低次元空間における異なる伝播速度をもつ 半線形波動方程式系について 太田 雅人 (埼玉大・理) n = 1, 2, 3, α ≥ 1, c1 , c2 > 0, c1 6= c2 とし (∂ 2 − c2 ∆)uj = |u1 |α |u2 |α , (x, t) ∈ Rn × [0, ∞) t j (1) u (x, 0) = ϕ (x), ∂ u (x, 0) = ψ (x), x ∈ Rn j j t j j または “同値な”積分方程式 (2) uj = Kc(n) [ϕj , ψj ] + Lc(n) [|u1 |α |u2 |α ], j j (x, t) ∈ Rn × [0, ∞) に対する small data global existence (SG) について考える. 以前, 久保英夫氏との共同研究 [KO] により, n = 3, α ≥ 1 のとき, c1 6= c2 ならば (SG) が成り立つことを示した. c1 = c2 のときは, 本質 的に, 単独方程式 (∂t2 − ∆)u = |u|2α と同じだから, (SG) が成り立つ √ ための必要十分条件は, 2α > p0 (n) である. ここで, p0 (3) = 1 + 2, √ p0 (2) = (3 + 17)/2, p0 (1) = ∞. 今回, 次の結果を得た. 定理 1 n = 2, 1 ≤ α < 3/2 のとき, c1 6= c2 でも (SG) は成り立た ない. n = 1 の場合は, 一般には (SG) は期待できないが, データを奇関数 に制限すれば, 次が成り立つ. 定理 2 n = 1, α > 1, c1 6= c2 のとき, ϕj , ψj ∈ Codd (R) かつ κ ≥ 1/(α − 1) なる κ に対して X j=1,2 sup{hxiκ |ϕj (x)| + hxiκ+1 |ψj (x)|} x≥0 が十分小さければ, u ∈ C(R × [0, ∞)), u(−x, t) = −u(x, t), sup hx − tiκ |u(x, t)| < ∞ (x,t)∈[0,∞)2 をみたす (2) の時間大域解 u が存在する. 定理 3 n = 1, α = 1, c1 6= c2 のとき, ϕj , ψj ∈ Codd (R) かつ κ > 0 に 対して X j=1,2 sup eκx {|ϕj (x)| + |ψj (x)|} x≥0 が十分小さければ, u ∈ C(R × [0, ∞)), u(−x, t) = −u(x, t), sup eκ|x−t| |u(x, t)| < ∞ (x,t)∈[0,∞)2 をみたす (2) の時間大域解 u が存在する. (n) Kc に対して, n = 2 では Huygens の原理は成り立たず, n = 3 及び n = 1 でも奇関数に限れば, Huygens の原理が成り立つことに 注意する. 特に, 定理 1 の証明では, n = 2 のとき inf (t + |x|)1/2 (ct − |x|)1/2 Kc(2) [0, ψ](x, t) > 0 |x|≤c(t−1) をみたす ψ ∈ C0∞ (R2 ) が存在することが重要な役割を果たす. 参考文献 [KO] H. Kubo and M. Ohta, On systems of semilinear wave equations with unequal propagation speeds in three space dimensions, Preprint.
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