循環器緩和ケアへの取り組み 循環器緩和ケアとは がん医療の分野では 『緩和ケア』 という言葉は世間に広く浸透しています。 一方で重症心不全は、がんと同様に終末期の症状が強く、生活の質が著しく損なわれるにも関わらず、 これまでは積極的治療ばかりが重視され、緩和ケアの恩恵を受けることは非常にまれでした。 しかし、超高齢化時代を迎え、生命予後だけでなく、 心不全患者の生活の質をも重視した新たな医療体系 の確立が求められるようになりました。また、心不全は 予後予測が困難で最期は比較的急速に終末期に至る という病みの軌跡の特徴があり、比較的元気なうちか ら 『Advance Care Planning』 (今後どのような医療を受 けたいか等について話し合うプロセス)を行うことが患 者・家族の望む終末期医療の実現において重要であ ることが分かってきています。 そうした背景から、専門性を持った多職種協働により患者の問題解決を試みる循環器緩和ケアチームの 存在が求められるようになりました。 循環器緩和ケアを循環器内科医が担う意味 心不全の症状緩和の実践においては、まずそれまでの心 不全治療の経過を適切に評価する必要があります。 なぜならばエビデンスに基づいた適切な治療自体が、症状 緩和をもたらすからです。 また、循環器疾患では、終末期になっても機械的循環補助 や心臓移植などの積極的治療で改善する選択肢が残され ることが特徴であり、その適応を適切に判断する専門性も 求められます。 当科の取り組み 2015年5月より当院緩和ケアチームと協働し、循環器 内科医師、緩和ケア科医師、精神科医師、看護師、薬 剤師、理学療法士、MSW等で構成される多職種チー ムによる循環器緩和ケアへの取り組みを始めました。 我々は末期心不全患者の全人的な苦痛に対する緩和 ケアの提供だけでなく、当院心臓血管外科とも協力し、 補助人工心臓の装着や心臓移植医療に進む可能性 がある重症心不全患者への意思決定支援や日常生活 のサポート等にも取り組んでいきます。 また、循環器緩和ケアの啓発活動を行うとともに、地域 の開業医の先生方と連携してより良い末期心不全の 在宅医療も進めていく予定です。 (柴田龍宏)
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