荷対として.
正負の電荷対の電気双極子に対応するものとして理解された.
この対応は数学的に構成することもできる(古い電磁気学教科書の扱い).
現代の教科書は,磁場は運動する電荷(電流)により作られるという
実体を重視する考え方に基づいて組み立てられている.
磁気双極子の実体が閉ループ電流であることを理解するための学習ステップ.
(1) 電気双極子と閉ループ電流の作る磁力線が一致することを定性的に理解する
(2) 閉ループ電流は,磁場によりトルク(回転力)を受ける.
(3) 閉ループ電流の中心軸上の磁場が,電気双極子の作る電場と一致する
(4) 最後に磁気双極子の作る磁場が,電気双極子の作る電場と一致することを証明する.
(採用教科書では (1)-(3)までを扱っている.)
電気双極子と磁気双極子は次の置き換えで対称
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磁気双極子:円リングの作る磁場と電気双極子の作る電場は遠方では同一形
電気双極子の電気力線 (赤線)
円リングの作る磁力線
仮空磁荷の作る磁力線
磁力線は磁荷が作ると考えても
同じ分布が作れる
電気力線と磁力線の分布が同じ
棒磁石の作る磁力線
N
棒磁石の本体は微小電流
ループの集合体
S
短いソレノイドの作る磁力線
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閉ループカレント(磁気双極子)に働くトルク (再掲)
磁力は|F|= |iL x B|と表されるから, 各辺に働く力 は
(Lは線素ベクトル)
F1 = iaBsin90°
= iaB
F2 = - ibBsin(90 °- q) = - ibB cosq
F3 = - iaBsin90°
= - iaB
F4 = ibBsin(90 °- q) = ibB cosq
F2とF4 は辺2,4の中心を結ぶ線を通るので正味のトルクはゼロ
F1とF3 の力は,ループが傾いていることにより,トルクを発生させる
トルク t = iaB x (b/2)sinq + iaB x (b/2)sinq = iabBsinq = iAB sinq
m=iAn を磁気双極子モーメント(ベクトル)という (A は閉ループの面積).
ループの法線ベクトルは右ねじが進む方向 (右手ルール)
トルクはループの法線ベクトル n が磁力線に垂直 (q= p/2)のとき最大で,
ループの法線ベクトル n が磁力線に平行(q= 0)のときゼロとなる.
閉ループ電流は
面積が同じであれば
遠方では形を問わず
磁気能率 m=iA を持つ
磁気双極子となる。
(a) ループの鳥瞰図 (b) x 軸方向から見た側面図
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円リング電流は磁石と等価であるから、磁場中に置けばトルクを受けて、
磁場の方向に向こうとする。
磁場が他の磁気双極子(磁石)により作られている場合、磁石の横の磁場は
磁石の方向と逆であるから、二つの並列の磁石は逆方向に並ぶ方が安定する
(エネルギーが低い)。逆向きはエネルギーが高い状態。
反発しあう
不安定配位
引き合う
安定配位
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ベクトルポテンシャル
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B=∇x A の証明… 積分変数 r’と微分変数 r は独立なので微分と積分は交換可能
であることに着目する.
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ベクトルポテンシャルの応用例1:
長方形閉ループ電流の作る磁場
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