十和田市立中央病院における緩和ケアの変遷、そして、これから

十和田市立中央病院における緩和ケアの変遷、そして、これから
十和田市立中央病院 緩和ケアチーム
◎太田緑
八重樫学
【はじめに】
我が国のがん対策については、平成 18 年の「がん対策基本法」および「がん対策推進基本計画」
(平成 24 年)
に基づき、進められている。がん診療連携拠点病院は、全国どこでも質の高いがん医療を提供し、患者と家族
が納得して治療を受けられる環境の整備やチーム医療の体制整備が求められている。地域がん診療連携拠点病
院である十和田市立中央病院も、2011 年に指定を受け、緩和ケア提供体制の充実を図ってきた。2006 年のチー
ム設立時よりも、院内や地域に「緩和ケア」が浸透してきたと感じている。今回、緩和ケアチームの活動を振
り返るとともに、自施設の「緩和ケア」の変遷をまとめたので報告する。
【内容】
今年、十和田市立中央病院(以下、当院)の緩和ケアチームは 10 年目を迎えた。当院の緩和ケアチームの設
立は 2006 年で、県内では最も早くからチーム活動を行っている。2011 年には、地域がん診療連携拠点病院に指
定された。緩和ケアチームは指定要件を満たすだけでなく、当院独自の活動も展開している。また、現在は要
件となっているリンクナースの配置や地域の多職種との連携も早い時期から行っている。今回、当院の緩和ケ
アや緩和ケアチームの歩みを振り返ったとき、緩和ケアチーム設立より遡ることさらに 10 年。そこに、当院「緩
和ケア」の源流、
「十和田緩和ケアを考える会」の存在があった。一般病棟の看護師とその仲間が自主的に発足
したサークルである。年月が過ぎ、時代と共に、病院も、スタッフも変わり、今や 20∼30 年前を知る人も、語
る人も少なくなった。この 20 余年で、治療や薬剤は、格段に進歩している。当院の有痛率も、年々減少してき
た。しかし、本当に患者さんのつらさは、楽になっているのだろうか。本当に自分らしく生きる支援ができて
いるのだろうか。症状緩和が強調される一方で、おろそかにしていることはないだろうか。緩和ケアは、緩和
ケアチームや一部の医師・看護師、緩和ケア認定看護師に任せておけばよいという風潮はないだろうか。
歴史や先人から学ぶという手法を用いて、当院の緩和ケアの変遷を振り返り、これからの緩和ケアを考えた
い。
【結果】
治療や薬剤など(キュア)が、どんなに進歩しても治せない、助けることのできない命はある。そして、何
よりも生きているものは、誰もが、いつかは必ず死を迎える。医療の進歩が変わりゆくものだとすれば、変わ
らないものもある。それは、
「治すことはできなくても、癒やすことはできる」ということである。
患者のつらさに気づき、思いやり、人として人の気持ちに寄り添うこと(ケア)は、誰にでもできる。
緩和ケアは、特別なケアではない。特別な治療技術や薬剤、まして、時期や場所のことでもない。緩和ケア
は、決して専門性の高い医療者だけが行うものでもない。患者の目の前にいる一人一人の医療者が、緩和ケア
を提供することが必要である。しかし、一人ができることには、限界がある。チームとして、多職種で関わる
ことが重要である。
【まとめ】
緩和ケアにおいて重要な視点は、①一人ひとりの生き方を支えること。②楽に生きることを支えること。③
介護者や家族を支えること。④チームで支えること。⑤「支えること」で自らも「学ぶ」ことである。
緩和ケアの原点は、
「人間の尊厳を守ること」=「人を人として遇すること」である。
これからも原点を忘れずに、一人ひとりがケアに真摯に向き合い、チームで活動していくことが重要である。