電磁気学 I

<平成28年度前期>
前回のまとめより
外部磁場中に置かれた電流が流れる直線状導体に作用する力
F = Il × B
(29.5)
[ I:電流, l :電流方向の長さlのベクトル, l :導体の長さ
B:磁場(磁束密度)]
電磁気学 I
外部磁場中に置かれた電流が流れる微小要素に作用する力
dF = I ds × B
(29.6)
[ ds:導線上の微小要素 (I dsは電流要素という) ]
任意形状導線に作用する合力を求めるには上式を積分
第14回
○一様な外部磁場中の電流が流れる任意形状のループに作用する
正味の磁気力・・・ゼロ
井上 真澄
○一様な外部磁場中の電流が流れる任意形状の有限な導線に作用
する正味の磁気力
(29.9)
F = I l′× B
[ l´ :導線の始点から終点に至るベクトル]
一様な磁場中でループ電流に作用するトルク
内容:
14. 磁場中でループ電流に作用する力
一様な磁場中でループ電流に作用するトルク
長方形のループ面と平行に一様な磁場が存在する場合,
長方形のループ面の法線が磁場と角度θをなす場合,
ベクトルでのトルクの表現,
ループ電流と棒磁石の類似性
電流I
電流Iが流れる長方形のループ面と平行に一様な磁場が存在
する場合
長さaの2辺・・・磁場に平行
ds × B = 0
→ 作用する力はゼロ(∵ )
長さbの2辺・・・磁場に垂直
→ 作用する力の大きさは F1 = F2 = IbB
F1:左側の辺に作用する力
(紙面の裏から表の向き)
F2:右側の辺に作用する力
(紙面の表から裏の向き)
正面から見た図
ループを下端qrから見た図
ループが点Oのまわりに回転できる回転軸を持っていれば,ループは回転。
電流I
電流Iが流れる長方形のループ面の法線が磁場と角度θをなす
が流れる長方形のループ面の法線が磁場と角度 をなす
場合
ループを下端qrから見たときに
ループを時計回りに回転させる
トルクτmaxを生ずる
a
a
+ F2
2
2
1
a
a
= ( IbB) + ( IbB) = 2 × IabB
2
2
2
= IabB
τ max = F1
ループの面積A = abを用いると
τ max = IAB
正面から見た図
(29.11)
電流を反転させると作用する力の向きが反転
→ 回転の向きは反時計回り
ループを下端qrから見た図
長さaの2辺 ・・・作用する力F3とF4は共通の
原点を通り,大きさ同じで
反対向き
→ 相殺してトルクを生じない
ループを下端qrから見たときにループをO
のまわりに時計回りに回転させるトルクτは
・磁場がループ面と平行のとき( )
θ = 90°
→ トルクは最大値 IAB
長さbの2辺 ・・・磁場に垂直
→ 作用する力の大きさは
F1 = F2 = IbB
F1:左側の辺に作用する力
F2:右側の辺に作用する力
a
a
τ = F1 sinθ + F2 sinθ
2
2
a
a
= ( IbB) sin θ + ( IbB) sin θ
2
2
= IabB sin θ
= IAB sin θ
・磁場がループ面に垂直のとき( )
θ = 0°
→ トルクはゼロ
ベクトルでのトルクの表現
τ = I A× B
(29.12)
ループ電流と棒磁石の類似性
A:大きさがループの面積に等しくループ面に
垂直なベクトル
(Aの向きは右手系規則で定義(右図),
あるいは,電流の方向に右ネジを回し
たときにネジが進む向き)
積IAをループの磁気モーメント(磁気双極子モーメント)µと定義
µ = IA
(29.13)
単位:A•m2
棒磁石が作る磁場
磁気モーメントを使うとトルクは
τ =µ ×B
ループ電流が作る
磁場
実験による磁場
パターン
(29.14)
(磁場がどの方向を向いていても,ループが任意の形状でも成立する)
コイルが同じ方向にn巻きある場合 → トルクは1巻きのループのn倍
[例題29.3](コイルの磁気モーメント)
<参考>
大きさが5.40 cm×8.50 cmで巻数25を持つある長方形コイルがある。
コイルには15 mAが流れる。
(a) コイルの磁気モーメントの大きさを計算せよ。
(b) 大きさ0.350 Tの磁場がループ面に平行に加えられると仮定する。
このループに作用するトルクの大きさはどれほどか?
<解>
(a) 電流をI,ループ面積をAとすると1巻きの磁気モーメントの大きさは
µ = IA
N巻きのコイルの磁気モーメントの大きさは
µ coil = Nµ = NIA
= (25)(15×10−3 [A]){(5.40 ×10−2 [m])(8.50 ×10−2 [m])}
= 1.72 ×10−3 [A ⋅ m2 ]
(b) トルクは τ = µ coil × B
ベクトルµcoilはループ面に垂直で,磁場がループ面に平行ならばBは
µcoilに垂直
−3
2
∴ τ = µ coil B = (1.72 ×10 [A ⋅ m ])(0.350 [T])
= 6.02 ×10−4 [N ⋅ m]
これはガルバノメータ(電流計や電圧計の主要部に使われる)の
コイルの動作の基本的原理になっている。
まとめ
ループ電流(1巻き)の磁気モーメント
ループ電流( 巻き)の磁気モーメント
µ = IA
(29.13)
[ I:電流, A:ループの面に垂直なベクトル, (|A|はループの面積に等しい)]
一様な外部磁場中に置かれたループ電流に作用するトルク
(29.14) (29.12)
τ= µ × B = IA × B
[ µ:ループ電流の磁気モーメント,B:外部磁場
I:電流, A:ループの面に垂直なベクトル]
コイルが同じ方向にn巻きある場合
→ 磁気モーメントおよびトルクは1巻きのループのn倍