経営幹部からMDMの支援を獲得する ためのレシピ

ホワイトペーパー
経営幹部からMDMの支援を獲得する
ためのレシピ
不良データの隠れたコストを明らかにし、データガバナンスへの投資による
収益増加を定量化し、業務部門に対してMDM投資を説得するための3つのア
クション
本文書にはInformatica
Corporation(Informatica)の機密情報、専有情報および企業秘密
情報(以後、「機密情報」とします)が含まれており、Informaticaによる事前の書面による
承認を得ることなく、いかなる手段においても、本文書をコピー、配布、複製、複写する
ことを禁止します。
本文書の情報が正確かつ完全であるようにあらゆる試みを行っていますが、誤植
ま た は 技 術 的 に 不 正 確 な 部 分 が 存 在 す る 可 能 性 が あ り ま す 。 Informaticaは 、 本 文 書
に含まれる情報の使用から生じるいかなる損失に対して一切の責任を負いません。
本文書に含まれる情報は、予告なく変更されることがあります。
こうした資料で検討している製品特性をInformaticaソフトウェア製品のリリースやアップグ
レードへ採用することは、リリースやアップグレードの時期と同様に、Informaticaが独自
に決定します。
以下の米国特許の1つまたは複数の特許によって保護されています:6,032,158; 5,794,246;
6,014,670; 6,339,775; 6,044,374; 6,208,990; 6,208,990; 6,850,947; 6,895,471;また
は以下の申請中の米国特許:09/644,280; 10/966,046; 10/727,700。
2014年3月発行
ホワイトペーパー
目次
概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
不良データの隠れたコスト . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
ビジネスケースの構築 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
関係者の特定と組織化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
インタビューの準備と実行 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
表1:インタビューの準備 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5
IT管理者向け質問例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5
データ管理者向け質問例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
顧客サポート担当者向け質問例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
発見の成果を分析し、ビジネスケースを構築する . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
表2:利点の概要例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
表3:利点の詳細 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
「語る」より「見せる」 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
ケーススタディ:AutoTrader.comにおけるMDM価値の推進 . . . . . . . . . . . . 10
MDMベストプラクティス:成功を収めた顧客からの価値の導出 . . . . . . . . . . . . 11
今すぐ始めましょう . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12
経営幹部からMDMの支援を獲得するためのレシピ
1
概要
The Conference Board CEO Challenge 20141の調査において、企業の経営幹部に、現在直面している最重
要課題とその順位、またそれらに対処するための戦略について質問しています。本調査で、上位にラン
クされた課題には、人的資源、顧客関係、革新、業務の卓越性、企業ブランド、評判などがありました。
しかし興味深いことに、「マスターデータ」は欄外でした。
経営幹部はマスターデータ管理(MDM)のテクノロジー自体をよく理解していないかも知れませんが2、
企業情報管理戦略の開発と実装を担うITエキスパートなら、社員、顧客、製品、サプライヤー、その他
CEOにとって重要なほとんど全てのイニシアチブにおいて、マスターデータの参照整合性が重要な基
盤であることをよく知っているはずです。ITエキスパートに共通の課題は、MDMやそれに関連するデー
タガバナンスの投資の経済価値を定量評価して、経営陣から資金と支援を得られるような方法を見つけ
ることです。「IT部門はMDMのアイディアを推進しますが、その経営上の利益が明確でないために、経
営サイドが乗り気にならないというのは、非常によくあることです」と、ガートナーアナリストのTed
Friedman氏3 は述べています。
経営陣の多くは「データに問題」があることに気が付いています。しかし残念なことに、問題の性質や、
深刻さ、経済的な悪影響については理解していないことがほとんどです。ITエキスパートは、整合性のな
いマスターデータが引き起こす問題の性質や影響力について深く理解していますが、その問題の重要度
を財務的な観点から数値化できずにいます。このことが、投資の提案を非常に困難なものにしています。
本ホワイトペーパーでは、マスターデータ管理にかかるコストを数値化する方法を検討し、ITエキスパー
トとしてビジネスケースを構築するための、3つの具体的なアクションを提案します。
不良データの隠れたコスト
経験豊富な管理者なら誰しも、マスターデータ管理に関する何らかの問題に遭遇したことがあるはず
です。営業管理者は、地域別の売上予測値の合算が、財務部の総計と合わないという事態に頻繁に遭遇
します。一方で、多数の国で事業を行い、フルタイムやパートタイムに加えて各種形態の契約社員を雇
用するグローバル企業の人事幹部は、一貫性のある方法で正しく人員を計算するという最も基本的な課
題に苦戦しています。
データの品質向上の必要性に関して経営陣の賛同は得られても、問題解決に必要な大規模なMDM投資の
承認を得ることは非常に難しいものです。これには大きな理由が2つあります。
2
1
The Conference Board CEO Challenge 2014
2
Are LOB Executives involved in MDM or is it Mostly an IT Initiative?2011 Informatica blog post
3
「Master Plan:Getting Your Money's Worth from MDM」TechTarget 2013
まず、データの断片化が引き起こすコストの多くは目に見えません。このような隠れ
たコストは、さまざまな形で存在します。例えば、価格のみでサプライヤーを選択す
ると、納品のスピードや業者間値引き、不良品率や配送手数料の優遇などで総合的に
コスト節減をもたらすサプライヤーと比較してみると、最終的には高くつくことがあ
ります。不良データで請求に誤りがあった場合、回収不能債権や、支払遅延によるキ
ャッシュフローの悪化、顧客に見捨てられる等の問題が表面化します。データ品質評
価を実施して、マスターデータの生成・消費が頻繁に発生するビジネスプロセスに関
与する個人へのインタビューを行うと、こんな言葉がよく聞かれます。
「 $50 の部品が支払拒否によって $100,000 のコストになることがあ
ります。」
「同じ顧客を何度も調査の対象にしなくても済むような仕組みがあ
ったら良いのに、と思います。特に印象を害してしまった顧客に対
しては。」
「設計コストと下位部品の維持コストを合算した構築コストとを一致さ
せるのに苦労します。」
MDM投資の承認を得るのが難しい2番目の理由は、ほとんどの経営陣が基盤となる
ITインフラストラクチャーの複雑さを理解していないことです。経営陣は、ひとつの
システムで問題が簡単にしかも安価に解決できると信じたがるのです。例えば、顧客
データが全てCRMシステムに入っていると信じていることがあります。実際は、マー
ケティング自動化システム、請求システム、財務計画システム、データウェアハウス、
ビジネスインテリジェンスシステムなどに分散していることを知らないのです。顧
客データは大抵、システムごとに異なる方法で定義・構造化され、同じ顧客に関する
データが複数のシステム間で重複して記録されていることがよくあります。
信頼できるマスターデー
タのビジネスケースの
構築
MDM投資の承認を獲得する
ための3つのステップ
1.プ ロ セ ス と 担 当 者 を 調
べ る : 業 務 部 門 と IT部 門
の主要な関係者を認識し
ます。
2.掘り下げる:ビジネスプロ
セス、データの障害、理想
的なシナリオ、成功を測定
するための基準を定義し
ます。
3.ベ ネ フ ィ ッ ト の 分 析 と 定
量化:発見したことを分
析し、ビジネスケースを構
築します。
ビジネスケースの構築
一貫性がなく、重複したマスターデータによって生じるコストを定量化し、MDM
のビジネスケースを構築するプロセスは、ビジネスケースそのものと同じくらい重要
です。IT部門と業務部門の両方にとって最も重要な課題に着目し、全ての関係者を巻き
込んだ目的論的な共同アプローチをとることが大切です。
では、コストを定量化してビジネスケースを構築するにはどうすればよいでしょうか。
まずは、予備調査を元に仮説を立て、その後計画的な調査分析を行うことです。調査
分析段階では、ビジネスプロセスとITインフラストラクチャーの現状の評価、あるべ
き状態の設定、そして成功測定基準の定義を含めましょう。
経営幹部からMDMの支援を獲得するためのレシピ
3
アクションアイテム
関係者の特定と組織化
プロセスと担当者を調べる:
主要な関係者を特定するため
の効果的な方法は、現在のビ
ジネスプロセスとITインフラ
ストラクチャーを調べること
です。現状に至った経緯、あ
るべき理想的な姿、組織構造
にどのような変化が必要か、
誰が影響を受けるかなどを検
討します。
IT部門と業務部門が連携することが非常に重要です。両部門の努力が不可欠であり、
プロジェクト成功の鍵は両方が握っています。IT部門は、マスターデータの精度と妥
当性を向上させる技術的な方法を知っています。業務部門は、ビジネスプロセスと、
それが業績評価基準に与える影響について知っています。両者のギャップを埋める
ため、IT管理者は、マスターデータの品質向上がどのようにビジネスプロセスの問題
解決に役立つかを示す必要があります。
例えば米国の大手エネルギー企業では、同社が設計、構築、管理する、数十万にのぼ
る資産の構成と所在地に関する課題を解決するため、MDMプログラムの開発に乗り出
しました。IT部門にはこの問題に取り組む大きな動機がありました。それは、複数のサ
イロに分散した低品質なデータのせいで、苦労して作成した分析の多くが無駄になっ
ていたのです。そのため、IT部門が提出するレポートやダッシュボードは、経営側から
拒否されたり問題視されることがよくありました。
経営側では、変電所、ブレーカー、メーターなどの関連データ、用語、位置情報が欠
如している為に、維持運用コストが正確に予測できませんでした。また、機器の障害、
不要な修理、罰金、納税義務などが、現場作業や財務部門に悪影響を及ぼしていま
した。さらに、ベンダーや資材に関するデータの重複や非整合性が原因で、サプライ
チェーンは、過剰在庫、不適切な割引、供給リスクなどの問題を抱えていました。
IT部門と業務部門の両方の関係者を巻き込むことで、MDMプロジェクトチームは、
データの品質に関してそれぞれが抱えていた問題を特定することができました。この
ように、両部門が、共通の動機と利益目標を持って問題解決に当たることができたの
です。その結果、両部門は、ビジネスニーズに合ったMDMテクノロジー戦略を策定す
ることができました。
インタビューの準備と実行
隠れた問題とチャンスを明らかにする最適な方法のひとつが、ビジネスプロセスの各
段階に関与する人々の中からサンプリングして、詳しいインタビューを実施すること
です。それには、包括的なインタビューリストを作成する必要があります。その際、
個人の経験年数や職責にかかわらず、複数組織にわたるあらゆる職能からサンプリン
グする必要があります。
インタビューの準備段階では、スプレッドシートに質問を書き込みます。このスプレ
ッドシートは、後で結果の定量化と分析に使用します。そして、職責ごとに質問票の
タブを分けます。例えば、IT管理者、データ管理者、顧客サービス担当者、リスクお
よびコンプライアンス担当者、マーケティング管理者、財務アナリスト、営業担当者、
その他プロジェクトで必要とされる全ての職責について個別のタブを作ります。各質
問票には、定量的な質問と定性的な質問の両方を含めます。表1に例をいくつか挙げ
ます。
4
表1:インタビューの準備
スプレッドシートを使って、職責ごとに個別のタブで質問票を準備することで、イン
タビューの回答、分析、結果の定量化データを1つのファイル内にまとめることができ
ます。ここに例示するのは、IT管理者、データ管理者、顧客サービスの担当者向けの
質問票ですが、取引の実行、リスク管理、マーケティング、財務、営業に関する質問
も含まれています。
IT管理者向け質問例
ソフトウェアライセンス:以下のうち、現在インストールしているソフトウェアはどれですか?
1
データクレンジング
ソフトウェア
ライセン
ス数
ソフトウェア 年間保守コ
を利用するア スト
プリケーシ
ョン
リアルタイ 年間郵便
ムコネクタ 管理コスト
のシステ
ム数
First Logic
Group 1
Platon
Trillium
その他1 __________
その他2 __________
最終ソリューションに使用するパッケージ?
2
顧客ハブ
ソフトウェア
ライセン
ス数
ソフトウェア 年間保守コ
を利用するア スト
プリケーシ
ョン
本稼働し
ているか
IBM
Initiate
Siebel
SAP MDM
その他1 __________
その他2 __________
3
階層管理ソフトウェア
階層管理が可能なソフトウェアを現在利用していますか?利用している場合、それは
何で、またどんなシステムがデータソースになっていますか?
インフラストラクチャーと開発
4
ディスク統合
プロジェクトの一環として、お使いのアプリケーション内の顧客データベースを共通ハブ
に置き換えることは可能ですか?可能な場合、それぞれの顧客データベースのシステム
とサイズを教えて下さい。
お使いのシステムは、顧客レコードをマージできますか?可能な場合、顧客データベース
のあるシステムと、顧客データベースの規模を教えて下さい。
経営幹部からMDMの支援を獲得するためのレシピ
5
5
開発努力
複数のシステム上でアカウントデータや個人データをサポートするために使用しているイ
ンターフェイス、開発予定のインターフェイス、データ品質のための標準アプリケーショ
ンのカスタマイズなどに関連した質問をしましょう。
6
人員
アナリストの人数、アナリスト1人当たりの年間コスト、開発者の人数、新しい開発者の
トレーニング時間などに関連した質問をしましょう。
7
統合プロジェクト(1年間に行われる統合回数。標準的な統合プロジェクトに必要な作業
日数。データ変換の標準的なコスト等。)
8
過去のプロジェクトのパフォーマンス向上(ROIを達成できなかったプロジェクト。CRM
導入を向上させるためのSWATチームイニシアチブの存在等。)
データ管理者向け質問例
現在の取り組み
1
複数のシステム間でのデータクレンジングのために現在行っている取り組みは何で
すか?
アクティビティ
リソース
年間コスト
手作業でのクレンジング
レコードのマージ
サードパーティサービス
Dun and Bradstreet
その他 ___________
2
データを最新の状態に保つために現在行っている取り組みは何ですか?
以下の内、現在案件のソースとなっているのはどれですか?また、現行ファイルと
データ照合する場合に使用できるソースはどれですか?
キャンペーンタイプ
年間購入レコード数
レコード単価
潜在ソース
Dun and Bradstreet
Cold Calling
AVOX
Axiom
サードパーティサービス
その他 ___________
現行プロセスの概要
3
マスターデータレコードの作成、更新、管理のプロセスを説明して下さい。その際
には、取引先データや個人データも含めて下さい。
4
データ管理に関する組織としての責任と、その作業に割り当てられた人員について
説明して下さい。
コントロール(例:データをコントロールすることで、どのようにSarbanes-Oxleyコンプラ
イアンスに準拠していますか?またその他の要件にどのように対処していますか?)
6
顧客サポート担当者向け質問例
1
コール処理:どのようにサポートを提供していますか?
オーダー入力方法
リソース
処理時間
顧客追加にか
かる時間
1件あたり
のコスト
電話
ウェブセルフサービス
その他1 __________
その他2 __________
カスタマーサービスDBの総アカウント数 ________
カスタマーサービスDBの総連絡先数 ________
不完全なデータや不正確なデータが顧客サービスエクスペリエンスに与える
影響を説明して下さい(不正確なメール、アップセルの失敗、低品質なサー
ビス、長電話等)
2
郵便料金(顧客サービスから顧客に郵送するものは何ですか?返送率はどのく
らいありますか?郵送システムはCASSの認可を受けていますか。その場合の
コストはいくらですか等。)
アクションアイテム
掘り下げる:業務部門とIT部
門の両方の関係者にインタ
ビューし、仕事の内容とそ
の方法を調べ、整合性のな
い異なるデータのせいで、
時間の無駄や問題が発生し
ているケースを特定し、プ
ロセスをどのように変えた
いかを聞き出します。職責
ごとにスプレッドシート
を用意し、インタビュー
する相手を決め、集中できる
場所で記録を取りながら話を
聞きます。
スプレッドシートには、職責ごとのインタビューに加え、組織全体に関する質問の
タブも作ります。質問のレベルは、会社が属する業界、年間売上高、現行のデータ
評価、ITトポロジーといった広範な問題から、営業、マーケティング、サポート、
財務といった特定の主要職能領域に関する詳細な問題まで様々です。また、他にもタ
ブを作成して、入力フィールドや、分析やビジネスケースの定量化を効率的に行うた
めの計算式などを入れておきます。
インタビューで、忌憚のない意見を聞き出し、客観性と信頼性を確保するには、社外
からプロのインタビュアーを雇うことが最も効果的です。社内でインタビューを行
うと、回答者が情報の開示を躊躇したり、社内的な政治や先入観のために情報が偏る
ことがあります。また、誰がインタビューを行うにせよ、回答者の反応について事前
に検討できるよう、インタビューの実施前に、トピックについてインタビュアーに伝
えておきます。インタビューによる知見を的確に捉えて伝える最良の方法は、聞き取
りの文言を記録しておき、キーポイントを効果的に伝えるような部分を引用すること
です。現場の声をそのまま伝えることで、ビジネスケースの信憑性と信頼性を高める
ことができます。
「もしテレフォニーシステムが顧客を特定して、コールセンターの画面
に主要アカウントと各クライアントのポリシーデータをあらかじめ表
示できたら、時間も大幅に節約になり、顧客のフラストレーションも
かなり減らせるはずです。」
「サービス管理システムと ERP システムは自動的に同期されるので、
ERP システムに記録された部品が自動的に上書きされることがあり
ます。このため、同じ部品に部品番号が4つも出来てしまうこともあり
ます。こうした部品番号の重複をなくすことは大きな改善余地です。」
「金具を1つ購入するだけで、30の倉庫で別の部品番号で登録されてい
ることがあります。」
経営幹部からMDMの支援を獲得するためのレシピ
7
発見の成果を分析し、ビジネスケースを構築する
インタビューと調査の結果得られた情報は、定量分析の材料となります。効果的なビジネスケースを構
築するには、コストと利点を定量化し、想定される機密性をテストおよび測定し、代替シナリオを評価
する必要があります。また、アクションを起こさなかった場合のコスト、つまりマスターデータの整合
性の欠如によって生じるコストも定量化する必要があります。
ビジネスモデルの一般的な要素には以下のようなものがあります。
• 潜在的な利点 – 何らかの業務領域に関連するマスターデータの品質が向上すれば、通常、複数の利点
が得られます。こうした利点は、定量化できるコスト削減(ハードベネフィット)と、客観的な定量
化が困難で掴みどころのない売上増加機会(ソフトベネフィット)に分類されます。例えば、製品の
マスターデータの品質を向上させれば、各種のハードベネフィットが得られ、総合的にサプライヤー
割引率が向上するでしょう。ハードベネフィットの例としては、早期支払による割引率の向上、支払
条件交渉のスピード化、不要なシステムの排除、下流検証プロセスの改善、情報検索時間の短縮など
が挙げられます。ソフトベネフィットの例としては、カスタマーエクスペリエンスが向上することで
顧客ロイヤルティが向上し、売上増加につながること等です。
• 利点毎の評価指標/KPI – ビジネスケースでは、高品質なマスターデータの価値を金額で表現し、同時
に低品質のマスターデータによる損失コストも示す必要があります。例えば、データの品質向上によ
ってコールセンターの費用が削減されることの価値は何でしょうか?マスターデータの品質が低いこと
によって失われる売上機会はどのように定量化すればよいでしょうか?各利点に対し、測定単位を定
義して下さい。例えば、サポートコール1件当たりのコスト、サポートコールの平均解決時間等です。
• 利点毎の目標財務価値の範囲。目標財務利益は、ひとつの値でなく、範囲で定量化します。これらは
通常、保守的(conservative)、楽観的(optimistic)、可能性が高い(most likely)の3レベルで表現さ
れます。
財務的な観点の分析結果は、最終的にビジネスケースが経営幹部に提出された際にはさらに精査され
ます。このため、モデル、前提条件、分析に使用する情報などは、関係者が賛同できるものでなければ
なりません。
表2:利点の概要例
MDM実装による利点の分析結果は、目標評価指標に対する範囲で示します。以下の表に、利点の例を
示します。
保守的
保守コストの削減
ITスタッフの労力の削減
規制に準拠した報告作成に関連する作業の削減
コンプライアンス関連コスト(罰金や監査)
の削減
航空貨物運賃の削減
売上に対する部品表コンポーネントコストの削減
工場・生産における想定外のダウンタイムの削減
年間利点総計
8
高可能性
楽観的
表3:利点の詳細
利点の評価指標は、概要とともに詳細も提示する必要があります。例えば以下に示すように、利点につ
いて説明し、それを支持する定量化データを示します。その際には、情報源と分析ロジックを明示して
下さい。
利点 # 11:売上機会損失によるロスの削減
X株式会社は、請求情報の誤りや、顧客、契約、設備維持費などに関する知識や関係情報の欠如に
よって、大幅な売上機会の損失(機会損失)が生じていると報告している。正しいデータを利用す
ることで、報告された8~9%の機会損失のうちのわずかな部分を修正するだけでも、その経済効果
は非常に大きなものになるだろう。
保守的
高可能性
楽観的
営業売上合計($B)
$10.128
$10.128
$10.128
報告された機会損失
8%
9%
10%
売上損失/年
$810,240,000
$911,520,000
$1,012,800,000
MDMによって回復される売上
1.0%
1.5%
2.0%
粗利益率
18%
18%
18%
年間金額
$1,457,600
$2,459,700
$3,644,000
ビジネスケース構築の目的は、プレゼンテーション(多くの場合は経営幹部の財務委員会に対して発表)と、
投資利益を客観的に示す財務資料を作成することです。効果的なビジネスケースを構築するには、既
存の問題と、MDM実装による利点の両方を定量化する必要があります。こうした利点は通常、売上
増加、コスト削減、生産性向上の3つに分類されます。
またビジネスケースには、直感的で理解しやすいが客観的には定量化できないような、定性的な利点も
含めます。例えばMDMプログラムは、監査報告、内部コントロール、データガバナンスなどを向上させ
るため、コンプライアンスのリスクを減らすことができます。また、データ品質が向上すれば、分析報
告の精度が増し、結果的に賢明な意思決定が可能となります。このような性質の利点についても必ず付
記することが重要です。ただし、経営幹部が投資の意思決定を支持しやすいように、より客観的で説得
力のある「ハードデータ」を優先すべきです。
プレゼンテーションを作成する際は、以下の要素を組み込みます。
• 概要 – 問題、機会、ソリューション、主要な成功評価指標(投資利益、正味現価、回収期間、年間財
務利益)を1枚のスライドにまとめます
• 目的と手法 – 主要な目的、関与者とその役割、プロジェクトの範囲(業務機能とITアーキテクチャード
メイン)、ビジネスケース手法の主な手順
• ビジネスの課題 – 現在のIT部門および業務部門の課題とそれに関連するコスト、売上、リスクの原因
• 観察と発見 – 発見した主な事実と、それを支持し強調するような回答者の談話からの引用
• ビジネス価値の定量化 – 5年間の計画対象期間における利点を金額として詳細に定量化し(保守的、
可能性が高い、楽観的の範囲を使ったシナリオ)、売上増加、コスト削減、生産性向上の3つに分類。
定量的利点もここに表示
• 比較 – 業界内の同等の企業と比較するための評価指標ベンチマークKPI
経営幹部からMDMの支援を獲得するためのレシピ
9
• ソリューション提案 – 機能説明、アーキテクチャー図、主要なプロジェクト前提事項、プロジェクト
のマイルストーンとスケジュール、プロジェクトの段階、その他の関連情報
• アナリストリサーチ – ビジネスケースをサポートするようなサードパーティのリサーチ報告
「語る」より「見せる」
価値を定量化するような、3~4の重要な数値を使ってポイントを強調します。3~4の数値とは、通常、
投資利益、正味現価、回収期間、年間利点(コスト節減または売上増加で表現)等です。以下のような
シンプルなグラフを使うと、ポイントをより明確に示すことができます。
㈈ົホ౯ᣦᶆ
ṇ࿡⌧౯(NPV)(14%)
$188,689,911
ᢞ㈨཰┈⋡(ROI)
3026.29%
ᴫ⟬ᅇ཰ᮇ㛫
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ኻ⽎ᦼ㑆5ᐕ㑆ߦ߅ߌࠆ೑ὐvsផቯࠦࠬ࠻
$40,000,000
೑⋉▸࿐
$35,000,000
ផቯࠦࠬ࠻
$30,000,000
$25,000,000
$20,000,000
$15,000,000
$10,000,000
$5,000,000
$0
0ᐕ
1ᐕ
2ᐕ
3ᐕ
4ᐕ
5ᐕ
ケーススタディ:AutoTrader.comにおけるMDM価値の推進
アトランタに拠点を置くAutoTrader.comは、課題を抱えていました。自動車ディーラー、消費者、メー
カーが使う自動車広告用オンラインプラットフォームである自社製の旧式のMDMシステムには、デー
タガバナンスという概念がなく、ひとつの顧客に複数の識別情報が設定されていました。例えば、某デ
ィーラーには27個もの識別情報が関連付けられていました。
同社のビジネス目標は、50,000件ほどの自動車ディーラー、メーカー、マーケティング会社で構成され
る顧客が、同社のウェブサイトを広告に利用することでした。そして、IT部門と業務部門の代表者で構成
されるチームが協力して状況を分析し、MTMイニシアチブのビジネスケースを作成しました。
10
本チームは、対象顧客数50,000に対し、自社開発のMDMシステムには275,000件の
顧客が登録されていることに気付きました。また、同一顧客に複数の識別情報が設定
されていただけでなく、顧客間の関係も混乱していて誰にも理解できないほどでした。
AutoTrader.com社のエンタープライズデータおよび共有サービスのシニアディレクター
であるScott Salter氏は次のように証言しています。「ディーラー、メーカー、広告代理店
などの顧客同士の関係は非常に緊密です。しかし、それらのつながりが理解できない状
態でした。フォードと日産のディーラーが何件あるのか、各ディーラー間の関係はどう
なっているのか、さらにどのマーケティング会社がどのディーラーを担当しているのか
も分からないことがありました。顧客相手の営業プレゼンテーションでは、ディーラー
のネットワークの広さを理解するだけで、貴重な時間が費やされていました。」
そこで、ビジネスケースの作成に当たり、コスト削減率だけでなく、売上増加予想に
重点をおきました。同社のSalter氏は次のように述べています。「Informatica MDMの
ビジネスケースには、重要な基準が2つありました。それは、広告収益の増加と、コス
ト回避です。私達は、Informatica MDMによって、この両方に百万ドル単位の違いが生
じると計算しました。」
アクションアイテム
利点の定量化。分析とインタ
ビューの結果は、MDM投資
によって実現される、ビジネ
ス上のハードベネフィットと
ソフトベネフィットそれぞれ
のリストにまとめます。結果
は、コスト削減と売上増加に
分け、保守的、楽観的、高い
可能性の3つの範囲の金額を
記載します。ハードベネフィ
ットの数値を支援するような
定性的な事実も含めます。
同社が実装したマルチドメインソリューションは、特に自動車業界におけるドットコ
ムの巨人のニーズに合わせて調整されており、顧客マスターだけでなく、自動車の在
庫管理やエンドユーザーの購買者も組み込みやすいものでした。本システムにより、
全社レベルで予防的なマスターデータガバナンスを導入することができ、また、業務
ユーザー、データ管理者、IT管理者は、マスターデータを迅速に作成して管理できるよ
うになりました。
さらに、MDMプロジェクトの第1段階の実施後すぐに、ビジネスケースで目標にした
利点の多くを実現することができました。同社のチームは、MDMの実装により、以下
のことが実現されたと証言しています。
• オンライン広告収入が数百万ドル単位で増加
• ディーラーや自動車メーカー各社が唯一の識別情報を持つようになり、データの信
頼性が向上
• データの妥当性、完全性、信頼性が増したことで、データ価値が向上
• 広告営業の効果が上がり、データコストが削減
• 顧客レコードの重複がなくなったおかげで、情報検索の手間と労力を省力化
• 全社的な予防的マスターデータガバナンスを導入
• 他の関連するMDMドメインの導入を通じて、将来的な拡張性を強化
MDMベストプラクティス:成功を収めた顧客からの価値の導出
MDMのビジネスケース構築の基本ステップは、あらゆる業界のあらゆる企業に適用可
能ですが、MDMの実装はそれぞれに大きく異なります。データに関する課題、ITトポ
ロジー、ビジネスプロセス、マスターデータ要件などは、組織によってそれぞれ異な
ります。
MDMを導入する際は、組織の人々、プロセス、データ、そしてテクノロジーインフ
ラストラクチャーに適用できるような、柔軟で多機能なビジネスモデルを採用するこ
とが大切です。また、正確で整合性のあるマスターデータの必要性は、ひとつの業務
機能に限定されたものではない点を理解することも重要です。例えば大企業では、顧
客マスターデータを、営業、マーケティング、財務、生産、さらにはサプライヤーや
パートナー間で共有することが多々あります。MDMプロジェクトの多くは特定の機能
領域のニーズに対処するために開始されますが、マルチドメインビジネスモデルと拡
張性の高いテクノロジープラットフォームを利用することで、組織内のニーズの拡大
に応じて、初期投資を無駄にしないまま、組織の他の部門にも費用効果の高い方法で
応用することができます。
経営幹部からMDMの支援を獲得するためのレシピ
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今すぐ始めましょう
ビジネスケースの構築を開始するための簡単で効果的な方法は、幅広い業界で数多
くのITエキスパートを支援してきたエキスパートの経験と能力を利用することです。
Informaticaは、特定の要件を満たすお客様に、Business Value Assessment(BVA)サー
ビスを提供しています。本サービスは、顧客ロイヤルティ、発注管理、リスク管理、
コンプライアンスといったビジネスの主な優先事項とプロセスをサポートし、信頼
できる優れたタイムリーなデータ維持に関するイニシアチブをIT部門が推進できるよ
うに、財務的な正当性を支援します。BVAプログラムは、クライアントおよびシステ
ムインテグレーターとの密接な協力の下で、計画、データプロファイリング(オプシ
ョン)、ワークショップ(インタビュー)、結果のプレゼンテーションの4つで構成
されます。詳細については、お問い合わせ下さい。
インフォマティカ社に
ついて
Informatica Corporation(NAS
DAQ: INFA) は デ ー タ イ ン
テグレーションソフトウェア
およびサービスにおける世界
No.1独 立 系 プ ロ バ イ ダ ー の
1社 で す 。 イ ン フ ォ マ テ ィ カ
のソリューションによって、
世界中の企業がデータから可
能性を引き出し最も重要な
ビジネスニーズを満たしてい
ます。Informatica Vibeは、イン
フォマティカプラットフォー
ム独自の「Map Once. Deploy
Anywhere」(一度のマッピン
グ定義でどこでも適用可能)
を支える、業界初にして唯一
の埋込み式の仮想データマ
シン(VDM)です。現在世界
5,000社を超える企業が、企業
内ならびにクラウドやソーシ
ャルネットワーク等の企業外に
保有する、あらゆるデバイス
やモバイル、SNSから集まる
情報資産(ビッグデータ)
から最大限の価値を引き出し、
活用することに成功してい
ます。インフォマティカに関す
る詳細はインフォマティカ・
ジャパン株式会社(代表
03-5229-7211)までお問い合わ
せいただくか、弊社 Web サイト
http://www.informatica.com/
jp/をご覧ください。
〒 162-0845 東京都新宿区市谷本村町 1-1 住友市ヶ谷ビル 13 階 電話:03-5229-7211(代表)FAX:03-5229-7623
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